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「……アンナ、見ていなさい。今日こそ私は『制御不能な危険人物』として学園を追放されるわ」
学園の広大な魔法演習場。私は杖を握りしめ、怪しく目を輝かせた。
周囲では他の生徒たちが、小さな火の玉や水柱を出して「わあ、すごーい!」なんて平和な声を上げている。
「お嬢様、その不敵な笑みは、もはや悪役というより魔王のそれですよ。今度は何を爆発させるおつもりで?」
「失礼ね。爆発なんて野蛮なことはしないわ。私はただ、魔法の制御に失敗して、ちょっとした『異変』を起こすだけよ。制御もできない危険な力を持つ令嬢……。これこそ王家に最も疎まれる属性だわ!」
今日の課題は「初歩的な召喚魔法」。
本来なら、小さな蝶や小鳥を呼び出す程度の可愛い実習だ。
だが私は、魔力をあえて無茶苦茶にかき混ぜて、不気味な異界の泥でも引きずり出してやるつもりだった。
「あ、ロニエ! 君の召喚魔法が見られるなんて、今日はなんて幸運な日なんだ!」
アレン王子が、今日も安定のキラキラ笑顔で特等席陣取っている。
その後ろには、すでに「何が起きても動じない」という悟りを開いた顔のカイル。
「殿下、見ていてくださいまし。私の、救いようのない『失敗』を!」
私は杖を高く掲げ、魔力を練り上げた。
通常なら丁寧に紡ぐべき魔力の糸を、わざとぐちゃぐちゃに絡ませ、無理やり空間に叩きつける!
「出なさい、私の手に負えない悍ましい何か!」
ドォォォォォォォン!!
演習場が激しく揺れ、真っ黒な雷が空を裂いた。
他の生徒たちが「きゃあぁぁ!」と悲鳴を上げて逃げ惑う。
よし! これよ、この恐怖の叫びを待っていたの!
立ち込める爆煙の中から、地響きと共に巨大な影が現れた。
それは、体長十メートルを超える、白銀の毛並みに黄金の角を持つ巨大な狼。
伝説の神獣『フェンリル』……によく似た、でもどこか威厳に満ちすぎた何かだった。
「グルゥゥゥ……」
神獣が低く唸ると、周囲の空気が凍りつく。
私は心の中でガッツポーズをした。
どう見ても初歩の召喚魔法じゃない。これは大惨事だわ!
「……ロニエ。君は、君という人は……!」
アレン王子が震える声で立ち上がった。
さあ、言いなさい! 「こんな危険な怪物を呼ぶなんて、君は破門だ!」と!
「まさか、建国神話にのみ記された『王国の守護獣』を、この令和……じゃなかった、この時代に再臨させるとは!」
「……はい? 守護獣?」
「ああ! その誇り高き姿、間違いない。この獣は、真に国を愛し、強大な魔力を持つ者にしか心を開かないと言われている。ロニエ、君は僕たちの結婚を祝福するために、伝説を呼び戻したんだね!」
王子は感動のあまり、神獣の足元に駆け寄った。
神獣は、王子を一瞥すると……なぜか私の方を向き、巨大な猫のようにゴロゴロと喉を鳴らして、私の頭をペロリと舐めた。
「ひゃあ!? ちょっと、ベタベタしますわ!」
「おおお! 見ろ、カイル! 守護獣がロニエに懐いている! 彼女の魂がどれほど清らかで、慈愛に満ちているかの証明だ!」
「……ええ。お嬢様、もはや召喚魔法の枠を超えて、降臨の儀式になっております。学園長が『これで我が学園のセキュリティは世界一だ』と泣いて喜んでいますよ」
カイルが遠くで、震える学園長を指差した。
周囲の生徒たちも、恐怖から一転、憧れの眼差しで私を拝み始めている。
「さすがロニエ様……。伝説の生き物まで手なずけてしまうなんて」
「あの神獣のモフモフ、ロニエ様の優しさの象徴に違いないわ!」
「私、一生ロニエ様に付いていくって決めました!」
「リリアさんまで拝まないで! これ、私の計算では学園が半分壊れるはずだったんですから!」
「ふふ、謙遜しなくていいよ、ロニエ。君のおかげで、我が国の軍事バランスは一気に安定した。君はもはや、一令嬢の枠を超えた『国家の至宝』だ」
アレン王子は、私の腰を抱き寄せ、神獣の背中に一緒に乗ろうと誘ってきた。
私は、粘り気のある神獣のヨダレで濡れた頭を押さえながら、絶望に暮れた。
「(……嘘でしょう。危険人物になるつもりが、国防の要になっちゃったじゃないのよ……)」
「お嬢様、お疲れ様です。次は伝説の魔王でも召喚しますか? きっと『改心させて家臣にした』とか言われるでしょうけれど」
アンナがどこからか取り出したタオルで、私の顔を拭きながら無慈悲に告げた。
私の婚約破棄への道は、杖を振るたびに、なぜか「国を救う伝説の乙女」としての神話を紡ぎ出してしまうのだった。
学園の広大な魔法演習場。私は杖を握りしめ、怪しく目を輝かせた。
周囲では他の生徒たちが、小さな火の玉や水柱を出して「わあ、すごーい!」なんて平和な声を上げている。
「お嬢様、その不敵な笑みは、もはや悪役というより魔王のそれですよ。今度は何を爆発させるおつもりで?」
「失礼ね。爆発なんて野蛮なことはしないわ。私はただ、魔法の制御に失敗して、ちょっとした『異変』を起こすだけよ。制御もできない危険な力を持つ令嬢……。これこそ王家に最も疎まれる属性だわ!」
今日の課題は「初歩的な召喚魔法」。
本来なら、小さな蝶や小鳥を呼び出す程度の可愛い実習だ。
だが私は、魔力をあえて無茶苦茶にかき混ぜて、不気味な異界の泥でも引きずり出してやるつもりだった。
「あ、ロニエ! 君の召喚魔法が見られるなんて、今日はなんて幸運な日なんだ!」
アレン王子が、今日も安定のキラキラ笑顔で特等席陣取っている。
その後ろには、すでに「何が起きても動じない」という悟りを開いた顔のカイル。
「殿下、見ていてくださいまし。私の、救いようのない『失敗』を!」
私は杖を高く掲げ、魔力を練り上げた。
通常なら丁寧に紡ぐべき魔力の糸を、わざとぐちゃぐちゃに絡ませ、無理やり空間に叩きつける!
「出なさい、私の手に負えない悍ましい何か!」
ドォォォォォォォン!!
演習場が激しく揺れ、真っ黒な雷が空を裂いた。
他の生徒たちが「きゃあぁぁ!」と悲鳴を上げて逃げ惑う。
よし! これよ、この恐怖の叫びを待っていたの!
立ち込める爆煙の中から、地響きと共に巨大な影が現れた。
それは、体長十メートルを超える、白銀の毛並みに黄金の角を持つ巨大な狼。
伝説の神獣『フェンリル』……によく似た、でもどこか威厳に満ちすぎた何かだった。
「グルゥゥゥ……」
神獣が低く唸ると、周囲の空気が凍りつく。
私は心の中でガッツポーズをした。
どう見ても初歩の召喚魔法じゃない。これは大惨事だわ!
「……ロニエ。君は、君という人は……!」
アレン王子が震える声で立ち上がった。
さあ、言いなさい! 「こんな危険な怪物を呼ぶなんて、君は破門だ!」と!
「まさか、建国神話にのみ記された『王国の守護獣』を、この令和……じゃなかった、この時代に再臨させるとは!」
「……はい? 守護獣?」
「ああ! その誇り高き姿、間違いない。この獣は、真に国を愛し、強大な魔力を持つ者にしか心を開かないと言われている。ロニエ、君は僕たちの結婚を祝福するために、伝説を呼び戻したんだね!」
王子は感動のあまり、神獣の足元に駆け寄った。
神獣は、王子を一瞥すると……なぜか私の方を向き、巨大な猫のようにゴロゴロと喉を鳴らして、私の頭をペロリと舐めた。
「ひゃあ!? ちょっと、ベタベタしますわ!」
「おおお! 見ろ、カイル! 守護獣がロニエに懐いている! 彼女の魂がどれほど清らかで、慈愛に満ちているかの証明だ!」
「……ええ。お嬢様、もはや召喚魔法の枠を超えて、降臨の儀式になっております。学園長が『これで我が学園のセキュリティは世界一だ』と泣いて喜んでいますよ」
カイルが遠くで、震える学園長を指差した。
周囲の生徒たちも、恐怖から一転、憧れの眼差しで私を拝み始めている。
「さすがロニエ様……。伝説の生き物まで手なずけてしまうなんて」
「あの神獣のモフモフ、ロニエ様の優しさの象徴に違いないわ!」
「私、一生ロニエ様に付いていくって決めました!」
「リリアさんまで拝まないで! これ、私の計算では学園が半分壊れるはずだったんですから!」
「ふふ、謙遜しなくていいよ、ロニエ。君のおかげで、我が国の軍事バランスは一気に安定した。君はもはや、一令嬢の枠を超えた『国家の至宝』だ」
アレン王子は、私の腰を抱き寄せ、神獣の背中に一緒に乗ろうと誘ってきた。
私は、粘り気のある神獣のヨダレで濡れた頭を押さえながら、絶望に暮れた。
「(……嘘でしょう。危険人物になるつもりが、国防の要になっちゃったじゃないのよ……)」
「お嬢様、お疲れ様です。次は伝説の魔王でも召喚しますか? きっと『改心させて家臣にした』とか言われるでしょうけれど」
アンナがどこからか取り出したタオルで、私の顔を拭きながら無慈悲に告げた。
私の婚約破棄への道は、杖を振るたびに、なぜか「国を救う伝説の乙女」としての神話を紡ぎ出してしまうのだった。
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