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「……アンナ。私は昨日、大切なことを学んだわ」
林間学校の最終日。早朝の爽やかな空気の中、私はテントの前で力強く拳を握りしめた。
昨夜の洞窟での敗北は、私の「言葉の選び方」がまだ甘かったせいだ。
「クズ男が好き」なんて、結局は相手への要望に過ぎない。
ならば、次は私自身の「欠陥」を全校生徒の前で晒すまでよ!
「お嬢様。その燃え尽きたような瞳、嫌な予感しかしませんが……次はご自分の何を売るおつもりで?」
「売るんじゃないわ、さらけ出すのよ! 見てなさい。今日は、王妃の品格とは一光年ほど離れた私の『真実の姿』を公表してやるわ!」
朝の集合時間。広場には、全生徒と教師、そして護衛の騎士たちが集まっていた。
アレン王子は、昨夜の雨など微塵も感じさせない完璧な装いで、壇上……というか、切り株の上に立っている。
「皆、昨夜の嵐は大変だったが、全員無事で何よりだ。これも、我々を導いてくれたロニエの……」
「殿下! ちょっとお待ちくださいまし!」
私は王子の言葉を遮り、スカートを派手に翻しながら皆の前に躍り出た。
周囲が「ロニエ様?」「また何か素晴らしい啓示が?」とざわめき出す。
いいわ、注目なさい!
「皆様、お聞きなさい! 私は今まで、皆様を欺いてきましたわ! 聖女? 完璧な令嬢? 冗談はやめてくださいまし! 私の本性は、救いようのない『だらしない女』なんですのよ!」
私は喉が枯れんばかりの大声で叫んだ。
さあ、幻滅しなさい!
「実は私、朝はアンナに引きずり出されるまでベッドから出ませんし、部屋の中は脱ぎ散らかした靴下で溢れていますわ! 趣味は昼寝と、いかに働かずに楽をするかを考えること! 努力? 根性? そんな言葉、私の辞書には載っていませんの! おーっほっほっほ!」
どうだ!
家柄も教養も台無しにする、衝撃のズボラ宣言!
これで「王妃失格」の烙印を押されないはずがない!
しかし。
静まり返った広場で、最初に声を上げたのは、やはりアレン王子だった。
「…………なんて、勇敢なんだ、ロニエ……!」
「……は?」
王子は切り株から飛び降りると、私の手をがっしりと掴み、瞳を潤ませた。
「皆、聞いたか! 彼女は今、自分の『脆弱(ぜいじゃく)さ』を、これほどまでに堂々とさらけ出した! 弱さを見せることは、真に強い者にしかできない行為だ!」
「いえ、ただのだらしなさを紹介しただけですわよ?」
「隠さなくていい! 君は、完璧さを求めるこの社交界の風潮に、一石を投じたんだね! 『ありのままの自分でいい。だらしなくても、寝坊しても、それは人間としての愛すべき個性だ』と……。君は、全生徒の心の重荷を、今この瞬間に解き放ってくれたんだ!」
王子の言葉を皮切りに、広場にいた令嬢たちが次々と涙を流し始めた。
「ロニエ様……! 実は私も、刺繍の裏側がぐちゃぐちゃなんです……! 言い出せなくて苦しかったのに!」
「私も、こっそり夜食を食べていますわ! ロニエ様のおかげで、自分を許せそうです!」
「ありのままのロニエ様、最高ですわー!」
「……違うの! 私はただ、自分がダメ人間だって言いたいだけなのよ!」
私の弁明は、熱烈な「ロニエ・コール」にかき消されてしまった。
「ロニエ。君がそれほどまでに僕に『素の自分』を見せてくれたこと、僕は一生の宝にするよ。だらしない君も、寝坊助な君も、僕が全部受け止めて、一生甘やかしてあげよう」
王子は私を情熱的に抱き寄せた。
周囲からは「尊い……」「真実の愛だわ……」という溜息が漏れる。
「(……嘘でしょう。ズボラ宣言が、なんでメンタルケアのカリスマ誕生秘話になってるのよ……!)」
私は王子の腕の中で、遠くの森を見つめた。
私の「婚約破棄への道」は、自分を貶めようとするたびに、なぜか「時代をリードする新しい女性像」として、国中の支持を集めてしまうのだった。
「お嬢様。おめでとうございます。これで次回の学園アンケート、お嬢様は『最も親しみやすい令嬢』部門でも一位確定ですね」
アンナの無慈悲な祝福が、朝の空に虚しく響いた。
林間学校の最終日。早朝の爽やかな空気の中、私はテントの前で力強く拳を握りしめた。
昨夜の洞窟での敗北は、私の「言葉の選び方」がまだ甘かったせいだ。
「クズ男が好き」なんて、結局は相手への要望に過ぎない。
ならば、次は私自身の「欠陥」を全校生徒の前で晒すまでよ!
「お嬢様。その燃え尽きたような瞳、嫌な予感しかしませんが……次はご自分の何を売るおつもりで?」
「売るんじゃないわ、さらけ出すのよ! 見てなさい。今日は、王妃の品格とは一光年ほど離れた私の『真実の姿』を公表してやるわ!」
朝の集合時間。広場には、全生徒と教師、そして護衛の騎士たちが集まっていた。
アレン王子は、昨夜の雨など微塵も感じさせない完璧な装いで、壇上……というか、切り株の上に立っている。
「皆、昨夜の嵐は大変だったが、全員無事で何よりだ。これも、我々を導いてくれたロニエの……」
「殿下! ちょっとお待ちくださいまし!」
私は王子の言葉を遮り、スカートを派手に翻しながら皆の前に躍り出た。
周囲が「ロニエ様?」「また何か素晴らしい啓示が?」とざわめき出す。
いいわ、注目なさい!
「皆様、お聞きなさい! 私は今まで、皆様を欺いてきましたわ! 聖女? 完璧な令嬢? 冗談はやめてくださいまし! 私の本性は、救いようのない『だらしない女』なんですのよ!」
私は喉が枯れんばかりの大声で叫んだ。
さあ、幻滅しなさい!
「実は私、朝はアンナに引きずり出されるまでベッドから出ませんし、部屋の中は脱ぎ散らかした靴下で溢れていますわ! 趣味は昼寝と、いかに働かずに楽をするかを考えること! 努力? 根性? そんな言葉、私の辞書には載っていませんの! おーっほっほっほ!」
どうだ!
家柄も教養も台無しにする、衝撃のズボラ宣言!
これで「王妃失格」の烙印を押されないはずがない!
しかし。
静まり返った広場で、最初に声を上げたのは、やはりアレン王子だった。
「…………なんて、勇敢なんだ、ロニエ……!」
「……は?」
王子は切り株から飛び降りると、私の手をがっしりと掴み、瞳を潤ませた。
「皆、聞いたか! 彼女は今、自分の『脆弱(ぜいじゃく)さ』を、これほどまでに堂々とさらけ出した! 弱さを見せることは、真に強い者にしかできない行為だ!」
「いえ、ただのだらしなさを紹介しただけですわよ?」
「隠さなくていい! 君は、完璧さを求めるこの社交界の風潮に、一石を投じたんだね! 『ありのままの自分でいい。だらしなくても、寝坊しても、それは人間としての愛すべき個性だ』と……。君は、全生徒の心の重荷を、今この瞬間に解き放ってくれたんだ!」
王子の言葉を皮切りに、広場にいた令嬢たちが次々と涙を流し始めた。
「ロニエ様……! 実は私も、刺繍の裏側がぐちゃぐちゃなんです……! 言い出せなくて苦しかったのに!」
「私も、こっそり夜食を食べていますわ! ロニエ様のおかげで、自分を許せそうです!」
「ありのままのロニエ様、最高ですわー!」
「……違うの! 私はただ、自分がダメ人間だって言いたいだけなのよ!」
私の弁明は、熱烈な「ロニエ・コール」にかき消されてしまった。
「ロニエ。君がそれほどまでに僕に『素の自分』を見せてくれたこと、僕は一生の宝にするよ。だらしない君も、寝坊助な君も、僕が全部受け止めて、一生甘やかしてあげよう」
王子は私を情熱的に抱き寄せた。
周囲からは「尊い……」「真実の愛だわ……」という溜息が漏れる。
「(……嘘でしょう。ズボラ宣言が、なんでメンタルケアのカリスマ誕生秘話になってるのよ……!)」
私は王子の腕の中で、遠くの森を見つめた。
私の「婚約破棄への道」は、自分を貶めようとするたびに、なぜか「時代をリードする新しい女性像」として、国中の支持を集めてしまうのだった。
「お嬢様。おめでとうございます。これで次回の学園アンケート、お嬢様は『最も親しみやすい令嬢』部門でも一位確定ですね」
アンナの無慈悲な祝福が、朝の空に虚しく響いた。
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