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「……アンナ! ついに、ついにこの時が来たわよ!」
学園の中央広場へと続く廊下を、私はかつてないほどの軽やかな足取りで突き進んでいた。
手元には、アレン王子から届いた一通の手紙。
『今日の放課後、全生徒の前で君に伝えたいことがある。広場に来てほしい』。
「お嬢様。そのスキップ、はたから見ると不気味ですよ。これから断罪される(と思っている)人間の動きではありません」
「いいのよ! 全生徒の前で、わざわざ呼び出すなんて……。これこそ王道ラブコメの『婚約破棄イベント』そのものではないの! 王子はきっと、私の今までの数々の奇行――暴言、雑草の贈呈、変顔、そしてズボラ宣言――に、ついに堪忍袋の緒が切れたのよ!」
私は広場に足を踏み入れた。
すでに多くの生徒が集まり、異様な熱気に包まれている。
中央には、真剣な面持ちで立つアレン王子。
その隣には、なぜかリリアさんやベアトリス様、さらにはカイルまでもが並んでいる。
「(役者は揃ったわね。さあ、王子! 早く私に指を突きつけて、『君のような不届き者は婚約破棄だ!』と叫びなさいな!)」
私は王子の正面に立ち、わざとらしく不敵な笑みを浮かべた。
「お呼び出しですわね、殿下。私に何か、仰りたいことでも? 謝罪なら受け付けませんわよ。オーホッホッホ!」
さあ、この不敬な態度!
これなら、衆人環視の中で私を糾弾する正当な理由になるはずよ!
アレン王子は一歩前に出ると、静かに口を開いた。
「……ロニエ。君には、感謝してもしきれないことがたくさんある」
「(……感謝? いえ、そこは『君の数々の悪行を許すわけにはいかない』でしょ?)」
「君は入学以来、常に僕の想像を超えてきた。僕の慢心(まんしん)を窘(たしな)め、民の目線を説き、美の概念を覆し、さらには伝説の神獣をも味方につけた……。君の存在そのものが、この学園にとって、いや、この国にとっての奇跡なんだ」
王子の言葉に、周囲の生徒たちから「そうだ、そうだ!」「ロニエ様万歳!」というシュプレヒコールが巻き起こる。
「待ってください。殿下、話が逸れていますわ。私のあの、性格の悪さとか、足が臭い疑惑とか、そういうところを突っ込む場面ですわよ!?」
「ふっ、それこそが君の素晴らしさだ、ロニエ。君は、自分の評価を地に落としてまで、僕を、そして周囲の皆を導こうとしてくれた。その自己犠牲の精神……。僕は今、それを全生徒の前で称えたいと思う!」
王子が右手を高く上げた。
すると、カイルが大きな木箱を運んできた。
中から出てきたのは、まばゆいばかりの、王家に伝わる伝説のティアラ。
「(……は? 何それ。処刑用の首輪じゃないの?)」
「ロニエ・エヴァンズ。君のこれまでの功績を認め、僕はここに……」
「殿下! 言わせませんわよ! 私は最低の女です! 私は……私は、殿下との結婚よりも、実家の離れで昼寝することの方が大事なんですの!」
私は最後の大博打に出た。
「愛よりも昼寝」。これこそ、王子の自尊心をズタズタにする究極の暴言!
ところが、王子は慈愛に満ちた眼差しで、私を見つめ返した。
「……わかっているよ、ロニエ。君は、『自分を縛る王冠などいらない。ただ一人の女性として、僕の隣でリラックスしたい』と言いたいんだろう? 権力に執着しないその潔さ……。君こそ、真の王妃に相応しい女性だ!」
「……嘘でしょう。何でそうなるのよ……!」
「ロニエ、覚悟を決めてくれ。僕は君を、絶対に逃がさない」
王子の瞳に、かつてないほどの強い独占欲が宿った。
周囲の歓声は最高潮に達し、花吹雪が舞い散る。
「(……断罪イベントが、なんで表彰式兼公開プロポーズ予行演習になってるのよ……!)」
私は絶望のあまり、その場に膝をつきそうになった。
背後で、アンナが「お嬢様、残念でしたね。でも、あのティアラ、すごく高いんですよ」と場違いな報告を寄こしてきた。
私の婚約破棄への道は、王子の前に立っただけで、なぜか「国母」へのレッドカーペットに繋がってしまうのだった。
学園の中央広場へと続く廊下を、私はかつてないほどの軽やかな足取りで突き進んでいた。
手元には、アレン王子から届いた一通の手紙。
『今日の放課後、全生徒の前で君に伝えたいことがある。広場に来てほしい』。
「お嬢様。そのスキップ、はたから見ると不気味ですよ。これから断罪される(と思っている)人間の動きではありません」
「いいのよ! 全生徒の前で、わざわざ呼び出すなんて……。これこそ王道ラブコメの『婚約破棄イベント』そのものではないの! 王子はきっと、私の今までの数々の奇行――暴言、雑草の贈呈、変顔、そしてズボラ宣言――に、ついに堪忍袋の緒が切れたのよ!」
私は広場に足を踏み入れた。
すでに多くの生徒が集まり、異様な熱気に包まれている。
中央には、真剣な面持ちで立つアレン王子。
その隣には、なぜかリリアさんやベアトリス様、さらにはカイルまでもが並んでいる。
「(役者は揃ったわね。さあ、王子! 早く私に指を突きつけて、『君のような不届き者は婚約破棄だ!』と叫びなさいな!)」
私は王子の正面に立ち、わざとらしく不敵な笑みを浮かべた。
「お呼び出しですわね、殿下。私に何か、仰りたいことでも? 謝罪なら受け付けませんわよ。オーホッホッホ!」
さあ、この不敬な態度!
これなら、衆人環視の中で私を糾弾する正当な理由になるはずよ!
アレン王子は一歩前に出ると、静かに口を開いた。
「……ロニエ。君には、感謝してもしきれないことがたくさんある」
「(……感謝? いえ、そこは『君の数々の悪行を許すわけにはいかない』でしょ?)」
「君は入学以来、常に僕の想像を超えてきた。僕の慢心(まんしん)を窘(たしな)め、民の目線を説き、美の概念を覆し、さらには伝説の神獣をも味方につけた……。君の存在そのものが、この学園にとって、いや、この国にとっての奇跡なんだ」
王子の言葉に、周囲の生徒たちから「そうだ、そうだ!」「ロニエ様万歳!」というシュプレヒコールが巻き起こる。
「待ってください。殿下、話が逸れていますわ。私のあの、性格の悪さとか、足が臭い疑惑とか、そういうところを突っ込む場面ですわよ!?」
「ふっ、それこそが君の素晴らしさだ、ロニエ。君は、自分の評価を地に落としてまで、僕を、そして周囲の皆を導こうとしてくれた。その自己犠牲の精神……。僕は今、それを全生徒の前で称えたいと思う!」
王子が右手を高く上げた。
すると、カイルが大きな木箱を運んできた。
中から出てきたのは、まばゆいばかりの、王家に伝わる伝説のティアラ。
「(……は? 何それ。処刑用の首輪じゃないの?)」
「ロニエ・エヴァンズ。君のこれまでの功績を認め、僕はここに……」
「殿下! 言わせませんわよ! 私は最低の女です! 私は……私は、殿下との結婚よりも、実家の離れで昼寝することの方が大事なんですの!」
私は最後の大博打に出た。
「愛よりも昼寝」。これこそ、王子の自尊心をズタズタにする究極の暴言!
ところが、王子は慈愛に満ちた眼差しで、私を見つめ返した。
「……わかっているよ、ロニエ。君は、『自分を縛る王冠などいらない。ただ一人の女性として、僕の隣でリラックスしたい』と言いたいんだろう? 権力に執着しないその潔さ……。君こそ、真の王妃に相応しい女性だ!」
「……嘘でしょう。何でそうなるのよ……!」
「ロニエ、覚悟を決めてくれ。僕は君を、絶対に逃がさない」
王子の瞳に、かつてないほどの強い独占欲が宿った。
周囲の歓声は最高潮に達し、花吹雪が舞い散る。
「(……断罪イベントが、なんで表彰式兼公開プロポーズ予行演習になってるのよ……!)」
私は絶望のあまり、その場に膝をつきそうになった。
背後で、アンナが「お嬢様、残念でしたね。でも、あのティアラ、すごく高いんですよ」と場違いな報告を寄こしてきた。
私の婚約破棄への道は、王子の前に立っただけで、なぜか「国母」へのレッドカーペットに繋がってしまうのだった。
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