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「……お嬢様、王都からの至急便ですわ! 今度は国王陛下からではなく、王都の大商商連合と貴族院からの連名です!」
アンナが息を切らせて、金色の縁取りがなされた嘆願書を持ってきた。
そこには、ミントが辺境へ行ってからというもの、王都の社交界が枯れ果て、美容産業が停滞し、人々の表情から活気が失われたという悲痛な叫びが綴られていた。
「……『ミント様がいない王都は、色のない絵画のようです』『どうかその輝きで、乾いた私たちの心を潤してください』。ふふ、ようやく理解したようね」
ミントは優雅に嘆願書を放り投げ、手鏡で自分の瞳の潤いを確認した。
「世界が私を求めている。これはもう、一令嬢のわがままで拒み続けるわけにはいかないわね。ジルコン、準備なさい。王都へ戻るわよ」
「……ようやく決心されましたか。ですがミント様、今回はただの帰還ではありません。陛下も公式な謝罪に近い待遇を用意しているそうですよ」
ジルコンが安堵の溜息をつく。しかし、ミントの返答は彼の想像を超えていた。
「あら、謝罪なんていらないわ。私はただ、私という名の『光』を、闇に沈んだ王都へ届けてあげるだけ。……そうね。これは帰還ではなく、私の美しさを世界に知らしめる『凱旋パレード』と呼びなさい」
数日後。エーデルワイス領の出口には、前代未聞の光景が広がっていた。
ミントが乗る馬車は、領地で採れたバラと温泉の蒸気で磨き上げられたクリスタルで装飾され、太陽の光を反射して直視できないほどに輝いている。
さらにその後ろには、ミントを「美の聖女」と崇める村人たちの代表や、彼女のポエムオーディションを勝ち抜いた商人たちが、長蛇の列を作って続いていた。
「聖女様! 王都へ行っても、私たちのことは忘れないでくだせえ!」
「ああ、心配しないで。私の美しさは、一度目に焼き付ければ永遠に貴方たちの魂を照らし続けるわ。……さあ、出発よ! 王都の民に、本物の輝きを教えてあげるわ!」
馬車がゆっくりと動き出す。ミントは窓から身を乗り出し、辺境の風景に別れを告げる……のではなく、窓の外を流れる景色を「鏡代わり」に使いながら、優雅に投げキッスを振りまいた。
街道を進むにつれ、噂を聞きつけた周辺の領民たちが続々と集まってきた。
「おい、あれを見ろ! あれが噂のミント様か?」
「なんて美しさだ……! あの馬車の輝き、まるで太陽が二つあるみたいじゃないか!」
群衆の歓声を聞き、ミントは満足げに頷いた。
「ジルコン、聞こえる? これが真実の評価よ。カイルさんが何を言おうと、世界は私の味方だわ」
「……ミント様、その。一つだけ言わせてください。……貴女を乗せたこの馬車、あまりに眩しすぎて、後続の護衛たちが全員目を細めて、まともに前を歩けていません」
「あら、それは私の輝きに対する礼儀として正しい姿勢だわ。光り輝く主君を直視できないなんて、騎士として合格点ね」
「……褒めてないのですが」
王都の城門が見えてくる頃には、ミントの列は数千人の規模に膨れ上がっていた。
城壁の上では、カイル王子とフロラが、地平線から近づいてくる「異様な光の塊」を呆然と見守っていた。
「……な、何だ、あの光は。敵襲か!?」
カイルが叫ぶ。しかし、その光の正体が、自分が追放したはずの元婚約者だと気づくのに、時間はかからなかった。
「おーほほほほ! 王都の皆様、お待たせいたしましたわ! 世界で一番美しいミント・エーデルワイス、ただいま降臨いたしました!」
門が開くと同時に、ミントの声が王都中に響き渡った。
それは帰還という名の、完全なる「占領」の始まりであった。
アンナが息を切らせて、金色の縁取りがなされた嘆願書を持ってきた。
そこには、ミントが辺境へ行ってからというもの、王都の社交界が枯れ果て、美容産業が停滞し、人々の表情から活気が失われたという悲痛な叫びが綴られていた。
「……『ミント様がいない王都は、色のない絵画のようです』『どうかその輝きで、乾いた私たちの心を潤してください』。ふふ、ようやく理解したようね」
ミントは優雅に嘆願書を放り投げ、手鏡で自分の瞳の潤いを確認した。
「世界が私を求めている。これはもう、一令嬢のわがままで拒み続けるわけにはいかないわね。ジルコン、準備なさい。王都へ戻るわよ」
「……ようやく決心されましたか。ですがミント様、今回はただの帰還ではありません。陛下も公式な謝罪に近い待遇を用意しているそうですよ」
ジルコンが安堵の溜息をつく。しかし、ミントの返答は彼の想像を超えていた。
「あら、謝罪なんていらないわ。私はただ、私という名の『光』を、闇に沈んだ王都へ届けてあげるだけ。……そうね。これは帰還ではなく、私の美しさを世界に知らしめる『凱旋パレード』と呼びなさい」
数日後。エーデルワイス領の出口には、前代未聞の光景が広がっていた。
ミントが乗る馬車は、領地で採れたバラと温泉の蒸気で磨き上げられたクリスタルで装飾され、太陽の光を反射して直視できないほどに輝いている。
さらにその後ろには、ミントを「美の聖女」と崇める村人たちの代表や、彼女のポエムオーディションを勝ち抜いた商人たちが、長蛇の列を作って続いていた。
「聖女様! 王都へ行っても、私たちのことは忘れないでくだせえ!」
「ああ、心配しないで。私の美しさは、一度目に焼き付ければ永遠に貴方たちの魂を照らし続けるわ。……さあ、出発よ! 王都の民に、本物の輝きを教えてあげるわ!」
馬車がゆっくりと動き出す。ミントは窓から身を乗り出し、辺境の風景に別れを告げる……のではなく、窓の外を流れる景色を「鏡代わり」に使いながら、優雅に投げキッスを振りまいた。
街道を進むにつれ、噂を聞きつけた周辺の領民たちが続々と集まってきた。
「おい、あれを見ろ! あれが噂のミント様か?」
「なんて美しさだ……! あの馬車の輝き、まるで太陽が二つあるみたいじゃないか!」
群衆の歓声を聞き、ミントは満足げに頷いた。
「ジルコン、聞こえる? これが真実の評価よ。カイルさんが何を言おうと、世界は私の味方だわ」
「……ミント様、その。一つだけ言わせてください。……貴女を乗せたこの馬車、あまりに眩しすぎて、後続の護衛たちが全員目を細めて、まともに前を歩けていません」
「あら、それは私の輝きに対する礼儀として正しい姿勢だわ。光り輝く主君を直視できないなんて、騎士として合格点ね」
「……褒めてないのですが」
王都の城門が見えてくる頃には、ミントの列は数千人の規模に膨れ上がっていた。
城壁の上では、カイル王子とフロラが、地平線から近づいてくる「異様な光の塊」を呆然と見守っていた。
「……な、何だ、あの光は。敵襲か!?」
カイルが叫ぶ。しかし、その光の正体が、自分が追放したはずの元婚約者だと気づくのに、時間はかからなかった。
「おーほほほほ! 王都の皆様、お待たせいたしましたわ! 世界で一番美しいミント・エーデルワイス、ただいま降臨いたしました!」
門が開くと同時に、ミントの声が王都中に響き渡った。
それは帰還という名の、完全なる「占領」の始まりであった。
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