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「……ちょっと! 何よその空気! 主役は私、聖女ミリアなんですわよぉ!」
絶叫と共に、パーティー会場の端から泥だらけの女が乱入してきた。
フリルだらけのドレスは引き裂かれ、髪には小枝が刺さり、顔面は涙と泥でグチャグチャである。先ほど、ハチに追われて転げ回ったミリアその人だ。
「あら、ミリアさん。随分とワイルドなドレスコードに変更されたのね。新しい流行かしら?」
パルメは耳栓を片方外し、涼しい顔で彼女を見下ろした。
「パ、パルメ様……! 貴女さえいなければ、私は今頃リュント様と幸せに……! 見てなさい、貴女のその澄ました顔を、この『特製堆肥』で汚してあげますわ!」
ミリアがどこから持ってきたのか、嫌な臭いのするバケツを両手で掲げた。
中には、先ほど彼女が転んだ際にかき集めたと思われる、最高にドロドロの泥水が入っている。
「パルメ! 覚悟しなさい! これこそが、貴女にふさわしい泥沼の人生よぉ!」
ミリアが渾身の力で、バケツの泥をパルメに向けてぶちまけた。
「……ッ! お嬢様、危ない!」
アンナが叫ぶ。しかし、パルメは動じなかった。
彼女は長年の農作業(ここ数ヶ月)で培った野生の勘を働かせ、腰の黄金のスコップを流れるような動作で引き抜いた。
「あら、そんなに良質な肥料を無駄にするなんて。……返却(リターン)ですわ!」
パルメがガイア・ブレイカーをテニスラケットのように一閃させた。
ビュッ!! という風切り音と共に、放たれた泥水は空中で完璧な球体となり、物理法則を無視した軌道でミリアへと逆流した。
「……えっ?」
ベチャァァァァァァァァン!!
「……ぷっ、げほっ! お、おえぇぇぇぇぇ!」
自ら放った泥を全身で受け止めたミリアは、あまりの衝撃にバランスを崩した。
そのまま、背後にあった王宮自慢の「大女神の噴水」へと、芸術的な放物線を描いて落下していく。
ドブォォォォォォォォン!!
盛大な水しぶきが上がり、会場の貴族たちに飛沫が降り注いだ。
「ミリア様ぁぁぁ!」
騎士たちが駆け寄るが、噴水から這い上がってきたミリアの姿は、もはや聖女の欠片もなかった。
頭に水草を乗せ、鼻の穴に小さな金魚が挟まった状態で、彼女は白目を剥いて叫んだ。
「……な、なんで……なんで私ばっかりこんな目に……! パルメ様、貴女……やっぱり悪魔よぉぉぉ!」
「失礼ね。私はただ、飛んできたものを元の場所に返しただけよ。……アンナ、あの金魚、美味しそうね。今夜の酒の肴にしようかしら」
「お嬢様、王宮の金魚を食べようとするのはやめてください。品位がマイナスに突き抜けます」
パルメはふぅ、と溜息をつき、噴水の中で暴れるミリアを一瞥した。
「ミリアさん。泥をかけるなら、まずは自分の手が汚れることを覚悟しなきゃダメよ。……あ、その泥、うちの領地のカボチャの肥やしにはちょうど良さそうだから、後でバケツごと回収させてもらうわね」
パルメの圧倒的な「農家としての正論」に、ミリアはガタガタと震え、そのまま噴水の中で気絶した。
「……パルメ。今の君の、スコップ捌き……。もはや剣聖の域を超えている。ああ、私もあの泥になりたかった……」
落とし穴の泥を拭いながら、セドリックが恍惚とした表情で呟いた。
「セドリック殿下。貴方は、あとで私の『泥パック(全身版)』の刑に処しますから、覚悟しておいてくださいね」
「……ご褒美をありがとう、パルメ」
パルメは、もう一度耳栓をしっかりとはめ直した。
「さあ、お掃除は終わったわ。次は国王陛下! 私の『退職届(という名の巨大カブ)』、受け取っていただきますわよ!」
悪役令嬢の暴走は、もはや誰にも止められなかった。
絶叫と共に、パーティー会場の端から泥だらけの女が乱入してきた。
フリルだらけのドレスは引き裂かれ、髪には小枝が刺さり、顔面は涙と泥でグチャグチャである。先ほど、ハチに追われて転げ回ったミリアその人だ。
「あら、ミリアさん。随分とワイルドなドレスコードに変更されたのね。新しい流行かしら?」
パルメは耳栓を片方外し、涼しい顔で彼女を見下ろした。
「パ、パルメ様……! 貴女さえいなければ、私は今頃リュント様と幸せに……! 見てなさい、貴女のその澄ました顔を、この『特製堆肥』で汚してあげますわ!」
ミリアがどこから持ってきたのか、嫌な臭いのするバケツを両手で掲げた。
中には、先ほど彼女が転んだ際にかき集めたと思われる、最高にドロドロの泥水が入っている。
「パルメ! 覚悟しなさい! これこそが、貴女にふさわしい泥沼の人生よぉ!」
ミリアが渾身の力で、バケツの泥をパルメに向けてぶちまけた。
「……ッ! お嬢様、危ない!」
アンナが叫ぶ。しかし、パルメは動じなかった。
彼女は長年の農作業(ここ数ヶ月)で培った野生の勘を働かせ、腰の黄金のスコップを流れるような動作で引き抜いた。
「あら、そんなに良質な肥料を無駄にするなんて。……返却(リターン)ですわ!」
パルメがガイア・ブレイカーをテニスラケットのように一閃させた。
ビュッ!! という風切り音と共に、放たれた泥水は空中で完璧な球体となり、物理法則を無視した軌道でミリアへと逆流した。
「……えっ?」
ベチャァァァァァァァァン!!
「……ぷっ、げほっ! お、おえぇぇぇぇぇ!」
自ら放った泥を全身で受け止めたミリアは、あまりの衝撃にバランスを崩した。
そのまま、背後にあった王宮自慢の「大女神の噴水」へと、芸術的な放物線を描いて落下していく。
ドブォォォォォォォォン!!
盛大な水しぶきが上がり、会場の貴族たちに飛沫が降り注いだ。
「ミリア様ぁぁぁ!」
騎士たちが駆け寄るが、噴水から這い上がってきたミリアの姿は、もはや聖女の欠片もなかった。
頭に水草を乗せ、鼻の穴に小さな金魚が挟まった状態で、彼女は白目を剥いて叫んだ。
「……な、なんで……なんで私ばっかりこんな目に……! パルメ様、貴女……やっぱり悪魔よぉぉぉ!」
「失礼ね。私はただ、飛んできたものを元の場所に返しただけよ。……アンナ、あの金魚、美味しそうね。今夜の酒の肴にしようかしら」
「お嬢様、王宮の金魚を食べようとするのはやめてください。品位がマイナスに突き抜けます」
パルメはふぅ、と溜息をつき、噴水の中で暴れるミリアを一瞥した。
「ミリアさん。泥をかけるなら、まずは自分の手が汚れることを覚悟しなきゃダメよ。……あ、その泥、うちの領地のカボチャの肥やしにはちょうど良さそうだから、後でバケツごと回収させてもらうわね」
パルメの圧倒的な「農家としての正論」に、ミリアはガタガタと震え、そのまま噴水の中で気絶した。
「……パルメ。今の君の、スコップ捌き……。もはや剣聖の域を超えている。ああ、私もあの泥になりたかった……」
落とし穴の泥を拭いながら、セドリックが恍惚とした表情で呟いた。
「セドリック殿下。貴方は、あとで私の『泥パック(全身版)』の刑に処しますから、覚悟しておいてくださいね」
「……ご褒美をありがとう、パルメ」
パルメは、もう一度耳栓をしっかりとはめ直した。
「さあ、お掃除は終わったわ。次は国王陛下! 私の『退職届(という名の巨大カブ)』、受け取っていただきますわよ!」
悪役令嬢の暴走は、もはや誰にも止められなかった。
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