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御門台

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早朝

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「アルバ、起きて」



5:48



彼女はいつもシーツに埋もれるようにして眠っている。
まだ室内は薄暗くぼんやりとしていて、少しだけ覗く頭を探すのは一苦労だった。

シーツをめくられると、彼女はうう、と呻きながら逃れるようにシーツの中に潜っていくが…
強引にシーツを剥がされる。
いつもの事だ。




「おはよう」







レガは身支度をしながら、窓の外を見た。

街は早朝だというのにすでに慌ただしく動き回っている。
朝の光が建物の間を縫って、歩道にくっきりとその形を映し
忙しなくその上を歩く人々を皆同じ色に変えていた。

レガは注意深く街の様子を伺っていたが、幸い「あの人」の車はどこにも見当たらなかった。

今では滅多に見かけない、とびきり目つきの悪い2つの瞳は
何処に駐まっていてもすぐにわかる。
クリスタルブラックの外装に時代遅れなエッジのきいたボディライン…
早い話が「あの人」の乗る車も相当なヴィンテージ・カーなのだ。


(ネオクラシックなんて呼ばれていた時代もあったようだけど、
俺たちが突然カーチェイスなんて始めたら…
古い映画のワンシーンみたいで見ている人はさぞ面白いんだろうな…)



…とやや自嘲的になりながら、レガはそのまま玄関に向かった。


ドアスコープから廊下を確認する。

向かいのドアと白い壁が人の目のようになっていて少し驚いた。
目頭と目尻には動くものは何も見えない。


しばらくドアの前でじっとしていたが、人の往来はなく静かなものだった。
スコープに当たる睫毛が気にならなくなった頃に顔を離す。

異常なし。



安堵して部屋に戻ると、ボディバックを抱えてベッドに座るアルバがじっとテレビを見つめていた。





ニュースキャスターが数日前に起きた事件の原稿を、悲痛そうな声色で読み上げている。

『…にわたり、エバーヒル病院に安置された複数人の遺体を損壊し、その後非レシピエント登録者へ臓器の…』


レガは彼女の隣に座った。


「この人たちは、どうなるのかな…」


テレビをじっと見つめながら、
アルバはそう質問した。


何故そんなことを聞くのか。
「この人たち」とは、犯人のことだろうか…


『……検察側は「被告の動機は
極めて悪質かつ身勝手である」として
死刑を求……』



「死刑だよ。」




レガはリモコンの電源ボタンを押した。



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