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Episode6:波間の揺りかご
⑤
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瑛茉と崇弥がカフェから帰宅したのは、午後十時を少し回った頃だった。
あのあと、「祝宴だ!」と張り切った月尾が、ふたりに夕食を振る舞ってくれた。
真鯛のカルパッチョにキノコのパスタ、それから、厚焼き玉子サンド。
彼の作る料理が本当に美味しくて、彼の気持ちが痛いくらいに伝わって、瑛茉はまた泣きそうになった。
「あいつのあんな嬉しそうな顔、久しぶりに見たかも」
帰宅後。
お茶の用意をしようとキッチンに立った瑛茉に、崇弥が言う。帰りに月尾が持たせてくれた抹茶ティラミスをテーブルの上に並べながら、しみじみと、呟くように。
親友である崇弥のことを、月尾はずっとそばで見てきた。情に厚い彼のことだ。きっと、崇弥以上に、崇弥を取り巻く環境に心を痛めていたはず。
崇弥のことを誰よりもよく知っているのは月尾。崇弥の幸せを誰よりも願っているのは月尾。
そんな彼に、崇弥の彼女として認めてもらえた。そう考えると、瑛茉はなんだか胸がいっぱいになった。
「店長は、九条さんのことが本当に好きなんですね」
「えぇ……やめて、瑛茉ちゃん。鳥肌立つ。……っていうか」
「!」
瑛茉の上半身に走った静かな衝撃。茶葉の入った容器が、するりと手から滑り落ちた。
「また戻ってる」
突然背後から崇弥に抱き締められ、とあることを指摘された。後頭部に注がれた彼の声と甘いプレッシャー。思わず喉を詰まらせる。
「あ、う……ごめんなさい。崇弥さん」
「ん」
指摘された箇所を修正すれば、満足そうな返事とともに後頭部にキスが落とされた。ぴくっと、瑛茉の肩が跳ね上がる。
心臓の拍動が、内側で大きく鳴り響く。彼に触れられたところが、顔が、じんじんと熱い。
他人との距離が物理的に近い文化で育ったため、ハグもキスも慣れているつもりでいた。……いたのだが、相手が崇弥だと、どう反応すればいいのかわからない。
同時に、昨夜のファーストキスの情景がつぶさに蘇り、瑛茉の内心はパニック寸前だった。
「あ、お湯沸いた。これティーポットに注いじゃっていいの?」
「……へ? あっ、はい、いいです!」
いまだ混乱ほどけない瑛茉とは対照的に、何事もなかったかのように崇弥がお茶の用意を引き継いだ。
瑛茉の故郷から取り寄せたオリーブ茶。立ちのぼる爽やかな香りが、あたりに充満する。
「美味しそうだよ。早く食べよ」
改めて思った。
やっぱり、彼は大人だ。
あのあと、「祝宴だ!」と張り切った月尾が、ふたりに夕食を振る舞ってくれた。
真鯛のカルパッチョにキノコのパスタ、それから、厚焼き玉子サンド。
彼の作る料理が本当に美味しくて、彼の気持ちが痛いくらいに伝わって、瑛茉はまた泣きそうになった。
「あいつのあんな嬉しそうな顔、久しぶりに見たかも」
帰宅後。
お茶の用意をしようとキッチンに立った瑛茉に、崇弥が言う。帰りに月尾が持たせてくれた抹茶ティラミスをテーブルの上に並べながら、しみじみと、呟くように。
親友である崇弥のことを、月尾はずっとそばで見てきた。情に厚い彼のことだ。きっと、崇弥以上に、崇弥を取り巻く環境に心を痛めていたはず。
崇弥のことを誰よりもよく知っているのは月尾。崇弥の幸せを誰よりも願っているのは月尾。
そんな彼に、崇弥の彼女として認めてもらえた。そう考えると、瑛茉はなんだか胸がいっぱいになった。
「店長は、九条さんのことが本当に好きなんですね」
「えぇ……やめて、瑛茉ちゃん。鳥肌立つ。……っていうか」
「!」
瑛茉の上半身に走った静かな衝撃。茶葉の入った容器が、するりと手から滑り落ちた。
「また戻ってる」
突然背後から崇弥に抱き締められ、とあることを指摘された。後頭部に注がれた彼の声と甘いプレッシャー。思わず喉を詰まらせる。
「あ、う……ごめんなさい。崇弥さん」
「ん」
指摘された箇所を修正すれば、満足そうな返事とともに後頭部にキスが落とされた。ぴくっと、瑛茉の肩が跳ね上がる。
心臓の拍動が、内側で大きく鳴り響く。彼に触れられたところが、顔が、じんじんと熱い。
他人との距離が物理的に近い文化で育ったため、ハグもキスも慣れているつもりでいた。……いたのだが、相手が崇弥だと、どう反応すればいいのかわからない。
同時に、昨夜のファーストキスの情景がつぶさに蘇り、瑛茉の内心はパニック寸前だった。
「あ、お湯沸いた。これティーポットに注いじゃっていいの?」
「……へ? あっ、はい、いいです!」
いまだ混乱ほどけない瑛茉とは対照的に、何事もなかったかのように崇弥がお茶の用意を引き継いだ。
瑛茉の故郷から取り寄せたオリーブ茶。立ちのぼる爽やかな香りが、あたりに充満する。
「美味しそうだよ。早く食べよ」
改めて思った。
やっぱり、彼は大人だ。
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