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Episode9:夏の終わりに
③
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「長さはこれくらいで大丈夫ですか?」
「ああ、じゅうぶんや。ありがとう、崇弥くん」
継ぎ目の強度を再確認すると、崇弥は脚立の中段からひょいと飛び降りた。実に軽やかな身のこなし。夏空の下で、汗ばんだ肌がきらめく。
昼食後。なにやら忙しない様子の祖父に瑛茉が声をかければ、一階の掃き出し窓に垂らしてある簾が傷んでしまったらしく、これから交換するのだと告げられた。
掃き出し窓の高さはおよそ二メートル。建物の基礎部分を合わせるとそれ以上だ。
祖父が作業することを祖母とともに心配していると、自分がやると崇弥が買って出てくれた。この申し出に安堵のため息をついたのは、今から一時間前のこと。
作業を終え、脚立を納屋に片して戻ってきた崇弥に、祖母がよく冷えたほうじ茶を差し出す。崇弥は頭を下げると、にこやかにそれを受け取った。
「助かりました。主人が高い場所で作業するんは、やっぱり心配で……」
「いえ。ほかにも気になるところがあれば遠慮なく言ってください」
崇弥のこの言葉に、祖父母は改めて感謝の気持ちを伝えた。申し訳なく思う一方、ふたり暮らしの高齢夫婦にとって、崇弥は非常に頼もしい存在だった。
「ありがとうございました。これで汗拭いてください」
そこへ、ストローハットをかぶった瑛茉がやってきた。手には竹で編まれたバスケット。その中からおしぼりを取り出し、崇弥に手渡す。
「わざわざ冷やしてくれたの? ありがとう」
冷たいそれで、崇弥は額や首筋の汗を拭き取った。ひんやりとした感触が、焼けた肌に心地いい。
孫娘と彼の微笑ましいそのやりとりを、祖父母は見守っていた。孫娘の幸せそうな顔に、おのずと目を細める。
風にそよぐ木々が涼しげな影を落とし、木漏れ日のまだら模様が躍る。
降り注ぐ蝉しぐれが、夏の午後を彩る。
「あ、そうそう」
と、何かを思い出したように、祖母がおもむろに口を開いた。崇弥に向かって、優しく話しかける。
「ゆっくり休憩してからでかまわないので、あとで瑛茉と一緒に私の部屋まで来ていただけますか?」
唐突なこの申し出に、疑問符を浮かべながらも崇弥は頷いた。屋内へと踵を返す祖父母を見送る。
隣の瑛茉と顔を見合わせる。祖母の意図を無言で問いかけるも、どうやら瑛茉にとっても初耳だったらしく、ふるふると小さくかぶりを振った。
「ああ、じゅうぶんや。ありがとう、崇弥くん」
継ぎ目の強度を再確認すると、崇弥は脚立の中段からひょいと飛び降りた。実に軽やかな身のこなし。夏空の下で、汗ばんだ肌がきらめく。
昼食後。なにやら忙しない様子の祖父に瑛茉が声をかければ、一階の掃き出し窓に垂らしてある簾が傷んでしまったらしく、これから交換するのだと告げられた。
掃き出し窓の高さはおよそ二メートル。建物の基礎部分を合わせるとそれ以上だ。
祖父が作業することを祖母とともに心配していると、自分がやると崇弥が買って出てくれた。この申し出に安堵のため息をついたのは、今から一時間前のこと。
作業を終え、脚立を納屋に片して戻ってきた崇弥に、祖母がよく冷えたほうじ茶を差し出す。崇弥は頭を下げると、にこやかにそれを受け取った。
「助かりました。主人が高い場所で作業するんは、やっぱり心配で……」
「いえ。ほかにも気になるところがあれば遠慮なく言ってください」
崇弥のこの言葉に、祖父母は改めて感謝の気持ちを伝えた。申し訳なく思う一方、ふたり暮らしの高齢夫婦にとって、崇弥は非常に頼もしい存在だった。
「ありがとうございました。これで汗拭いてください」
そこへ、ストローハットをかぶった瑛茉がやってきた。手には竹で編まれたバスケット。その中からおしぼりを取り出し、崇弥に手渡す。
「わざわざ冷やしてくれたの? ありがとう」
冷たいそれで、崇弥は額や首筋の汗を拭き取った。ひんやりとした感触が、焼けた肌に心地いい。
孫娘と彼の微笑ましいそのやりとりを、祖父母は見守っていた。孫娘の幸せそうな顔に、おのずと目を細める。
風にそよぐ木々が涼しげな影を落とし、木漏れ日のまだら模様が躍る。
降り注ぐ蝉しぐれが、夏の午後を彩る。
「あ、そうそう」
と、何かを思い出したように、祖母がおもむろに口を開いた。崇弥に向かって、優しく話しかける。
「ゆっくり休憩してからでかまわないので、あとで瑛茉と一緒に私の部屋まで来ていただけますか?」
唐突なこの申し出に、疑問符を浮かべながらも崇弥は頷いた。屋内へと踵を返す祖父母を見送る。
隣の瑛茉と顔を見合わせる。祖母の意図を無言で問いかけるも、どうやら瑛茉にとっても初耳だったらしく、ふるふると小さくかぶりを振った。
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