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Episode9:夏の終わりに
④
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西へと傾きはじめた陽光が、渡り廊下に差し込む。
軋む床板を踏みしめながら、瑛茉と崇弥は祖母の部屋へと足を運んだ。手入れの行き届いた中庭の池では、悠々と鯉が泳いでいる。
幼い頃、よくここを走っては母に叱られていたのだと崇弥に話せば、とても想像できないと彼は目を丸くした。
祖母の部屋は、この廊下の突き当たりにある。入口に置かれたレトロな盆栽棚には、松や紅葉の貴風盆栽とともに、精霊牛馬が供えられていた。
「おばあちゃん、入ってもいい?」
障子の外から声をかければ、中から入室を促す声が聞こえた。ゆっくりと、両手で障子を滑らせる。
部屋の中央。畳の上。
そこには、見覚えのある男物と女物の浴衣が、丁寧に並べられていた。
「これ、お父さんとお母さんの……?」
「そうよ。せっかくやけん、明日の花火大会にふたりで着て行き」
深みのある上品な紺色と、しっとりと澄んだ縹色の浴衣。男物は楊柳、女物はしじら織りで、どちらも凛とした清涼感があった。
「陽子のは直さんでも瑛茉に合うと思うけど、お父さんのはどうかな思て。崇弥さんも身長高いから、たぶん大丈夫やと思うけど」
そう言って男物の浴衣を持つと、祖母は崇弥に近づいた。服の上から手際よくあてがい、丈の長さを確認する。
「あら、ぴったり。これなら直さんでも大丈夫そうやね。肩幅や袖の長さは大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。……よろしいんですか? 私が着ても」
「もちろん。この子の父親も、片手で余るくらいしか袖通してないんです。是非、着てやってください」
崇弥の言葉に、祖母はあたたかい笑みを浮かべた。やっぱり男前は何着ても似合うわー、と声を弾ませながら、浴衣をハンガーへと掛け直す。
瑛茉の祖母を、祖父を、見ているとわかる。瑛茉が、こんなにも真っ直ぐに育った理由。
自分のことを大切な孫娘の交際相手として認め、受けいれてくれたふたりの厚意が、崇弥の心にしんしんと降り積もっていく。
初めて瑛茉に会った日のことを思い返し、崇弥はそっと瞼を閉じた。
軋む床板を踏みしめながら、瑛茉と崇弥は祖母の部屋へと足を運んだ。手入れの行き届いた中庭の池では、悠々と鯉が泳いでいる。
幼い頃、よくここを走っては母に叱られていたのだと崇弥に話せば、とても想像できないと彼は目を丸くした。
祖母の部屋は、この廊下の突き当たりにある。入口に置かれたレトロな盆栽棚には、松や紅葉の貴風盆栽とともに、精霊牛馬が供えられていた。
「おばあちゃん、入ってもいい?」
障子の外から声をかければ、中から入室を促す声が聞こえた。ゆっくりと、両手で障子を滑らせる。
部屋の中央。畳の上。
そこには、見覚えのある男物と女物の浴衣が、丁寧に並べられていた。
「これ、お父さんとお母さんの……?」
「そうよ。せっかくやけん、明日の花火大会にふたりで着て行き」
深みのある上品な紺色と、しっとりと澄んだ縹色の浴衣。男物は楊柳、女物はしじら織りで、どちらも凛とした清涼感があった。
「陽子のは直さんでも瑛茉に合うと思うけど、お父さんのはどうかな思て。崇弥さんも身長高いから、たぶん大丈夫やと思うけど」
そう言って男物の浴衣を持つと、祖母は崇弥に近づいた。服の上から手際よくあてがい、丈の長さを確認する。
「あら、ぴったり。これなら直さんでも大丈夫そうやね。肩幅や袖の長さは大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。……よろしいんですか? 私が着ても」
「もちろん。この子の父親も、片手で余るくらいしか袖通してないんです。是非、着てやってください」
崇弥の言葉に、祖母はあたたかい笑みを浮かべた。やっぱり男前は何着ても似合うわー、と声を弾ませながら、浴衣をハンガーへと掛け直す。
瑛茉の祖母を、祖父を、見ているとわかる。瑛茉が、こんなにも真っ直ぐに育った理由。
自分のことを大切な孫娘の交際相手として認め、受けいれてくれたふたりの厚意が、崇弥の心にしんしんと降り積もっていく。
初めて瑛茉に会った日のことを思い返し、崇弥はそっと瞼を閉じた。
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