【元幹部自衛官 S氏 執筆協力】元自衛官が明治時代に遡行転生!〜明治時代のロシアと戦争〜

els

文字の大きさ
60 / 135

第60話.迎エ撃ツ

しおりを挟む
一服の休憩が終わった頃、ルシヤが動き始めた。追撃だろうが、今というのはどういうわけか。
さて慎重なのか鈍間(のろま)なのか、来たからには我々を排除する必然性を感じてくれたという事だが。
声のトーンを少しばかり落として、天城小隊長に話しかけた。

「動き始めましたね。ゆっくりこちらに向かって来ている」
「見えるか?」
「木々の合間故に、はっきりとは見えませんが多分そうだ」
「俺には全く見えんが、そうか」

彼はそう言いながら、皆に小銃の準備を命令する。銃剣使った後だからと言って、動作不良ですでは困るのだ。
残弾の確認と、各部の動作確認を徹底させる。

「しかし奴ら。慌てて追撃という訳ではなかったな。ケツを向けたらすぐに追いかけて来るかと思ったが」
「誰の判断でしょうね、踏ん切りの悪いことだ」

言いながら、ふんと鼻で笑った。いかん爺様のクセがうつったか、これも遺伝だろうか。

「まあ。おかげで一つ、息をつけた」
「はい」
「それで、数はわかるのか」
「いえ。そこまではわかりません」

小隊長は「そうか」と短く言ってルシヤが登って来る下手の方と、上手の方を交互に見た。どちらも道などない、完全な山の藪だ。

「あそこで迎え撃つ」

彼は少し登った先の、窪地の岩場を指して言った。
そこは身を隠すための大きな岩がゴロゴロしているし、付近には背の高い樹木が少なく、隠れて接近するのは用意ではない。
先立って陣取る事が出来れば、有利に事が運ぶかもしれないが。

「はい。防御にはうってつけだ」
「うん、兵に伝えよ」

防御にはうってつけ、か。本当にそうか。
囲まれたらどれだけ持つ?弾薬も、何の補給もないまま、孤立して。潰されて確実な死を待つだけではないのか。

いっそ少数に分かれて木々に潜んで、散発的な攻撃をするか?
いや、だめだ。連絡手段もないまま、兵を細分化しても指示できない。事前に打ち合わせできれば良いが、そうもいかない。
ひとかたまりになって防御するならば、やはりそれが一番、効率が良いのか。

任務達成の為に、命(コスト)を最大限に有効に使うということならば、そうか。
天城小隊長。やんごとなき生まれだと聞くが、それを感じさせない采配だな。

我々は小隊長の指示の元、素早く岩場に移動した。


……


配置についた後、小隊長は兵を集めて言った。皆、真剣な顔つきでそれに注目している。
ついこの間までは新品の、輝くような軍服を纏っていた我々だが。今となっては泥にまみれ、血にまみれたひどい姿だ。

「諸君。我々は日本国の為に人柱となり、ここに骨を埋めよう。されば我らが十一特設聯隊がルシヤ兵を排撃し、必ずや我が国に勝利をもたらすであろう!」

小隊長の言葉に、ぐっと皆の口の端が引き締まった。
彼は私に目配せをする。何か言えという事か。静かに頷いて、見えないマイクを引き継いだ。

「良いか。もしも我々がこの場ですぐさま陥落、または降伏の憂き目にあえば、かのルシヤ兵どもは後顧の憂いなく中隊主力に殺到し、それらを圧し潰す。これは必然だ」

兵らは黙って、話を聞いている。
鼻の頭をこすりながらも、視線だけは上を向いて。

「そうなれば村々は焼かれ、略奪され。そして我々の父兄が開拓(ひら)いた田畑は踏みにじられて、日本人はこの地を去る事となるだろう」

一言一句聞きもらすまいと、その瞳は全て私の挙動とともにあった。
さらに一呼吸置いて続ける。

「だから、我々十二人は必ずや生き残らねばならない。最後の一兵となっても戦い続け、後の兵の助けとならなければならない」

一人一人の目を見て、言った。

「良いか、安易に死ぬな!我らが一人でも生き残り、一分一秒でも長く敵を釘付けにすることが、家族兄弟の為、ひいては皇国の為に貢献する事となる!」

そうだ、生きて。

「世界が、日本国中がこの戦端に注目している。恥ずべき屍を晒すな、生きて国を支える柱となれ。小隊長殿はこう仰っているのだ!」

私の言葉を聞いた彼らの瞳に、炎が宿った。
生命力を燃料に、気高い心を燃やしたのだ。その火は何者にも掻き消されない、真紅の色をしている。

「わかったか!」
「「はい!」」

そして威勢の良い返事が教えてくれた。我が方の士気は、盤石であると。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...