Recreation World ~とある男が〇〇になるまでの軌跡〜

虚妄公

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第1章 始まり

25話 襲来⁉︎

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「では行きます」

 男の体が次第にぶれだし男が20人ほどに増えた。

 男はバラバラに動き出し素早い動きでリュウジンの周囲を駆け回っていた。

 男の分身の2人がリュウジンに向かって来た。

 リュウジンはその分身に視線を向けることもなく目を瞑り居合の構えで立っていた。

 そしてリュウジンにある程度まで近づくとその2つの分身は瞬く間に斬り殺された。

 テルはさっき見た技だ、とすぐに何が起こったのかは理解できた。
 そして、息をするのも忘れるぐらいにその戦いを見ていた。
 リンはリュウジンの一挙手一投足も見逃すまいと食い入るようにその戦いを見ていた。

 2人の分身が斬り殺された男はすぐさま分身を補充し、同様の攻撃をひたすら続けていた。

(さて、一種の結界のようなものですか・・・。気配に反応しているのでしょうか?)

 そう思った男は気配のない分身を作り出しリュウジンに攻撃した。
 リュウジンはほんの一瞬だけ対処が遅れたように見えた。

(ふむ。一瞬の遅れであるが・・・。わざと・・・誘っている場合もありますね~。私の『存在消去』を見破ったのですから気配がわからない程度で気づかないものなんですかね~?
 仕方ありませんね。時間があればもう少しじっくり殺り合いたかったですが、もうそろそろ本格的にやばいですね。私の『危険感知』がかなり警鐘をならしていますし・・・)

 リュウジンは気配を消した分身に対して対処が遅れていた。
 それは男の思ったわざとなどではなく、本当に一瞬気づかなかったのである。
 男のスキル『存在消去』に気づいたのは男が攻撃の間際出した僅かな殺気に気づいたからであった。本来の暗殺者ならば、そしてこの男もその気になれば殺気など出すはずがないのであるが、最近退屈していた男は無意識のうちに暗殺ではなく戦闘をしたいと思ったため殺気を出していたのである。
 気配を消した分身に気づいたのは、リュウジンの異質な才能『五感の強化』によって僅かな空気振動を察知して攻撃したのである。
 しかし『存在消去』は実体すらない状態での攻撃を可能とするため男がその気になれば一切の痕跡を消して攻撃することが可能であった・・・
 そして男はその選択を選んだ。

 ――『存在消去』――
 全ての感情を無にしただ目の前の男を全力で殺すことだけに集中した。
 更に念には念をいれて先ほどリュウジンにダメージを与えたスキルを発動し、分身が攻撃をした隙間を狙った完璧の一撃であった。

(獲った!)

 男はリュウジンの体に自身の武器が触れた瞬間勝ちを確信した。

 しかし

 ――新月流奥義『竜王』――

 男は咄嗟に体を捻った、が
「グハッ!」
 男は吹き飛びゴロゴロと転がった。

「やるな。まさか、ここまでして避けられるとは思わなかったぜ。・・・やはり世界は広いな。俺なんてまだまだだってことだな」
 リュウジンはまだ知らぬ強者などいっぱいいるのだなと思い上がっていた自身を反省し、このゲームに出会えたことを心から感謝していた。

「フフフ、こちらのセリフですよ。まさかあの状態から反撃を喰らうとは思っても見ませんでした」
 男は脇腹辺りを手で押さえながらもまだ余裕のある様子で立っていた。

「何簡単なことよ。お前のスキルはたしかに厄介ではあるが、どれだけ攻撃が見えなかろうが俺に攻撃が当たった時点でそれはもう見えない攻撃ではなくなるからな」

 その時、ドゴン!!、という大きな音と共に4mくらいある大きな黒い狼らしき生物がいきなりチェダークランがいる場所とリュウジン達を分けるように登場した。
 リュウジンはその生物を見た瞬間背中に電気が走ったかのようにゾクっとした。

 気づくと執事服の男はいなくなっており、その生物は次の瞬間一瞬で消え、チェダークランの2人を噛み砕いた。

「は・・・?」
「え・・・?」
 男たちはそんな間抜けな声とともに上半身を喰われ絶命した。

(全く移動が見えなかった!ずっとビリビリと感じてたものの正体はこいつか!)

「テル!すぐに回復とありったけの支援を寄越せ!!リン!その後そいつを連れて逃げろ!!」

 リュウジンのHPは全快し、かなりのバフによってなんとかこの狼と戦うことはできるようになった。

 リュウジンはその瞬間テルのほうに走り、前に割って入ってなんとか狼もどきの攻撃を防御した。
 リュウジンは狼もどきの移動が見えていたわけではないが、戦闘の勘で何となくそこに攻撃がくる気がしたので防御したのであった。

「さっさと行け!!」

 ――グラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ

 狼もどきは怒りの咆哮を上げた。
 まるで餌ごときに抵抗されたのを怒っているかの如く・・・
 空気が震え生物に根源的な恐怖を思い出させた。

 次の瞬間、狼もどきは前足を上げ振り下ろした。
 その動きがまるでスローモーションのようにリュウジンには見えていた。
 そして、リュウジンは固まっていた体をどうにか動かして間一髪右に飛んだ。

 すると軽く振っただけで狼もどきの爪の跡で地面が抉れ、森の木々が消し飛んでいた。

(クソ!化け物が!流石に今の段階でこれに勝てるとは思えねが・・・。少しでも時間は稼がねぇと・・・!そして一撃は入れる!!)

 そう思い反撃に出ようとしたリュウジンであったが、狼もどきが前足を横なぎに振ってきた。
 リュウジンは伏せることで何とか攻撃を間一髪で避けたが、そこら一帯が既に森とは呼べなくなっていた。

「痛っ!」
 リンの声が方を見ると、リンが尻餅をついており何かに弾き返されたようだ。

 それは狼もどきが張った結界で戦闘になった時点で結界を壊さないと逃げることなどできなかったのである。

 リュウジンは一瞬注意を反らしてしまい、気づいた時には狼もどきの攻撃が目の前に迫っていた。

 ――新月流『流泉』――

 攻撃を往なすべく技を放ったが、完璧に往なすことは出来ずリュウジンは吹っ飛んだ。

 リンはユニークスキル『怪力無双』を使い金棒を持って全力で結界を叩いていた。
 しかしリンのユニークスキルを持ってしてもヒビは入るが破るまでは出来ていなかった。

 狼もどきは満身創痍であろうリュウジンは後回しにし自身の結界を壊そうとしている不届き者を先に処理することにしたのである。

「・・・グハッ!・・・ハァ・・・ハァ」

 リュウジンは血を吐き満身創痍であった。
 そしてリュウジンは一つの選択をした。
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