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第2章 ダンジョン探索編
35話 新月流の鍛錬
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真一はログアウトした後、少し遅めの昼食を食べた後に道場へと向かった。
「お?今日は凛ちゃんとデートじゃなかったのか?置いてかれでもしたか?」
そう言ってニヤニヤと笑っている師範の1人である真壁陸朗は真一に竹刀を渡してきた。
「女心の一つも理解できないといつか愛想尽かされちまうぞ~」
自身の無性髭を撫でながら揶揄うように言ってきた。
「ッチ!相手しろ」
「全く可愛げのねぇガキだな~。昔はもうちょっと揶揄い甲斐があったんだが・・・」
そう言って道場の模擬戦スペースへと歩いて行った。
新月流の鍛錬は毎日欠かさず行わなければならない基礎鍛錬である腕立てなどの筋肉トレーニングや20kmの走り込みがある。
真一は朝起きるとまずは基礎鍛錬をしている。
4歳のときから始めた基礎鍛錬で今では20kmをほぼ全力疾走で走りきることができるようになっていた。
そして精神統一。新月流の技は多大な集中力を要するものや、実戦での運用を主としているため精神の強靭さなしでは真に新月流を実戦で扱うことは出来ないのである。
次に技の習得。新月流の技を身につけるための修行でもあり、また自身固有の技などを修行することもある。
最後に模擬戦。新月流では模擬戦は毎日のように行われており、戦いの中での感覚や技を実際に試すことでより洗練された強さを身につけていくのである。
そして新月流の道場の模擬戦には最先端技術を取り入れ、斬ったダメージや状態を加味してA Iが勝敗判定をしてくれるのである。
もちろんそれを使わずに戦うこともできるが普段はこのシステムを使っているのである。
そして真一は門下生では鍛錬にもならないので、いつも師範としか模擬戦をしない。
今日いた師範は陸郎だけだったのでこの男と模擬戦をすることにしたのである。
そしてお互いがある程度距離を空けて向かい合うと合図もなくいきなり始まった。
真一はウォーミングアップに辛うじて竹刀が見える速度で何度もをしていたが、陸郎は涼しげな顔でその全てを捌いていた。
「恋愛にかまけて腕が落ちたんじゃないのか?」
真一は徐々に速度を落としていき、ここぞというところで全速力で攻め始めた。
「うおっと!危ないねぇ~」
「ぬかせ!余裕の顔しやがって!」
そう言って先ほどまでに苛烈な攻めをし始めた
しかしお互い新月流の技は一切使っていなかった。
「悩める若人よ。そんな迷いのある太刀で俺が当たるとでもおもってんのか?さっさと凛ちゃんに謝ってこいよ」
真一は流石にイラッとして
「違えよ!恋愛じゃねぇよ!そもそも凛は関係ねぇ!」
そして冷静さを欠いた真一は
――新月流『昇龍』――
新月流の技を放った。
真一が放った突きがまるで龍のようにうねりながら陸郎に向かっていった。
陸郎はそんな真一を退屈そうに見ながら真一を最も簡単に斬った。
陸郎は真一の放った技を自身の竹刀に当たった瞬間に力の向きを地面に向け体勢を崩した真一をそのまま斬ったのである。
「がはっ!」
「おいおい・・・本当に大丈夫か?」
まさかこの程度で終わると思ってなかった陸郎も流石に心配になってきた。
「もう一回だ」
「・・・ああいいぜ」
真一は目を閉じ精神統一をした。
思い出すのは狼もどきと戦った時や第4騎と出会ったときのこと。
あれほど自分が無力であると感じたことはないと当時の自分の情けなさを思い出し闘気を漲らせていた。
う~ん、さっきとは雰囲気が変わったね~
でも、まだまだ心がブレているね~
ゾクッ!っと突然陸郎の背中に電気が走ったように感じた。
次の瞬間正面に立っていた真一が消えたように見えた。
左。
しかし陸郎は簡単に竹刀で防いだ。
う~ん、さっきよりはマシだけど・・・
これは違うね~
これじゃあただ感情に飲み込まれているだけ・・・
悩める若者を導くのも大人の役目ってね!
今まで全く攻めてなかった陸郎が初めて攻撃を行った。
ただの上段からの打ち下ろしであったが、外から見ると真一のいた所とは全く別のところに攻撃していた。
しかし動いていた真一は吸い込まれるように振り下ろされた竹刀の射線に入った。
咄嗟に上をガードした真一ではあるが、勢いを殺しきれず弾き飛ばされた。
陸郎はすかさず真一に追いつき再び上段から振り下ろした。
真一は即座に体勢を整えて受け流そうとした。
「お?それは俺相手には悪手だろ」
――新月流『流泉』――
陸郎の異質な才能は『流れ』。ありとあらゆる流れを知覚することができる。力の流れ、空気の流れ、筋肉の流れ、様々な流れを読み取ることで未来予知に近いことすら出来るのであった。
そして『流泉』のような攻撃を往なす技はそれこそ陸郎の領域であり達人に対して素人が勝負を挑んでいるようなものであった。
陸郎の竹刀が真一の竹刀に触れた瞬間、真一の技は不発に終わりそのまま斬られる・・・はずであった。
竹刀が触れた瞬間、真一は力の支配権を奪われ本来往なす方向とは逆向きに竹刀を誘導され重心が崩れ隙を晒した。
そしてその瞬間に陸郎は真一を斬ろうとしたが、陸郎は突然体勢を乱れてしまい斬る場所がズレたのである。
その攻撃は真一の左肩に当たりはしたが致命傷には程遠いのは見て明らかであった。
そしてその一瞬の油断が勝敗を分けた。
陸郎にとってはいまの一撃で終わるはずであった。そして真一は負けるつもりなど毛頭なかった。
その気持ちの差が初動に差を生んだ。
真一は体勢を崩した状態で即座に攻撃した。
――新月流『龍閃』――
本来ならば刀を振り抜いた状態からそのまま続けて攻撃する技であるが、陸郎によって逸らされた状態がその状態に近いものだったため強引に技を放ったのであった。
本来の威力には程遠いがその牙は充分陸郎に届く者であった。
陸郎は咄嗟にガードしようとしたが、油断と久々に自身が乱されたことによってガードが間に合わずものに喰らってしまったのであった。
「ぐ・・・」
竹刀による攻撃だったので対したダメージではなかったが、心臓を突かれていたため負け判定となっていた。
「クハハ。やるじゃねぇか。まさか負けるとは思わんかったぞ?」
表面上は穏やかな陸郎であったが、内心ではかなり戸惑っていた。
油断か?・・・いや、あり得ねえな。どれだけ油断してようが俺が力の支配権を取られることなどないはずだ・・・。
何もないとこで躓いたか?!俺ももう歳か?
陸郎は、ハハハ、と乾いた笑いを上げていた。
「は、全く本気でやってねえやつにそんなこと言われても嬉しくねえよ。そもそも二刀ですらねぇじゃねえか。舐めやがって」
陸郎はそもそも二刀使いなので竹刀1本でやっている時点で全く本気ではないのである。
「それでも1勝は1勝だ。勝負の世界にもし、なんてものは存在しねえ。勝ったか負けたかだ。今回はお前の勝ちだった。それが全てさ。で、実際のとこと凛ちゃんとの仲はどうやのよ?」
真剣な顔で最初は言っていた陸郎であるが、後半にいつもの調子に戻った。
鬱陶しいと思った真一は適当にあしらい自己鍛錬に戻ったのである。
「そういや凛はどうした?」
自己鍛錬に戻っても付いてきて真一が素振りをしているのを横になって見ていた陸郎に尋ねた。
いつもなら凛もこの道場にいるのに今日に限ってはいなかったので、まだリクルドの世界の中にいるのか?とも思ったのである。
「あ~、凛ちゃんなら昼飯食ってからはずっとあの部屋で精神統一してんぞ。なんか深刻な顔して、「このままじゃダメなんっす」って言ってたがお前なんか知ってるか?」
真一はおそらく第4騎で気絶したことであろうと思いながら、ひたすら素振りを続けた。
「お~い!聞いてるのか?答えてやったんだから返事くらいしろよ。お~い!お~い!」
腕で頭を支えた状態で横になっている陸郎がひたすら声をかけてきたが鬱陶しいので無視した。
そしてこんなやつに地力で負けているのが嫌で、より鍛錬に精を出したのである。
「まぁ何にせよ。凛ちゃんを大事にすることだ。守るものがあるやつは強いのよ」
そう言って黙った陸郎の言葉が頭の中で何度も流れていた。
そして真一が気づいていない変化もまた徐々に起きていた。
「お?今日は凛ちゃんとデートじゃなかったのか?置いてかれでもしたか?」
そう言ってニヤニヤと笑っている師範の1人である真壁陸朗は真一に竹刀を渡してきた。
「女心の一つも理解できないといつか愛想尽かされちまうぞ~」
自身の無性髭を撫でながら揶揄うように言ってきた。
「ッチ!相手しろ」
「全く可愛げのねぇガキだな~。昔はもうちょっと揶揄い甲斐があったんだが・・・」
そう言って道場の模擬戦スペースへと歩いて行った。
新月流の鍛錬は毎日欠かさず行わなければならない基礎鍛錬である腕立てなどの筋肉トレーニングや20kmの走り込みがある。
真一は朝起きるとまずは基礎鍛錬をしている。
4歳のときから始めた基礎鍛錬で今では20kmをほぼ全力疾走で走りきることができるようになっていた。
そして精神統一。新月流の技は多大な集中力を要するものや、実戦での運用を主としているため精神の強靭さなしでは真に新月流を実戦で扱うことは出来ないのである。
次に技の習得。新月流の技を身につけるための修行でもあり、また自身固有の技などを修行することもある。
最後に模擬戦。新月流では模擬戦は毎日のように行われており、戦いの中での感覚や技を実際に試すことでより洗練された強さを身につけていくのである。
そして新月流の道場の模擬戦には最先端技術を取り入れ、斬ったダメージや状態を加味してA Iが勝敗判定をしてくれるのである。
もちろんそれを使わずに戦うこともできるが普段はこのシステムを使っているのである。
そして真一は門下生では鍛錬にもならないので、いつも師範としか模擬戦をしない。
今日いた師範は陸郎だけだったのでこの男と模擬戦をすることにしたのである。
そしてお互いがある程度距離を空けて向かい合うと合図もなくいきなり始まった。
真一はウォーミングアップに辛うじて竹刀が見える速度で何度もをしていたが、陸郎は涼しげな顔でその全てを捌いていた。
「恋愛にかまけて腕が落ちたんじゃないのか?」
真一は徐々に速度を落としていき、ここぞというところで全速力で攻め始めた。
「うおっと!危ないねぇ~」
「ぬかせ!余裕の顔しやがって!」
そう言って先ほどまでに苛烈な攻めをし始めた
しかしお互い新月流の技は一切使っていなかった。
「悩める若人よ。そんな迷いのある太刀で俺が当たるとでもおもってんのか?さっさと凛ちゃんに謝ってこいよ」
真一は流石にイラッとして
「違えよ!恋愛じゃねぇよ!そもそも凛は関係ねぇ!」
そして冷静さを欠いた真一は
――新月流『昇龍』――
新月流の技を放った。
真一が放った突きがまるで龍のようにうねりながら陸郎に向かっていった。
陸郎はそんな真一を退屈そうに見ながら真一を最も簡単に斬った。
陸郎は真一の放った技を自身の竹刀に当たった瞬間に力の向きを地面に向け体勢を崩した真一をそのまま斬ったのである。
「がはっ!」
「おいおい・・・本当に大丈夫か?」
まさかこの程度で終わると思ってなかった陸郎も流石に心配になってきた。
「もう一回だ」
「・・・ああいいぜ」
真一は目を閉じ精神統一をした。
思い出すのは狼もどきと戦った時や第4騎と出会ったときのこと。
あれほど自分が無力であると感じたことはないと当時の自分の情けなさを思い出し闘気を漲らせていた。
う~ん、さっきとは雰囲気が変わったね~
でも、まだまだ心がブレているね~
ゾクッ!っと突然陸郎の背中に電気が走ったように感じた。
次の瞬間正面に立っていた真一が消えたように見えた。
左。
しかし陸郎は簡単に竹刀で防いだ。
う~ん、さっきよりはマシだけど・・・
これは違うね~
これじゃあただ感情に飲み込まれているだけ・・・
悩める若者を導くのも大人の役目ってね!
今まで全く攻めてなかった陸郎が初めて攻撃を行った。
ただの上段からの打ち下ろしであったが、外から見ると真一のいた所とは全く別のところに攻撃していた。
しかし動いていた真一は吸い込まれるように振り下ろされた竹刀の射線に入った。
咄嗟に上をガードした真一ではあるが、勢いを殺しきれず弾き飛ばされた。
陸郎はすかさず真一に追いつき再び上段から振り下ろした。
真一は即座に体勢を整えて受け流そうとした。
「お?それは俺相手には悪手だろ」
――新月流『流泉』――
陸郎の異質な才能は『流れ』。ありとあらゆる流れを知覚することができる。力の流れ、空気の流れ、筋肉の流れ、様々な流れを読み取ることで未来予知に近いことすら出来るのであった。
そして『流泉』のような攻撃を往なす技はそれこそ陸郎の領域であり達人に対して素人が勝負を挑んでいるようなものであった。
陸郎の竹刀が真一の竹刀に触れた瞬間、真一の技は不発に終わりそのまま斬られる・・・はずであった。
竹刀が触れた瞬間、真一は力の支配権を奪われ本来往なす方向とは逆向きに竹刀を誘導され重心が崩れ隙を晒した。
そしてその瞬間に陸郎は真一を斬ろうとしたが、陸郎は突然体勢を乱れてしまい斬る場所がズレたのである。
その攻撃は真一の左肩に当たりはしたが致命傷には程遠いのは見て明らかであった。
そしてその一瞬の油断が勝敗を分けた。
陸郎にとってはいまの一撃で終わるはずであった。そして真一は負けるつもりなど毛頭なかった。
その気持ちの差が初動に差を生んだ。
真一は体勢を崩した状態で即座に攻撃した。
――新月流『龍閃』――
本来ならば刀を振り抜いた状態からそのまま続けて攻撃する技であるが、陸郎によって逸らされた状態がその状態に近いものだったため強引に技を放ったのであった。
本来の威力には程遠いがその牙は充分陸郎に届く者であった。
陸郎は咄嗟にガードしようとしたが、油断と久々に自身が乱されたことによってガードが間に合わずものに喰らってしまったのであった。
「ぐ・・・」
竹刀による攻撃だったので対したダメージではなかったが、心臓を突かれていたため負け判定となっていた。
「クハハ。やるじゃねぇか。まさか負けるとは思わんかったぞ?」
表面上は穏やかな陸郎であったが、内心ではかなり戸惑っていた。
油断か?・・・いや、あり得ねえな。どれだけ油断してようが俺が力の支配権を取られることなどないはずだ・・・。
何もないとこで躓いたか?!俺ももう歳か?
陸郎は、ハハハ、と乾いた笑いを上げていた。
「は、全く本気でやってねえやつにそんなこと言われても嬉しくねえよ。そもそも二刀ですらねぇじゃねえか。舐めやがって」
陸郎はそもそも二刀使いなので竹刀1本でやっている時点で全く本気ではないのである。
「それでも1勝は1勝だ。勝負の世界にもし、なんてものは存在しねえ。勝ったか負けたかだ。今回はお前の勝ちだった。それが全てさ。で、実際のとこと凛ちゃんとの仲はどうやのよ?」
真剣な顔で最初は言っていた陸郎であるが、後半にいつもの調子に戻った。
鬱陶しいと思った真一は適当にあしらい自己鍛錬に戻ったのである。
「そういや凛はどうした?」
自己鍛錬に戻っても付いてきて真一が素振りをしているのを横になって見ていた陸郎に尋ねた。
いつもなら凛もこの道場にいるのに今日に限ってはいなかったので、まだリクルドの世界の中にいるのか?とも思ったのである。
「あ~、凛ちゃんなら昼飯食ってからはずっとあの部屋で精神統一してんぞ。なんか深刻な顔して、「このままじゃダメなんっす」って言ってたがお前なんか知ってるか?」
真一はおそらく第4騎で気絶したことであろうと思いながら、ひたすら素振りを続けた。
「お~い!聞いてるのか?答えてやったんだから返事くらいしろよ。お~い!お~い!」
腕で頭を支えた状態で横になっている陸郎がひたすら声をかけてきたが鬱陶しいので無視した。
そしてこんなやつに地力で負けているのが嫌で、より鍛錬に精を出したのである。
「まぁ何にせよ。凛ちゃんを大事にすることだ。守るものがあるやつは強いのよ」
そう言って黙った陸郎の言葉が頭の中で何度も流れていた。
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