魔法宇宙戦艦プレアデス!

灰猫ベル

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第1章 始まりのお話

第7話 初めての宇宙ロボット戦

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 懐かしい感覚だ。
 サトシの機体エレクトラにアルデの機体アルキュオネが随伴している。

「前の戦いを思い出すな」
「そうじゃな」

 視界の先には敵戦艦の機影が見える。
 こちらには気づいてないようだ、主砲を基地に向けている。

「スピードで行くぞっ! スラスター全開」
「了解じゃ!」

 敵艦の大きさは約300メートルほど、材質は鋼鉄に見える。
 サトシとアルデは高熱剣ヒートソードを取り出す。

 敵艦の中央部主砲付近に着艦、すぐさま敵主砲を破壊した。
 主砲は爆発、内部へ通じる穴が開いた。
 穴は艦内の空気を外に吐き出す。
 物や人が宇宙空間へ投げ出された。

「サトシ、ここは頼むぞ」
 そういうとアルデは近くにいる次の艦に狙いを定め飛ぶ。

 サトシは風穴から艦内に侵入した。
 そして内部を滅茶滅茶に切りつけて逆側に貫通。

「よし、これくらいで良いか。大爆発魔法エクスプロージョン!」

 敵艦は中央部分の爆発で破断した。
 敵が戦闘不能になったことを確認してサトシはアルデを追う。

 敵はこちらに気づいたようだ、戦艦がアルデに主砲を向け発射するが、アルデは難なくそれを避けた。

「どこを狙っておる。今度はこっちの番じゃな! 速射火炎魔法バルカン

 アルキュオネの手から炎のつぶてが無数に打ち出される。
 が、敵のダメージは軽微だ。

「フム……火力不足か」

「アルデ、敵の装甲は硬い。装甲の薄い部分を撃つぞ」

 艦橋にガラス質の部分がある。
 サトシとアルデはそこに目をつけた。

「「速射火炎魔法バルカン」」

 艦橋が炎に包まれ、爆発する。





 西野は真っ暗な空間を漂っていた。

 視界の端でサトシとアルデが戦っているのが見える。
 しかし、そんなものはどうでもよくなっていた。
 重力から解放され脱力していることが心地よかった。

「おい! 西野! 何してるんだ!」

 突然名前を呼ばれたことで西野は我にかえった。
 6号機アステロペからの通信……吉川だ。

「生きてるなら動け! 俺死んじまうよ!」

 吉川はジェミ戦艦2隻に捕捉されたようだ。
 対空砲の雨が吉川に降り注ぐ。
 ギリギリでかわしているが、これでは相手に近づくことができない。

「……吉川……吉川っ!?やべぇ、今行く!」

 西野は状況を再認識した。目の前で同僚が命を懸けて戦っている。

「えっと、操作は……」

 コックピット内には座席の他には左右に二つの発光する球のみだ。
 西野は発光する球に触れた。
 次の瞬間、西野はメロペの全てを理解した。
 魔法石の標準仕様『ヘルプ』の恩恵だ。

「よし……吉川、今行くっ!」

 西野が敵戦艦と吉川の間に割って入る。
 敵の対空砲が装甲を掠(かす)め火花が散った。

「西野ォ遅ぇよ!」


 西野と吉川、同期入社した二人は競うように成長してきた。
 プログラマーは一種の職人だ。
 学歴こそ差のある二人ではあったが、この業界に入ってからは同じ新人として扱われた。
 当初、負けず嫌いで理屈屋の西野と、お調子者だが飲み込みと行動が早い吉川は、傍目はためからは相性が悪いと思われていた。
 が、周囲の期待を良い意味で裏切り、仲間そしてライバルとして成長を遂げた。

 彼らの同期は他に何人かいるが、この二人は突出している。

 吉川はいち早くこの機体アステロペの処理系を理解した。

「西野! 敵を引き寄せてくれ! 俺が撃つ!」
「了解!」

 西野は集中力のある男だ。
 敵の砲撃に対し、一つ一つの砲身の向きから弾道をイメージする。
 着実に敵の攻撃を無駄ない動きでかわした。

 その間に吉川は敵の砲台を狙う。

大岩発射魔法バズーカ!」
 アステロペの前方空間に大岩が出現し、敵の砲台に発射された。

 着弾。

「よし今だ! 大爆発魔法エクスプロージョン!」
 敵の砲台が跡形もなく吹き飛ぶ、とともに火薬庫に引火、大爆発を起こした。

「おぉ、どうやったんだ?」
 西野が尋ねる。
 二人は今までもこうやって知識や手段の幅を広げてきた。

「発射魔法で発射される飛行体をオブジェクトとして定義して、着弾時の振る舞いを爆発にしてやったんだよ」

「なるほどね、やるな。俺も使うわ」

 西野と吉川は二隻目の戦艦も沈めた。





 ジェミ部隊を指揮するガイナは目の前で起こっていることに混乱していた。

「バカな……たかが一つの前線基地にこんな部隊がいたなんて……」

 今回の作戦ではフェルミの小規模基地を攻撃するにはオーバースペックともいえる兵備で攻めた。
 にも関わらず、自軍は壊滅的被害を受けている。

「なんなんだ、あの兵器は……あんな兵器の存在は聞いてないぞ」

 人型機動兵器の構想はジェミにもあったが、まだ研究段階である。
 それに、軍備的に遅れているフェルミにそのような兵器があるとは聞いていなかった。

「この事は上層部に報告した方がいいな……総員撤退! この戦局を放棄する!」

 ジェミ戦艦は撤退した。





「魔法の力はすごいな!」
 サガンヌキは興奮している。

「白兵戦のみならず対艦攻撃もできるとは!」

 モニタ越しに議会メンバーも絶賛した。

「プレアデス……いや、赤い月の諸君、我々は改めて君たちを歓迎する。是非我々の主力部隊となっていただきたい」

「光栄です、議長」

 かくして、プレアデスの面々はフェルミの信頼を得ることに成功したのだ。
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