あなたが遺した花の名は

きまま

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その後の茶会はあっという間に終わった。

誰かが終わろうと言った訳ではない。
なんとなく、終わるような雰囲気になって、皆が皆、気まずそうにそそくさとカップを片づけ始めていた。
そして、別れの挨拶もなく、ただ曖昧に笑いながら、それぞれの家へと散っていった。

その結果、私はこうして、反省とか羞恥とかで身を布団の中に隠している。
ただ、落ち着きたかっただけなのに、どうにもグレイブのことを忘れられない心がやはり内側から主張してくる。
そして、忘れたいと思えば思うほど、その輪郭が濃くなっていって、そればかりか、彼に会いたいと願ってしまう。

そうして布団の中でモゾモゾと後悔を温めていれば、部屋の静けさの中に、ふいに控えめなノックが落ちた。

「……リシェル。入ってもいい?」

母の声が扉越しに聞こえてくる。
返事をしようとしたけれど、自分の面目のなさに喉が詰まって言葉にならなかった。
しばらく布団の中に沈んだままでいれば、そっと扉が開く音がして、足音を出来るかぎり殺すように私の方へゆっくり近づいてくる。
そして、母はベッドの脇で膝をつき、ただ近くにいた。子どもの頃の慰め方とまるで一緒だった。

「つらかったでしょう?」

囁く声は軽く。
責めることはなく、ただ寄り添うだけの声は詰まった喉を解すには十分だった。

「……いえ、私が行きたいと言ったからです」

言葉を落とせば、しばらく沈黙が落ちる。
外では風が木々を揺らし、さらりと葉が鳴った。その音に背中を押されるように、私はそっと言葉を紡ぐ。

「それにわかりました」

布団から起き上がって、母の目を見る。そして、胸にこびり付いた執着をふと零す。

「まだ、私はグレイブ様のことが好きみたいです。……だから、もう一度彼に会いたい。会って、最後に形式的な言葉じゃなくて、ちゃんと別れの言葉を言いたいです」

——この執着を終わらせるためにも。

私の想いに母はしばらく沈黙を返していた。
言葉を探すようにする呼吸が細く震える。

「そのことなんだけどね……」

やっと絞り出された声はどこか遠くを見ているように静かで、深い迷いの色を含んでいた。
母の表情には痛みを帯びた影が差している。
その仕草だけで、胸の奥がざわりと揺れた。

視線を母の目から手にゆくゆく移していけば、ふとその手には手紙があって、中央には見慣れた紋章が力強く押されていた。
——グレイブの紋章だ。

母の視線がゆっくりと私へ向けられる。
その瞳はまるで、これから告げることが私の心を再び傷つけてしまうのを恐れているようだった。

風が窓辺をかすめ、薄いカーテンを揺らす。それは、母が次に紡ぐ言葉を知らせる合図のように、部屋の静けさに落ちていった。
そして、母は言う。

「グレイブ殿下が——」
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