4 / 12
4.涙と妨害
しおりを挟む
夢見が悪い朝ってのはホント最悪だ。今日が学園祭じゃ無ければ学校なんて休んでしまいたいくらい憂鬱で、僕は重い足取りで学校へとたどり着いた。
なんと言っても告白に失敗する夢だ。リアル過ぎて、目覚めた時には脂汗を掻いていたほどである。まさか正夢じゃないだろうな、などと余計なことを考えてしまい、今日告白するつもりな僕の決意を鈍らせてくる。
「おはよー、今日もがんばりましょーかね~」僕は教室の扉を開けながらクラスのみんなへと挨拶をした。これだけでも自分が変わった、変えられたと実感できる。
だが学園祭二日目を迎えて盛り上がっているはずの教室は、なにかおかしな緊張感に包まれていた。いったい何があったって言うんだ!?
「ちょっと小浦君! それどころじゃないんだってば! 美咲が! 美咲が倒れちゃったんだから! どうすんのよ!」
「おいおい、あんまり無理させるんじゃねえよ、あいつ体弱いんだよな」
「男子なんだからリードしてあげなきゃダメじゃないのよ!」
朝一でみなから責められて頭が余計に回らない。それよりもなんて言った!? 美咲が倒れただって? そんなバカな、いや昨日から調子は良くなさそうだったよな。だから先に帰るよう言ったのになんてこった! どこに行けばいいんだ? 病院か? 救急車を追いかけるべきなのか!?
「ちょっとコーラ君! しっかりしないさいよ!」混乱で呆然としていると、女子のリーダー格である中野が近寄ってきて僕の両肩を掴んで揺さぶってきた。そのおかげで我へ返った僕はようやく言葉が出るようになった。
「そ、そ、それで、小野さんは? 大丈夫なの? どこへ運ばれたかわかる?
「落ち着きなってば、そんな大げさな話じゃないからさ。別に運ばれてなんかないよ。今は保健室で休んでるとこ。でも今日の学園祭では動けないと思うよ?」
「そうそう、美咲が倒れたって言っても貧血程度だからそこは大げさに言ってゴメンだよ。でも人手が足りなくなるでしょ?」
「昨日みたいにあっちこっち行ったり来たりするならみんなで手分けした方がいいんじゃねえか? 昨日二人にまかせっきりにしたオレらにも責任あんじゃね?」
なんだろう、これが一体感、団結ってやつなんだろうか。こんなに頼りない僕をみんなが気遣ってくれるなんて思ってもいなかった。とりあえず美咲の様子を見に行きながら考えをまとめるんだ。僕はそう言い残して保健室へ向かった。
『小野さん、起きてる?……』もし寝ている場合を考えて僕はそおっと声をかけた。
『小浦君? 起きてるよ、入って大丈夫、私……』
カーテンをめくってベッドの側へ行くと、美咲の顔はやはり青白く具合が悪そうである。それよりも気になったのか目元が赤く腫れぼったくなっていることだ。もちろん寝不足とかそう言うことではなく、今の今まで泣いていてんだろう。
「ごめんね…… こんな忙しい時に役立たずでホントごめん…… せっかく文化祭で小浦君が楽しんでくれてたのにね。こんな自分が情けなくて情けなくて……」
「大丈夫だから泣いちゃダメだよ。小野さんが悪いわけじゃないんだからさ。二人でやってた実行委員なのに、相方の体調をちゃんと把握できなかった僕の責任だ、ごめんなさい」
謝ったからと言って体調が良くなるわけじゃないのはわかってる。でも僕は黙っていられなかった。美咲が責任を感じていることは痛いほど伝わってくるし、役目を果たせないことは許せないたちだろう。だからこそ彼女の負い目や重圧を軽くしたかったのだ。
それでも美咲は再び泣き出した。声を上げるわけではなく、全てを呑みこみ、こらえながら顔を押さえて肩を振るわせている。それはまるで自分だけで全てを抱え込むべきだと考えているように見えて、僕はとても悲しくなった。
なんと声をかけたらいいのだろう。どうにもうまいことが言えそうにない。かと言って気休めだけで去っていくのも情けない。なんで僕は賢くも有能でもないんだろうか。せめてこの瞬間だけでもなにか思いつければいいのに。
「あのさ、今日はとにかく休んでクラス展示が成功することを祈っててよ。それだけで十分みんなのためになるし、役目を果たしたことにもなるんじゃない? だからそんなに泣いて自分を責めないでほしいんだ」僕は、今言えること、少なくとも本心を精一杯を並べてみた。
「小浦君って優しいよね。とってもいい人。私……」なんだか良いとも悪いとも言えない雰囲気になってきた。男にとって女子にいい人と言われるのは必ずしも好ましいとは限らない。いい人よりも好きな人と言って欲しいからだ。
だけど美咲の言葉のため方は、その後に何が続くのかと期待を持たせるような行為だと感じる。さりげなくは言いづらい、こんな時だからこそ言える言葉とは一体、そう考えると期待してしまうのは仕方がないが――
「うん、僕はいい人だから信用してよね。ちゃんとやりきって報告に来るからさ。もし早退するなら夜にでも連絡するって約束するよ」
だけど僕はあえて美咲の言葉を待たず、邪魔をするように話しかけた。なぜかと言うと、万一、そう、万が一にも美咲が僕に好意を伝えてくれるようなことがあったら、それはつまり僕が告白すると言う決意が打ち砕かれてしまうからだ。
それにどう考えても好きになったのは僕が先なんだから、気持ちを伝えるとしたら先に言わなければ失礼だ。そしてもう一つ、今美咲が僕へ告白なんてするとしても、それは弱気になっていることで口に出してしまった事故みたいに思える。
だから僕はあえて美咲に最後まで言わせないようにしたのだ。それがどういう結果に繋がるのかはまだわからないけど、少し元気になった美咲は納得してひと眠りすると言って布団へ潜りこんでくれた。
なんと言っても告白に失敗する夢だ。リアル過ぎて、目覚めた時には脂汗を掻いていたほどである。まさか正夢じゃないだろうな、などと余計なことを考えてしまい、今日告白するつもりな僕の決意を鈍らせてくる。
「おはよー、今日もがんばりましょーかね~」僕は教室の扉を開けながらクラスのみんなへと挨拶をした。これだけでも自分が変わった、変えられたと実感できる。
だが学園祭二日目を迎えて盛り上がっているはずの教室は、なにかおかしな緊張感に包まれていた。いったい何があったって言うんだ!?
「ちょっと小浦君! それどころじゃないんだってば! 美咲が! 美咲が倒れちゃったんだから! どうすんのよ!」
「おいおい、あんまり無理させるんじゃねえよ、あいつ体弱いんだよな」
「男子なんだからリードしてあげなきゃダメじゃないのよ!」
朝一でみなから責められて頭が余計に回らない。それよりもなんて言った!? 美咲が倒れただって? そんなバカな、いや昨日から調子は良くなさそうだったよな。だから先に帰るよう言ったのになんてこった! どこに行けばいいんだ? 病院か? 救急車を追いかけるべきなのか!?
「ちょっとコーラ君! しっかりしないさいよ!」混乱で呆然としていると、女子のリーダー格である中野が近寄ってきて僕の両肩を掴んで揺さぶってきた。そのおかげで我へ返った僕はようやく言葉が出るようになった。
「そ、そ、それで、小野さんは? 大丈夫なの? どこへ運ばれたかわかる?
「落ち着きなってば、そんな大げさな話じゃないからさ。別に運ばれてなんかないよ。今は保健室で休んでるとこ。でも今日の学園祭では動けないと思うよ?」
「そうそう、美咲が倒れたって言っても貧血程度だからそこは大げさに言ってゴメンだよ。でも人手が足りなくなるでしょ?」
「昨日みたいにあっちこっち行ったり来たりするならみんなで手分けした方がいいんじゃねえか? 昨日二人にまかせっきりにしたオレらにも責任あんじゃね?」
なんだろう、これが一体感、団結ってやつなんだろうか。こんなに頼りない僕をみんなが気遣ってくれるなんて思ってもいなかった。とりあえず美咲の様子を見に行きながら考えをまとめるんだ。僕はそう言い残して保健室へ向かった。
『小野さん、起きてる?……』もし寝ている場合を考えて僕はそおっと声をかけた。
『小浦君? 起きてるよ、入って大丈夫、私……』
カーテンをめくってベッドの側へ行くと、美咲の顔はやはり青白く具合が悪そうである。それよりも気になったのか目元が赤く腫れぼったくなっていることだ。もちろん寝不足とかそう言うことではなく、今の今まで泣いていてんだろう。
「ごめんね…… こんな忙しい時に役立たずでホントごめん…… せっかく文化祭で小浦君が楽しんでくれてたのにね。こんな自分が情けなくて情けなくて……」
「大丈夫だから泣いちゃダメだよ。小野さんが悪いわけじゃないんだからさ。二人でやってた実行委員なのに、相方の体調をちゃんと把握できなかった僕の責任だ、ごめんなさい」
謝ったからと言って体調が良くなるわけじゃないのはわかってる。でも僕は黙っていられなかった。美咲が責任を感じていることは痛いほど伝わってくるし、役目を果たせないことは許せないたちだろう。だからこそ彼女の負い目や重圧を軽くしたかったのだ。
それでも美咲は再び泣き出した。声を上げるわけではなく、全てを呑みこみ、こらえながら顔を押さえて肩を振るわせている。それはまるで自分だけで全てを抱え込むべきだと考えているように見えて、僕はとても悲しくなった。
なんと声をかけたらいいのだろう。どうにもうまいことが言えそうにない。かと言って気休めだけで去っていくのも情けない。なんで僕は賢くも有能でもないんだろうか。せめてこの瞬間だけでもなにか思いつければいいのに。
「あのさ、今日はとにかく休んでクラス展示が成功することを祈っててよ。それだけで十分みんなのためになるし、役目を果たしたことにもなるんじゃない? だからそんなに泣いて自分を責めないでほしいんだ」僕は、今言えること、少なくとも本心を精一杯を並べてみた。
「小浦君って優しいよね。とってもいい人。私……」なんだか良いとも悪いとも言えない雰囲気になってきた。男にとって女子にいい人と言われるのは必ずしも好ましいとは限らない。いい人よりも好きな人と言って欲しいからだ。
だけど美咲の言葉のため方は、その後に何が続くのかと期待を持たせるような行為だと感じる。さりげなくは言いづらい、こんな時だからこそ言える言葉とは一体、そう考えると期待してしまうのは仕方がないが――
「うん、僕はいい人だから信用してよね。ちゃんとやりきって報告に来るからさ。もし早退するなら夜にでも連絡するって約束するよ」
だけど僕はあえて美咲の言葉を待たず、邪魔をするように話しかけた。なぜかと言うと、万一、そう、万が一にも美咲が僕に好意を伝えてくれるようなことがあったら、それはつまり僕が告白すると言う決意が打ち砕かれてしまうからだ。
それにどう考えても好きになったのは僕が先なんだから、気持ちを伝えるとしたら先に言わなければ失礼だ。そしてもう一つ、今美咲が僕へ告白なんてするとしても、それは弱気になっていることで口に出してしまった事故みたいに思える。
だから僕はあえて美咲に最後まで言わせないようにしたのだ。それがどういう結果に繋がるのかはまだわからないけど、少し元気になった美咲は納得してひと眠りすると言って布団へ潜りこんでくれた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる