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12.コーラと焼き芋
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まったくどういうタイミングなんだろうか。確かに季節的には風物詩とも言える軽トラックでの焼き芋販売は珍しくない。それでも最近はスーパーの店頭で売ってることが多いから移動販売は減っていると思っていた。
「凄いタイミングで現れたね。しかもまさかの石焼き芋だよ? つくづく縁があると言うのかなんというか」
「なにも急に音出さなくてもいいのにね。前触れなく急に出てきたからビックリしちゃったよ。その辺に停まってたのかなあ。」
「何の話してたかわかんなくなっちゃったよ。えっと、そうだ! 僕が門前払いじゃ無かったみたいでホッとしてた話だった」
「ええっ!? そんな話だったっけ? 悠斗君ってあんまりギャグとか言うタイプだと思って無かったけど結構冗談っぽいこと言うよね。話し方も独特と言うか、多分意識的にやってる気の持たせ方とかさ。ディベート向きかもしれないよ」
「そんな立派なモンじゃないと思うよ。そんなことより今は他に気になることができたかもしれない。進路とかまだ考えてなくて親にも先生にもせかされてたから今日の経験は役に立ちそう」
「まさかそれって福祉とか保育とかそっち系? 無責任に言ってしまうなら向いてるかもしれないもんね。持論として、子供好きよりも好かれる方が適正あると思うんだ。とか言いつつ悠斗君の人生に影響を与えちゃったら責任問題だけど……」
「そんなの気にすることないよ。人なんてどっかで誰かに影響受けたり、影響与えたりするものじゃない? 同じクラスになったこととか、今日みたいな体験させてくれたりとかはきっかけにすぎないと思うよ? こうして仲良くなれたことも、そのきっかけも、運命って言うと大げさだけど、きっと巡りあわせなんだよ」
「悠斗君すごいね、なんか哲学的だー、教師なんて道もあるかもね」
「みさきちってば褒めすぎだよ。ふふ、あはははっ。なんか照れるけど楽しい、嬉しい。幸せって感じだ!」
「うん、私もすっごく幸せだよ。嫌なことならいくらでも挙げられるくらいいっぱいあったけど、こうして嬉しいこともいっぱいできて最後はプラマイゼロになったらいいなあ」美咲はしみじみ語った。彼女が言うとそんな一言でも重みを感じる。
「これからいい事なんていくらでもあるさ。きっと大丈夫、僕だって少しくらいならいいことをあげられるように頑張るつもりだよ。だからさ――」
「だから、なあに?」美咲は怪訝そうに僕を覗き込みながら次の言葉に期待しているようである。こんな感じのやり取りはもう幾度も繰り返しているからか、どうやらオチを待っているように見えた。
「だから、まずは最初の一歩ってことで焼き芋を一緒に食べよう!」
「もうっ、アレは忘れてくれていいんだってばっ! でも悠斗君って本当に焼き芋好きなんだね。まあ私も好きなんだけど、今日はすでにカロリー取り過ぎちゃってるからダメな気もする……」
「それじゃ半分こにしようか。クリスマスの最後に焼き芋で乾杯なんて僕たちらしくていいんじゃない? その後にはさ――」
「その後には?」
「キスしたい」話の流れの中で僕はとんでもないことを言ってしまった。そして美咲の回答はと言うと――
「そんなのダメに決まってるじゃん、だってね?」即答でNGを出した美咲は、僕の真似をするように言葉を溜めてから僕を覗き込んで――
「今がいいからっ!」と呟いてから急接近した。
初めてのキスは美咲からの不意打ちだった。鼓動が高鳴り手を震わせ、カカシみたいに呆然として棒立ちになった僕の手を美咲がそっと握ってくる。それから唇を離しながら目を開けた。
視線だけで会話しているような気になるけど、僕に女心の翻訳はできない。そんな気持ちを察してくれたのか、美咲は僕を見つめていた瞳をしまいこむように再びまぶたを閉じていく。
僕はそっと二度目のキスをした。その瞬間、周囲の景色が輝き二人の心が一つになったような感覚があふれだす。最初のキスは戸惑いと緊張で何が何だかわからなかったけど、直後の二度目は多少冷静になれたのかもしれない。
それはまるでコーラを一気飲みして頭が冴えていった時みたいだ。重ねた唇には泡が弾けたような刺激を持ちつつ甘ったるさも感じる。それに繋いだ手の間には、お互いの体温が焼き芋みたいにほくほくとした熱を帯びていた。
変な例えかもしれないけど、そんな感覚が体中へと広がっていく。やがて唇は離れ、僕は美咲を、美咲は僕を見つめて幸せな笑みを浮かべた。
『おならの身代わりから始まる、そんな恋があってもいいじゃない?』と僕は心の中で呟いてみる。すると美咲も似たようなことを考えていたのか、いたずらっ子のように目を細めた後に――
「悠斗君、今おならのこと考えてたでしょ?」なんて言って来たもんだから、僕は首を横に振りながら「違うよ、みさきちのことを考えてたんだよ」と言い訳をした。
美咲は僕の言い訳に納得していない様子だが、表情はにこやかでイルミネーションを映し出している瞳はいつもよりキラキラと輝いている。もちろんお互いの手はまだしっかりと繋がったままだ。
「それじゃ焼き芋買いに行こうよ。なんだか私、ホッとしたからなのかお腹空いてきちゃった。今なら一本食べられそう。でも――」
「でも?」
「おならが出ちゃうかもっ!」
ー=+--*--*--+=-ー=+--*--*--+=-
数ある中から当作品をクリックしてくださったことに感謝いたします。少しでも楽しめたと感じていただけたならその旨お伝えくださいますと嬉しいです。この度は拙作をお読み下さいまして誠にありがとうございました。
ぜひお気に入りやハート&クラッカーをお寄せください。また感想等もお待ちしておりますので、併せてお願いいたします。
「凄いタイミングで現れたね。しかもまさかの石焼き芋だよ? つくづく縁があると言うのかなんというか」
「なにも急に音出さなくてもいいのにね。前触れなく急に出てきたからビックリしちゃったよ。その辺に停まってたのかなあ。」
「何の話してたかわかんなくなっちゃったよ。えっと、そうだ! 僕が門前払いじゃ無かったみたいでホッとしてた話だった」
「ええっ!? そんな話だったっけ? 悠斗君ってあんまりギャグとか言うタイプだと思って無かったけど結構冗談っぽいこと言うよね。話し方も独特と言うか、多分意識的にやってる気の持たせ方とかさ。ディベート向きかもしれないよ」
「そんな立派なモンじゃないと思うよ。そんなことより今は他に気になることができたかもしれない。進路とかまだ考えてなくて親にも先生にもせかされてたから今日の経験は役に立ちそう」
「まさかそれって福祉とか保育とかそっち系? 無責任に言ってしまうなら向いてるかもしれないもんね。持論として、子供好きよりも好かれる方が適正あると思うんだ。とか言いつつ悠斗君の人生に影響を与えちゃったら責任問題だけど……」
「そんなの気にすることないよ。人なんてどっかで誰かに影響受けたり、影響与えたりするものじゃない? 同じクラスになったこととか、今日みたいな体験させてくれたりとかはきっかけにすぎないと思うよ? こうして仲良くなれたことも、そのきっかけも、運命って言うと大げさだけど、きっと巡りあわせなんだよ」
「悠斗君すごいね、なんか哲学的だー、教師なんて道もあるかもね」
「みさきちってば褒めすぎだよ。ふふ、あはははっ。なんか照れるけど楽しい、嬉しい。幸せって感じだ!」
「うん、私もすっごく幸せだよ。嫌なことならいくらでも挙げられるくらいいっぱいあったけど、こうして嬉しいこともいっぱいできて最後はプラマイゼロになったらいいなあ」美咲はしみじみ語った。彼女が言うとそんな一言でも重みを感じる。
「これからいい事なんていくらでもあるさ。きっと大丈夫、僕だって少しくらいならいいことをあげられるように頑張るつもりだよ。だからさ――」
「だから、なあに?」美咲は怪訝そうに僕を覗き込みながら次の言葉に期待しているようである。こんな感じのやり取りはもう幾度も繰り返しているからか、どうやらオチを待っているように見えた。
「だから、まずは最初の一歩ってことで焼き芋を一緒に食べよう!」
「もうっ、アレは忘れてくれていいんだってばっ! でも悠斗君って本当に焼き芋好きなんだね。まあ私も好きなんだけど、今日はすでにカロリー取り過ぎちゃってるからダメな気もする……」
「それじゃ半分こにしようか。クリスマスの最後に焼き芋で乾杯なんて僕たちらしくていいんじゃない? その後にはさ――」
「その後には?」
「キスしたい」話の流れの中で僕はとんでもないことを言ってしまった。そして美咲の回答はと言うと――
「そんなのダメに決まってるじゃん、だってね?」即答でNGを出した美咲は、僕の真似をするように言葉を溜めてから僕を覗き込んで――
「今がいいからっ!」と呟いてから急接近した。
初めてのキスは美咲からの不意打ちだった。鼓動が高鳴り手を震わせ、カカシみたいに呆然として棒立ちになった僕の手を美咲がそっと握ってくる。それから唇を離しながら目を開けた。
視線だけで会話しているような気になるけど、僕に女心の翻訳はできない。そんな気持ちを察してくれたのか、美咲は僕を見つめていた瞳をしまいこむように再びまぶたを閉じていく。
僕はそっと二度目のキスをした。その瞬間、周囲の景色が輝き二人の心が一つになったような感覚があふれだす。最初のキスは戸惑いと緊張で何が何だかわからなかったけど、直後の二度目は多少冷静になれたのかもしれない。
それはまるでコーラを一気飲みして頭が冴えていった時みたいだ。重ねた唇には泡が弾けたような刺激を持ちつつ甘ったるさも感じる。それに繋いだ手の間には、お互いの体温が焼き芋みたいにほくほくとした熱を帯びていた。
変な例えかもしれないけど、そんな感覚が体中へと広がっていく。やがて唇は離れ、僕は美咲を、美咲は僕を見つめて幸せな笑みを浮かべた。
『おならの身代わりから始まる、そんな恋があってもいいじゃない?』と僕は心の中で呟いてみる。すると美咲も似たようなことを考えていたのか、いたずらっ子のように目を細めた後に――
「悠斗君、今おならのこと考えてたでしょ?」なんて言って来たもんだから、僕は首を横に振りながら「違うよ、みさきちのことを考えてたんだよ」と言い訳をした。
美咲は僕の言い訳に納得していない様子だが、表情はにこやかでイルミネーションを映し出している瞳はいつもよりキラキラと輝いている。もちろんお互いの手はまだしっかりと繋がったままだ。
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「でも?」
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