聖女は良い子と呼ばれたくない! ~社会からはみ出した夜遊び少女のゆるり異世界生活~

釈 余白(しやく)

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第四章:聖女はどこへ向かうのか

42.聖女の勘違い

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 さて困った。いや、わりとマジでこれは一大事なんじゃないだろうか。

 ここ二日ほどの体調不良はケイラムから受け取ったペンダントのせいだと判明したのでそこは大きな問題じゃない。

 だけどその受け取ったモノ自体が罠のようなものだったのだ! ついさっきルカ統括から聞かされたことは、文字通りひっくり返るような内容だった。

◇◇◇

「よろしいですかアキナさま? 落ち着いてお聞きください。今朝早く王室より連絡がございました。どうやら離宮で子供の面倒を見ていると国王の耳に入ってしまったらしいのです」

「そりゃそうだよね。同じ学校に王様の孫がいたんだもん。でも別に悪いことしてるわけじゃないし、王様って言っても偉いわけじゃないなら口出す権利なくない?」

「もちろんおっしゃる通りです。ですが問題点はそこではありません。そのお孫さんと同い年と言うこともあり、王宮へ迎えたいと申し出がございました」

「ああそうだった、言うの忘れてたけどケイラムから誘われたから勝手に決められないって断ったんだよね。正式な話ならルカ統括を通じてって言っといたから連絡が来たんじゃない? ダメならダメで適当にあしらっといてよ」

「なんと!? それでアキナさま自身のお気持ちはどうなのですか? それでも構わないと? むしろ乗り気だったりするのでしょうか」

「うーん、乗り切ってこともないけど強く断りたいとも思わないかな。王宮がどういうとこか知らないから、あんま真剣に聞かれても困るけどさ」

「さ、さようでございますか。アキナさまがよろしいならこの話、進めさせていただきましょう。まずは顔合わせと言うことで本日の夕食時にいかがかと打診されておりますが、心の準備はよろしいですか?」

「随分と大げさに言うなぁ。もしかしてルカ統括も一緒に行くとか? 保護者だからおかしくはないどさ。まさか会食時の作法さほうが苦手なんて言いださないでよ?」

「作法は問題ございませんが、さすがにこのような話、今までありませんでしたから正直戸惑とまどっております。もちろん正式な儀はいずれ後日となりましょう。それよりもさすが聖女さま、このような状況で平然としておられるとは感服かんぷくいたします」

「ちょっと待って? なにその正式な儀っての。正式も何も、会食のお誘いで急に呼び出されただけじゃない」

「それは本日顔合わせだけとのことですから、正式な取り交わしをいつにするかもその席で相談となるのでしょうね。わたくしの感覚ですと六歳にして婚約を取り交わすことにおどろきましたが、よくよく考えれば本来は十七歳とおっしゃっておりましたし、確かに問題はないのかもしれません」

「んんっ!? 今なんつったの? ウチちょっと聞き取れなかったかも? 念のためもっかい聞くけど、今婚約って聞こえたのは聞き間違いだよね?」

「はい、本日は顔合わせのみでございます。おそらくは国王と王妃殿下、それに王子と妃殿下のご夫婦、そしてお相手のお孫さんがご同席かと。こちらからはわたくしとアキナさまだけで――――」

◇◇◇

 あくまで私は食事に誘われただけで、それ以上でも以下でもないと説明し、ルカ統括も理解はしてくれた。しかしここで話している内容が先方へ伝わるはずもない。

 つまりは会食へ行ってから時期尚早しょうそうだと言って断るかのがいいか、それとも会食自体を断るかを決める必要があるのだ。それも今すぐに。

 さてどうしたものか。簡単なのは断ってしまうことだけど、そうなるとそれはそれで相手のメンツをつぶすことにもなるし、私も学校で気まずい思いをしそうだから避けたいところ。

「それでこのペンダントに深い意味がないのは間違いないのね? 受け取ったらそういう関係を承諾しょうだくした、みたいなさ?」

「ええ、それは間違いありません。おそらくは王族の誰かがアキナさまが聖女ではないかと考えたのでしょう。それで石と金属のどちらを選ぶかで確認しようとしたのだと思われます」

「それでウチが欲張って金を選んだと……」

「さようでございます。金属を選んだことで聖女ではないと判断し、今回の婚約を持ちかけてきたと思われます。いくら王族と言えど、聖女さまへの縁談を申し込むなど無礼ですからね」

「そんな大げさな…… でもホントにいらないから返すって言ったんだよ? どうせ換金できるわけでもないしさ。変に勘繰かんぐられるのもヤダし、光属性の神力に影響があっても困らないからって気楽に考えたのが裏目に出ちゃったか」

「わたくしもそのあたりの知識や経験がなく初耳でございました。聖女の力もやはり神力同様、金属には弱いのですね。このことはかなり重大な弱点でありますし、問題が起きる前にすばらしき知見ちけんを得られました」

「いや、そこ感心してる場合じゃなくない? 悪意ある誰かにばれたら相当ヤバいってことでしょ? それは王族であっても同じだからこの先ずっとばれないようにしないとだなぁ」

「それは心配し過ぎかと。もし一時的にアキナさまの能力が阻害そがいされ、地に流れていく神力が弱まったとしても無くなるわけではございません。それこそ危機が迫った段階で相手を精神操作すれば脱出可能でしょう? もちろんわたくしどもも全力で救出にまいりますのでご安心くださいませ」

「でも突然アイアンメイデンみたいなのに閉じ込められたらどうする? 相手が見えなくてウチも死にかけになってたらどうにもならないでしょ?」

「アイアイ? メイデ? とは? いったいなんでしょうか?」

 私は鉄の箱の中に、針が飛び出ている拷問ごうもん器具について説明した。もちろん実際に見たことはなく、映画だかゲームだかの知識でしかないが、想像だけでも痛そうで背筋がぞわぞわしてくる。

 それはルカ統括も同じだったようだ。なんせこの国は長らく平和だからかのんきで非暴力的な人が多い。

「な、なんと! アキナさまはなぜそのように恐ろしいことをいつもいつも思いつくのでしょうか。想像しただけで卒倒そっとうしそうでございます!」

 別に私が考案したんじゃないのに! と言い訳をしようとした瞬間、となりに座っていたフロラが気を失ってイスから転げ落ちた。
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