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第五章 浮遊霊たちの転機
59.煩悶(はんもん)
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夜中からから降り始めた雨は朝になってもやむ気配が無く、今日四つ葉女子へ行くのを楽しみにしていた僕と千代にとって悲しみの雨だ。
結局今日はまるまるつぶれ、神輿が奉納されている建物の床下でハクビシンと一緒に雨宿りする羽目になった。
「あめやまないねぇ」
「残念だったね。明日はやむといいなぁ」
「きっとやむよ、きっとだよ」
千代の言っていることにもちろん根拠は無く、あくまで願望であることは僕も承知だ。でも僕もこの雨は早くやんでほしいと願っている。境内に雨が落ちるのを眺めながら千代は静かに歌を口ずさんでいる。今日は元気なアニメの歌を歌う気分ではないのか、昔の童謡を歌っていた。
「あーあ、くるみおねえちゃんとあいたかったなぁ」
「千代ちゃんはお姉ちゃんのことが随分好きになったんだね」
「うん、えいにいちゃんもすきでしょ?」
「ま、まあね」
「それにね、くるみおねえちゃんとてをつなぐとなんだかおててがあたたかくなるんだよ?ふしぎよねぇ」
「えっそうなの?気持ち的な事じゃなくて本当に暖かくなるのかい?」
「そうだよ、ぽかぽかするわけじゃないけどなんだかあたたかいの」
そういえば、胡桃が手に持ったサンドウィッチも弁当箱の中では白いままだったものが、手に持った瞬間に色が付き、トマトやレタスが鮮やかな色を見せたのを思い出す。
そういえば、荒波海洋へ行った際、胡桃と手を繋いだ千代の手や振袖に色が付いたようにも見えたっけ。もしかしたら気のせいじゃなく本当に色がついていたのかもしれない。
ということは胡桃には幽霊を視認できるだけではなく、他にも何か特別な力があるのだろうか。
「次に行った時にさ、いっぱい手を繋いでもらったいいよ。お姉ちゃんも妹ができてうれしいって言ってたから、きっと喜ぶんじゃないかな」
「そうだったらいいなぁ」
「えいにいちゃんもくるみおねえちゃんとてをつないでもらったら?。きっとあたたかいのがわかるよ」
「いや、それは…… ちょっとね……」
「えいにいちゃんはいやなの?」
「嫌ということじゃなくてね、何と言ったらいいのかな。男子女子だからさ、簡単には手を繋ぐなんてできないよ」
「なんで? 千代とえいにいちゃんはいつもつないでるのに?」
「あぁ、そうだね…… じゃ、じゃあそのうちにね」
「うん!」
僕は千代へどう説明していいかわからずあいまいな返事をしてしまった。大きくなって来ればわかると言いたいところだったが、すでに何十年も子供のままな千代がこの先成長するわけがない。もちろん僕も、いつまでたってもこの十六歳のままなのだろう。
そう考えると、せっかく胡桃と知り合ったのに同い年である期間はごく短く、向こうはどんどん大人へ向かっていくということになる。では今、同い年のうちに僕は胡桃とどういう関係になりたいと思っているのだろうか。仲よくといっても共通点は無く、育ちも趣味も性格もだいぶ違うように感じる。
まして人間と幽霊なのだから、出来ることといったら会話位なものだ。大体、幽霊と会話ができる生きた人間と出会えただけでも奇跡だし、それ以上のことを望むこと自体がおこがましいとも言える。
共通点は同い年と言うくらいだけれど、同い年なんて高校の同じ学年なら当たり前のことで、その数百人のうち仲良くなれたのは大矢ただ一人、それなりに会話するくらいの関係が数人と言ったところだった。
そんな僕が胡桃と仲良くなるためにはどんなことを話せばいいのだろう。こんな事を考えたことなんて今までに一度もないからどうしていいかわからないし、大矢に相談なんてとてもできない。
早くなんとかしないと年が明けてしまうし、となると胡桃はまもなく二年生になってしまい僕は置いてきぼりになってしまう。
十六歳は大人には程遠いが子供というほど幼くはない。そんな微妙な年齢でいられることを羨ましく思う人もいるかもしれないが、それは生きていればこそだろう。出来ることなら僕は胡桃と同い年のままでいたいのだ。
降り続く雨が、僕の思考を良くない方向へ向かわせるような気がした。早くやんでくれたらいいのに。そうすれば胡桃に会いに行ける。このもやもやした気持ちがどうやったら晴れるのかわからない。胡桃にあったらもっともやもやするかもしれないし、もしかしたらスッキリするのかもしれない。
まずは話のきっかけにもなるし、お勧めのマンガを何にするか考えておこう。
「えいにいちゃん、さっきまでなにかかんがえごとしてるみたいなかもしてたのに、いまはなんだかにやにやしてる。なんかへんなのー」
「だ、大丈夫、変じゃないよ。早く晴れないかなって思ってるだけさ」
僕はまたもや千代へ苦しい言い訳をしたのだった。
結局今日はまるまるつぶれ、神輿が奉納されている建物の床下でハクビシンと一緒に雨宿りする羽目になった。
「あめやまないねぇ」
「残念だったね。明日はやむといいなぁ」
「きっとやむよ、きっとだよ」
千代の言っていることにもちろん根拠は無く、あくまで願望であることは僕も承知だ。でも僕もこの雨は早くやんでほしいと願っている。境内に雨が落ちるのを眺めながら千代は静かに歌を口ずさんでいる。今日は元気なアニメの歌を歌う気分ではないのか、昔の童謡を歌っていた。
「あーあ、くるみおねえちゃんとあいたかったなぁ」
「千代ちゃんはお姉ちゃんのことが随分好きになったんだね」
「うん、えいにいちゃんもすきでしょ?」
「ま、まあね」
「それにね、くるみおねえちゃんとてをつなぐとなんだかおててがあたたかくなるんだよ?ふしぎよねぇ」
「えっそうなの?気持ち的な事じゃなくて本当に暖かくなるのかい?」
「そうだよ、ぽかぽかするわけじゃないけどなんだかあたたかいの」
そういえば、胡桃が手に持ったサンドウィッチも弁当箱の中では白いままだったものが、手に持った瞬間に色が付き、トマトやレタスが鮮やかな色を見せたのを思い出す。
そういえば、荒波海洋へ行った際、胡桃と手を繋いだ千代の手や振袖に色が付いたようにも見えたっけ。もしかしたら気のせいじゃなく本当に色がついていたのかもしれない。
ということは胡桃には幽霊を視認できるだけではなく、他にも何か特別な力があるのだろうか。
「次に行った時にさ、いっぱい手を繋いでもらったいいよ。お姉ちゃんも妹ができてうれしいって言ってたから、きっと喜ぶんじゃないかな」
「そうだったらいいなぁ」
「えいにいちゃんもくるみおねえちゃんとてをつないでもらったら?。きっとあたたかいのがわかるよ」
「いや、それは…… ちょっとね……」
「えいにいちゃんはいやなの?」
「嫌ということじゃなくてね、何と言ったらいいのかな。男子女子だからさ、簡単には手を繋ぐなんてできないよ」
「なんで? 千代とえいにいちゃんはいつもつないでるのに?」
「あぁ、そうだね…… じゃ、じゃあそのうちにね」
「うん!」
僕は千代へどう説明していいかわからずあいまいな返事をしてしまった。大きくなって来ればわかると言いたいところだったが、すでに何十年も子供のままな千代がこの先成長するわけがない。もちろん僕も、いつまでたってもこの十六歳のままなのだろう。
そう考えると、せっかく胡桃と知り合ったのに同い年である期間はごく短く、向こうはどんどん大人へ向かっていくということになる。では今、同い年のうちに僕は胡桃とどういう関係になりたいと思っているのだろうか。仲よくといっても共通点は無く、育ちも趣味も性格もだいぶ違うように感じる。
まして人間と幽霊なのだから、出来ることといったら会話位なものだ。大体、幽霊と会話ができる生きた人間と出会えただけでも奇跡だし、それ以上のことを望むこと自体がおこがましいとも言える。
共通点は同い年と言うくらいだけれど、同い年なんて高校の同じ学年なら当たり前のことで、その数百人のうち仲良くなれたのは大矢ただ一人、それなりに会話するくらいの関係が数人と言ったところだった。
そんな僕が胡桃と仲良くなるためにはどんなことを話せばいいのだろう。こんな事を考えたことなんて今までに一度もないからどうしていいかわからないし、大矢に相談なんてとてもできない。
早くなんとかしないと年が明けてしまうし、となると胡桃はまもなく二年生になってしまい僕は置いてきぼりになってしまう。
十六歳は大人には程遠いが子供というほど幼くはない。そんな微妙な年齢でいられることを羨ましく思う人もいるかもしれないが、それは生きていればこそだろう。出来ることなら僕は胡桃と同い年のままでいたいのだ。
降り続く雨が、僕の思考を良くない方向へ向かわせるような気がした。早くやんでくれたらいいのに。そうすれば胡桃に会いに行ける。このもやもやした気持ちがどうやったら晴れるのかわからない。胡桃にあったらもっともやもやするかもしれないし、もしかしたらスッキリするのかもしれない。
まずは話のきっかけにもなるし、お勧めのマンガを何にするか考えておこう。
「えいにいちゃん、さっきまでなにかかんがえごとしてるみたいなかもしてたのに、いまはなんだかにやにやしてる。なんかへんなのー」
「だ、大丈夫、変じゃないよ。早く晴れないかなって思ってるだけさ」
僕はまたもや千代へ苦しい言い訳をしたのだった。
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