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第四章:魔界門を破壊せよ
35.病床のシンデレラ
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一晩かけて城までたどり着いた騎士たちは、家族の元へ戻ったり騎士団寮で休息を取ったりとそれぞれが思い思いな時間を過ごしていた。
もちろんシンデレラも同じことなのだが、これまでの無理がたたって高熱を出し寝込んでしまった。場所はもちろん王城内の自室なので側仕えもいるし、医者も来てくれている。
それでも脂汗をかいてうなされているシンデレラの元へ、悪夢でも見ているのだろうかと心配して見に来るものがいた。もちろんすっかり元気になった王子である。
シンデレラにとってショッキングな出来事が続いていたのでうなされるのも無理はない。そんな場へ送り出してしまったことに、王子は少なからず責任を感じていた。
三日目の朝になり熱が下がったシンデレラはようやく目を覚ます。だがその表情はこれまでの彼女とは大きく違っていた。戦地から帰ってきて間もないこともあって表情から明るさは消え、陰が差しているのだ。
「シンデレラ? 目を覚ましたと聞いたから様子を見に来たよ。キミのおかげで僕はすっかり元気になったと言うのに、代わりにキミが倒れてしまうなんて申し訳ない。今回はありがとう。本当に苦労を掛けてしまったね」
「いいえお気になさらないでください。わたしは殿下のために、それが王国のためになると考え行動しただけなのです」
「うんうん、キミのその献身的な考えは素晴らしいよ。でも今はまだ休んでいたほうがいい。どうにも表情からは元気そうに見えないからね」
「殿下…… わたしはあの戦場で散って行った者たちのことが忘れられません。皆は自身が信じる正義の元、精いっぱい戦いました。彼らによって生かされていることを今こうして噛みしめているのです」
「それは…… 確かに戦争とはそういうものだと簡単に割り切れるものではないだろう。だからこそ国としては遺族への手厚い保障と慰霊碑の建立を進めるべく話し合いを始めたところだよ」
「さようでございますか。できるだけ多くの者を連れ帰ってきましたので、全ての殉死者を弔ってくださいますようお願いいたします。それで今後についてなのですが、殿下のお気持ちは変わっておりませんか?」
「おっと、それは唐突な話だね。もちろん変わっていない。それどころかキミは今や英雄ともいえる存在、僕で釣り合うと言ってくれるのなら永遠の愛を誓おう」
「わたしが英雄、ですか? そのような世迷いごと、ご勘弁くださいませ。悪魔との戦いでは狂気をむき出しにして殺戮に明け暮れていたのでございます。もはや殿下にふさわしいとはとても申し上げられない、穢れた女であると自認しております」
シンデレラの心は激しい戦いによって傷つき、もうボロボロで崩壊寸前だった。それはもちろん表情にも表れているので他人からでもよくわかる。そしてそれを一番理解しているのは灰賀だった。
『シンデレラは現代でいうところのPTSDになってしまったか。無理もない、うっすらとした感覚した持たないオレでも、仲間がバタバタ死んでいくのを見続けてかなりのトラウマになってしまったからな……』
『今のはわたしの中にいるもう一人のわたしですか? やはりわたしはおかしくなってしまったのでしょうか。目を閉じるとわたしを守って命を落とした方たちが、笑顔で襲ってくるのです』
『なんだと!? シンデレラがオレに話しかけてきているだと!? ええと、あなたはおかしくなったと言うか病気にかかってしまったんだよ。心に過大な傷を負ったことによる精神的病だ』
『これは病なのですか…… ふと思い出すのです。あの時のまま、義母や義姉に虐げられたままであればこのような目にはあわずに済んだだろうと。これはきっと夜会へおもむき殿下に目をかけられたと舞い上がっていたわたしへの罰なのでしょう』
『いいや、罰なんかではないよ。もっと自分を大切にしていいんだ。あなたはこれまで十分耐えてきたし、民たちを守るために戦ってきた。だから今は幸せをつかむ未来へ向かって心身を休める時だよ』
『しかし私の中には殿下と結ばれることを拒絶している感覚もあるのですよ? このままで全てを受け入れることはできそうにありません。わたしはもう今までのわたしではない、そんな気がしているのです』
なぜか突然シンデレラとの意思疎通ができるようになり戸惑う灰賀である。しかしもっと戸惑っているのはシンデレラだろうし、精神的にかなり弱っているためか灰賀の考えが支配を強くし始めているように思えた。
『不快にさせてしまっていて申し訳ない。実はオレは灰賀振という三十を超えた男なんだ。だから男同士で結婚だの子作りだの言われて悩んでいたのさ。しかしこの体はシンデレラ、あなたのものだ。邪魔だろうからいずれ去っていくつもりなのだが、オレが自由にできるわけではないので今少しガマンしていてくれないか?』
『ということは、今こうしてお話ししているお方、灰賀さまはわたしがおかしくなって人格がもう一つできてしまったわけではないとおっしゃるのですね?』
『その通りだ。実はこの世界の危機、つまり昨晩まで戦っていた悪魔たちを倒すためにオレとあなたは融合したんだ。そのために戦いとは無縁のシンデレラを巻き込んでしまって申し訳なかった』
巻き込んだのは刻の魔女で灰賀ではないし、戦いとは無縁だったのはシンデレラだけではない。それなのになぜ自分が謝っているのかと、灰賀は不満を感じながら魔女を恨んだ。
もちろんシンデレラも同じことなのだが、これまでの無理がたたって高熱を出し寝込んでしまった。場所はもちろん王城内の自室なので側仕えもいるし、医者も来てくれている。
それでも脂汗をかいてうなされているシンデレラの元へ、悪夢でも見ているのだろうかと心配して見に来るものがいた。もちろんすっかり元気になった王子である。
シンデレラにとってショッキングな出来事が続いていたのでうなされるのも無理はない。そんな場へ送り出してしまったことに、王子は少なからず責任を感じていた。
三日目の朝になり熱が下がったシンデレラはようやく目を覚ます。だがその表情はこれまでの彼女とは大きく違っていた。戦地から帰ってきて間もないこともあって表情から明るさは消え、陰が差しているのだ。
「シンデレラ? 目を覚ましたと聞いたから様子を見に来たよ。キミのおかげで僕はすっかり元気になったと言うのに、代わりにキミが倒れてしまうなんて申し訳ない。今回はありがとう。本当に苦労を掛けてしまったね」
「いいえお気になさらないでください。わたしは殿下のために、それが王国のためになると考え行動しただけなのです」
「うんうん、キミのその献身的な考えは素晴らしいよ。でも今はまだ休んでいたほうがいい。どうにも表情からは元気そうに見えないからね」
「殿下…… わたしはあの戦場で散って行った者たちのことが忘れられません。皆は自身が信じる正義の元、精いっぱい戦いました。彼らによって生かされていることを今こうして噛みしめているのです」
「それは…… 確かに戦争とはそういうものだと簡単に割り切れるものではないだろう。だからこそ国としては遺族への手厚い保障と慰霊碑の建立を進めるべく話し合いを始めたところだよ」
「さようでございますか。できるだけ多くの者を連れ帰ってきましたので、全ての殉死者を弔ってくださいますようお願いいたします。それで今後についてなのですが、殿下のお気持ちは変わっておりませんか?」
「おっと、それは唐突な話だね。もちろん変わっていない。それどころかキミは今や英雄ともいえる存在、僕で釣り合うと言ってくれるのなら永遠の愛を誓おう」
「わたしが英雄、ですか? そのような世迷いごと、ご勘弁くださいませ。悪魔との戦いでは狂気をむき出しにして殺戮に明け暮れていたのでございます。もはや殿下にふさわしいとはとても申し上げられない、穢れた女であると自認しております」
シンデレラの心は激しい戦いによって傷つき、もうボロボロで崩壊寸前だった。それはもちろん表情にも表れているので他人からでもよくわかる。そしてそれを一番理解しているのは灰賀だった。
『シンデレラは現代でいうところのPTSDになってしまったか。無理もない、うっすらとした感覚した持たないオレでも、仲間がバタバタ死んでいくのを見続けてかなりのトラウマになってしまったからな……』
『今のはわたしの中にいるもう一人のわたしですか? やはりわたしはおかしくなってしまったのでしょうか。目を閉じるとわたしを守って命を落とした方たちが、笑顔で襲ってくるのです』
『なんだと!? シンデレラがオレに話しかけてきているだと!? ええと、あなたはおかしくなったと言うか病気にかかってしまったんだよ。心に過大な傷を負ったことによる精神的病だ』
『これは病なのですか…… ふと思い出すのです。あの時のまま、義母や義姉に虐げられたままであればこのような目にはあわずに済んだだろうと。これはきっと夜会へおもむき殿下に目をかけられたと舞い上がっていたわたしへの罰なのでしょう』
『いいや、罰なんかではないよ。もっと自分を大切にしていいんだ。あなたはこれまで十分耐えてきたし、民たちを守るために戦ってきた。だから今は幸せをつかむ未来へ向かって心身を休める時だよ』
『しかし私の中には殿下と結ばれることを拒絶している感覚もあるのですよ? このままで全てを受け入れることはできそうにありません。わたしはもう今までのわたしではない、そんな気がしているのです』
なぜか突然シンデレラとの意思疎通ができるようになり戸惑う灰賀である。しかしもっと戸惑っているのはシンデレラだろうし、精神的にかなり弱っているためか灰賀の考えが支配を強くし始めているように思えた。
『不快にさせてしまっていて申し訳ない。実はオレは灰賀振という三十を超えた男なんだ。だから男同士で結婚だの子作りだの言われて悩んでいたのさ。しかしこの体はシンデレラ、あなたのものだ。邪魔だろうからいずれ去っていくつもりなのだが、オレが自由にできるわけではないので今少しガマンしていてくれないか?』
『ということは、今こうしてお話ししているお方、灰賀さまはわたしがおかしくなって人格がもう一つできてしまったわけではないとおっしゃるのですね?』
『その通りだ。実はこの世界の危機、つまり昨晩まで戦っていた悪魔たちを倒すためにオレとあなたは融合したんだ。そのために戦いとは無縁のシンデレラを巻き込んでしまって申し訳なかった』
巻き込んだのは刻の魔女で灰賀ではないし、戦いとは無縁だったのはシンデレラだけではない。それなのになぜ自分が謝っているのかと、灰賀は不満を感じながら魔女を恨んだ。
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