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第四章:魔界門を破壊せよ
36.願いと代償
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またこのパターンか。精神だけの存在なので態度に表すことはできないが、今の灰賀はきっとやれやれと頭を振りながら肩をすくめているに違いない。
『なんだか求められていないような雰囲気を出すねえ。呼ばれたから来てやったと言うのに困ったやつじゃ』
『確かに用がないわけじゃないが、今出てこられても話がややこしくなるだけじゃないか? だがせっかくだから聞いておきたいことがある。これで悪魔との戦いは終わったと考えていいんだな?』
『うむ、今のところは終わったと言えるじゃろう。もしかするとまた何年か後に同じことが起こるやもしれぬ。だがそれはもう世代が代わってからじゃろう。そのためにもできる限り詳細に今回の出来事を書き記しておくことじゃ』
『そうだな、できるだけ助言はしてみようと考えては―― いや、そうじゃなかった! 突然シンデレラと会話できるようになったんだが、いったい何がどうなってるんだ?』
『同じ肉体に入っているのだから意識が共有されることくらいあるじゃろう。今までもそうじゃったんじゃないのかえ?』
『違うんだよ。そういう感覚的なことじゃなく、普通に会話ができちまうんだ。もしかしたらシンデレラが相当落ち込んでることが影響しているとか? それともオレの存在がそうさせてしまっているんだろうか』
『うーむ、いくつか考えられるじゃろう。可能性が高いのはあの子の魂に消失が迫っていることじゃろうかのう。本来ならシンデレラはすでに命を落としているのは覚えておろう?』
『そう言えばそうだったな…… だが突然そんな最悪なこと言わなくてもいいじゃないか。もっと楽観的は予想はなかったのかよ』
『ん? ほかの予想じゃと魂が融合を始めているとか、お主の精神に押し出されかけているとかになるからそう変わらんと思うがのう。なんにせよそれほど時間は残されておらんかもしれぬ』
『おいおい、そうなったらどうなるんだ? まさかシンデレラは死んじまうのか?』
『そうじゃのう。お前さんが残っていれば人としての体は保つじゃろうが、彼女の身であったなら残された時間はそう多くないじゃろう。本来であればとうに死んでおるわけじゃからな』
『そんなひどいこと言うなよ。何とかしてやってくれ。シンデレラはようやく幸せを掴めるところまで来てるんだぞ? オレが残ればシンデレラは死なないってことで間違いないのか?』
『それはワシにも断定はできん。少なくとも肉体は生きたままではあろうが、中身がお主だけになったとして、それはシンデレラが生きて幸せであると言えるのかえ?』
灰賀はシンデレラの腕を使って刻の魔女へと掴み掛る。もちろんそんなことをしても無駄だと言うことはわかっているのだが、どうにもやるせない想いを押さえることができなかった。
『じゃあこんなのはどうだ? オレの精神、つまり魂か? こいつをくれてやる。以前お前さんは言ったよな? 男としての記憶や過去を消せるようなことをさ。だったら完全に無我にもできるんじゃないのか?』
『ふむ、身体を空にした器にすることを思えばできなくはないじゃろう。しかしそれはお主の完全消滅を意味するのじゃぞ?』
『完全消滅も何も、オレだって好きで何度も生き返ってるわけじゃない。そもそもそんなこと知らなかったわけだしな。オレがシンデレラの心に作用しておかしな真似をさせてしまったんだ。その責任を取って消し飛ぶのも悪くない』
『やはりお主はとんでもないお人好しじゃな。そうやって誰かのために生きるのもまた幸せな人生かもしれぬ』
『おいおい、他人事みたいに言うが、シンデレラの性格を無視してオレを利用したのはお前さんだからな? 道連れになれとは言わないが、その代わりに彼女を助けてやってくれよ。せめて王子と結ばれて幸せになれたことがわかるくらいまではさ』
『なるほど、正論じゃ。あいわかった、今後しばらくの間はシンデレラと王国の行く末を見守ることを約束しよう。とは言えワシには平行世界の監視があるでの、とても付きっ切りではいられん』
『まあそれは仕方ないな。他の世界でも同じようなことが起こっているのか? 悪魔が攻撃してくるようなこと、地球にはなかったと思うが』
『悪魔? ああ、あの異形の者たちもまた人間なのじゃよ? 単に種族と習慣が異なるだけでやつらに悪意があるわけではない。地球でも同じような争いは起きていたのじゃが、最終的に現在の人類種が最大勢力となっただけ。その証拠に今度は別の世界への侵略を開始しておる』
『地球人が別の世界へ侵略!? いったい何のことを言っているんだ? そんな話聞いたことないぞ? もしかして宇宙進出のことでも言っているのか?』
『さあどうじゃろうな。もう戻ることのないおまえさんには関係のない話。だが宇宙や海底や未踏破の山奥など、さまざまな場所に他の世界への入り口が潜んでおることだけは教えてやろう』
『どうにも眉唾物だが、そんなこと言ったらおれ自身の存在を否定することにもなっちまう。ここは大人しくなるほどとうなずいておくよ。それじゃ間違いなく彼女を幸せにしてやってくれよ? 短い間だったが、あの子もまたオレなんだからさ』
『面白いことを言うもんじゃ。では次の満月の晩に迎えにこよう。それまでにこれまでの出来事、戦いの記録を後世へと残させるのじゃぞ? いずれまた不浄の大気は湧き上がってくるのじゃからな』
『わかった。それまではせいぜい城でウマイもんでも食っておくことにするよ。ただし、もしその前にその―― 王子がよ? その気になっちまって危機が迫ったら早めてくれてもいいんだぜ?』
『まったく最後までその心配かえ? シンデレラがあの調子ではそんな話にならぬじゃろうて。あの王子にそれくらいの分別はあると思うがのう』
そう言い残すと、刻の魔女はいつの間にかシンデレラの前から消え去った。
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本作品をお読みくださいまして誠にありがとうございました。数ある作品の中から拙作をクリックしてくださったこと感謝いたします。少しでも楽しめたと感じていただけたならその旨お伝えくださいますと嬉しいです。
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『確かに用がないわけじゃないが、今出てこられても話がややこしくなるだけじゃないか? だがせっかくだから聞いておきたいことがある。これで悪魔との戦いは終わったと考えていいんだな?』
『うむ、今のところは終わったと言えるじゃろう。もしかするとまた何年か後に同じことが起こるやもしれぬ。だがそれはもう世代が代わってからじゃろう。そのためにもできる限り詳細に今回の出来事を書き記しておくことじゃ』
『そうだな、できるだけ助言はしてみようと考えては―― いや、そうじゃなかった! 突然シンデレラと会話できるようになったんだが、いったい何がどうなってるんだ?』
『同じ肉体に入っているのだから意識が共有されることくらいあるじゃろう。今までもそうじゃったんじゃないのかえ?』
『違うんだよ。そういう感覚的なことじゃなく、普通に会話ができちまうんだ。もしかしたらシンデレラが相当落ち込んでることが影響しているとか? それともオレの存在がそうさせてしまっているんだろうか』
『うーむ、いくつか考えられるじゃろう。可能性が高いのはあの子の魂に消失が迫っていることじゃろうかのう。本来ならシンデレラはすでに命を落としているのは覚えておろう?』
『そう言えばそうだったな…… だが突然そんな最悪なこと言わなくてもいいじゃないか。もっと楽観的は予想はなかったのかよ』
『ん? ほかの予想じゃと魂が融合を始めているとか、お主の精神に押し出されかけているとかになるからそう変わらんと思うがのう。なんにせよそれほど時間は残されておらんかもしれぬ』
『おいおい、そうなったらどうなるんだ? まさかシンデレラは死んじまうのか?』
『そうじゃのう。お前さんが残っていれば人としての体は保つじゃろうが、彼女の身であったなら残された時間はそう多くないじゃろう。本来であればとうに死んでおるわけじゃからな』
『そんなひどいこと言うなよ。何とかしてやってくれ。シンデレラはようやく幸せを掴めるところまで来てるんだぞ? オレが残ればシンデレラは死なないってことで間違いないのか?』
『それはワシにも断定はできん。少なくとも肉体は生きたままではあろうが、中身がお主だけになったとして、それはシンデレラが生きて幸せであると言えるのかえ?』
灰賀はシンデレラの腕を使って刻の魔女へと掴み掛る。もちろんそんなことをしても無駄だと言うことはわかっているのだが、どうにもやるせない想いを押さえることができなかった。
『じゃあこんなのはどうだ? オレの精神、つまり魂か? こいつをくれてやる。以前お前さんは言ったよな? 男としての記憶や過去を消せるようなことをさ。だったら完全に無我にもできるんじゃないのか?』
『ふむ、身体を空にした器にすることを思えばできなくはないじゃろう。しかしそれはお主の完全消滅を意味するのじゃぞ?』
『完全消滅も何も、オレだって好きで何度も生き返ってるわけじゃない。そもそもそんなこと知らなかったわけだしな。オレがシンデレラの心に作用しておかしな真似をさせてしまったんだ。その責任を取って消し飛ぶのも悪くない』
『やはりお主はとんでもないお人好しじゃな。そうやって誰かのために生きるのもまた幸せな人生かもしれぬ』
『おいおい、他人事みたいに言うが、シンデレラの性格を無視してオレを利用したのはお前さんだからな? 道連れになれとは言わないが、その代わりに彼女を助けてやってくれよ。せめて王子と結ばれて幸せになれたことがわかるくらいまではさ』
『なるほど、正論じゃ。あいわかった、今後しばらくの間はシンデレラと王国の行く末を見守ることを約束しよう。とは言えワシには平行世界の監視があるでの、とても付きっ切りではいられん』
『まあそれは仕方ないな。他の世界でも同じようなことが起こっているのか? 悪魔が攻撃してくるようなこと、地球にはなかったと思うが』
『悪魔? ああ、あの異形の者たちもまた人間なのじゃよ? 単に種族と習慣が異なるだけでやつらに悪意があるわけではない。地球でも同じような争いは起きていたのじゃが、最終的に現在の人類種が最大勢力となっただけ。その証拠に今度は別の世界への侵略を開始しておる』
『地球人が別の世界へ侵略!? いったい何のことを言っているんだ? そんな話聞いたことないぞ? もしかして宇宙進出のことでも言っているのか?』
『さあどうじゃろうな。もう戻ることのないおまえさんには関係のない話。だが宇宙や海底や未踏破の山奥など、さまざまな場所に他の世界への入り口が潜んでおることだけは教えてやろう』
『どうにも眉唾物だが、そんなこと言ったらおれ自身の存在を否定することにもなっちまう。ここは大人しくなるほどとうなずいておくよ。それじゃ間違いなく彼女を幸せにしてやってくれよ? 短い間だったが、あの子もまたオレなんだからさ』
『面白いことを言うもんじゃ。では次の満月の晩に迎えにこよう。それまでにこれまでの出来事、戦いの記録を後世へと残させるのじゃぞ? いずれまた不浄の大気は湧き上がってくるのじゃからな』
『わかった。それまではせいぜい城でウマイもんでも食っておくことにするよ。ただし、もしその前にその―― 王子がよ? その気になっちまって危機が迫ったら早めてくれてもいいんだぜ?』
『まったく最後までその心配かえ? シンデレラがあの調子ではそんな話にならぬじゃろうて。あの王子にそれくらいの分別はあると思うがのう』
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