僕が一目惚れした美少女転校生はもしかしてサキュバスじゃないのか!?

釈 余白(しやく)

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偶然なのか罠なのか

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 まさかこんなことになるなんて…… 確かに久しぶりの防災公園だったから油断していたけど……

 よく考えてみたら、ここは先日若菜亜美と初めてであっただけじゃなく、一年以上会ってなかった山尻康子に再会した場所でもだった。かといって、また二人ともに鉢合わせしてしまうとはなんという偶然だろう。

「吉田先輩、こちらの女性はどなたですか?」

 亜美は怒っているというわけではなさそうだが、機嫌は良くなさそうに思える。以前、犬の散歩中に山尻康子と遭遇し、トラブルになったことは覚えていないのだろう。

「あなた吉田君の後輩だったっけ、以前にもお会いしたよね。
 その節はご迷惑おかけしました」

 康子がぺこりと頭を下げる。今日はしっかりとリードを握りしめているが、頼むから油断して離してしまわないようにと願う僕だった。

「若菜さん、結構前の遅い時間に、二人の犬が喧嘩しちゃったことあったでしょ?
 あの時の人だよ。
 僕とは中学の同級生なんだ」

「ああ、そうだったんですか。
 つまり私にとっては中学の先輩と言うことですね。
 存じてなくて申し訳ありませんでした」

「いえいえ、全校生徒見知っているなんてこと普通は無いし問題ないわよ。
 防災公園へはよく来るの?」

「はい、家から結構近いので。
 それに夏は芝生の方がワンコの足に優しいですから」

 よくわからない状況だけど、亜美と康子は仲良く犬談義をしている。興味の無い僕は蚊帳の外だが、むしろその方がありがたいし、できればこのままこっそり帰ってしまいたいくらいだ。

「吉田先輩、今日はどうしたんですか?
 結構向こうから歩いてましたよね?
 まさかどこか怪我したとか、そんなことないですよね?」

 一番聞かれたくないことを聞かれてしまい、思わず口ごもってしまったが、連日の練習で疲労がたまっているし、明日は練習試合なので今日は軽めにしていると苦しい説明をした。

「また練習試合するんだ?
 明日はどことやるの?」

「まあ大会に備えて出来るだけ実戦をって方針かな。
 明日は午後から妻土高校とだよ」

「妻土かあ、あそこって今年大会出られないかもって話だけどね。
 一年生が入ってなくて部員足りないらしいよ」

 さすが康子は強豪校のマネジャーなだけあって、他校のことはチェック済みなようだ。ということはうちの騒音娘も知っているだろう。

「それにうちとの試合、その前は矢実にも勝ってるんだから妻土じゃ物足りないんじゃない?
 なんならまたうちとやってくれればいいのに。
 お兄ちゃんがすごく悔しがってたから、申し込まれたらきっと受けると思うよ」

 まあ矢島学園なら相手にとって不足は無い。でも練習試合で勝つことが僕たちの目標ではないのだ。

「そうだね、主将には伝えておくよ。
 でも明日は一年生主体でどこまでやれるかが見たいらしいから、ちょうどいい相手だと思うよ」

「主将ってキャッチャーの木戸君でしょ?
 あの子って高校入学のとき、うちのスカウト断ったらしいね。
 あと丸山っていう背の大きい子もだって部長が言ってたよ。
 それが二人とも七つ星に入って去年から完全に主力だもんね」

「そうだね、あの二人がいなかったら弱小のままだったと思うよ。
 だから今年は付属松白にだって負けるつもりはないのさ」

「それって夏の全国行き予告ってこと!?
 大きく出たわね。
 でも矢島だって狙ってるんだから負けないわよ!」

 康子は少し興奮した様子で言い返してきた。固めた握りこぶしにリードが引っ張られて、足元の犬が苦しそうな顔をしたように見える。

 犬談義の次は野球談議になってしまい、亜美が仲間外れ気分になっていないかと気になった僕は、じっと立ちすくんで黙っている亜美を横目で確認した。

 するとなぜか亜美は眼を輝かせて僕を見つめているじゃないか。

「先輩! 夏の全国って甲子園のことですか?
 私、絶対に応援行きますから!」

「あ、ああ、そう、甲子園大会だけど、出場が決まってるわけじゃないからね。
 七月から夏の予選が始まるから、まずはそれを全部勝たないとだよ」

「でも先輩たちならきっと負けませんよ!
 全部の試合、応援に行きますね!」

 どちらかというと、いつもは不気味なくらい物静かな亜美がやたらと興奮している。元気がいいのは悪くないけど、これはこれでちょっと怖いものがあるなと思っていたら康子が横から茶々を入れてきた。

「あら、吉田君、相変わらずモテてるのね。
 後輩さんがこんなに慕ってくれるんだから頑張らないとだよ。
 でもうちだって必死だし、負けるつもりはないからそのつもりでよろしくね」

「そりゃそうさ、お互い力を出し切れるよう頑張ろう!」

 僕は康子が差し出した手を、何も考えないでしっかりと握ってお互いの健闘を讃えあった。

 それを見た亜美が、ついさっきまでの元気さを急激に失い、背後から黒い煙が立ち上っているような、いつもの姿へ戻っていくのがわかった。
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