僕が一目惚れした美少女転校生はもしかしてサキュバスじゃないのか!?

釈 余白(しやく)

文字の大きさ
134 / 158

本気の戦い

しおりを挟む
 結局二回の表は後続が続かず、僕の三振でナナコーは攻撃を終えた。しかし次は一番からの好打順。凡退に気を落とさず投げることに集中するのだ。ちなみに今大会、僕と島谷だけが未だノーヒットだ……

 打つ方はからっきしな僕だが投げる方は絶好調で、木戸の名づけた、『打者の好きで得意な所のすぐ近くへ打ち頃のボールを予想外の回転で投げる作戦』は上手く運んでいる。投げてる僕はかなりドキドキで慎重に投げてるのだが、結果としては球数も少なく済んで結果的には助かっている。

 三回には嶋谷が絶妙なバントで出塁、ヒットかと思ったけどファーストがこぼしたせいで記録としてはエラーがついた。後続は凡退してツーアウトから木戸がヒットで一三塁、そしてさっきホームランを打っている丸山は歩かされてツーアウトながら満塁となる。しかし六番のチビベンはサードライナーで無得点だった。

 そのまま膠着したゲームとなって六回の表、ここで松白はピッチャーを交代するようだ。木戸の予想通り、あの一年生キャッチャーがマウンドへ登った。立ち上がってみると意外と細身で長身なのが意外で、うちで言うと木尾のようなタイプに見える。

「右ピッチャー出てきたな。
 コイツがエースに違いないから一気に打ち崩すぞ!
 気合入れろ!!」

「「おおおー!!
 ナナコー!ファイッ!」」

 野球部員がベンチ前で気合を入れる様は、まるで動物の威嚇行動だ。これは大体どこの学校でも共通だと思う。相手の松白はそれに加えてスタンドの応援までついているのだがら羨ましい、いや始末が悪いだった。

 おそらくバント作戦はもう通じないだろう。真っ向から打ち崩していくしかない。背格好からは縦の変化を使ってくるように感じるのは思い込みかもしれないのでしっかり見ていくことが大切だろう。

 しかしここでも木戸がアッと驚く作戦を聞かせてきた。

「全員一発狙いの大振りで構わねえ。
 でも、当たらなくてもいいけど、一応見てから振ってくれよ?
 こいつはまだ一年坊だからプレッシャーかけていこうぜ。
 不安を見せたら俺とマルマンで仕留めるから安心してくれ」

 打てなくてもいいからプレッシャーをかけていけとは大胆すぎる。しかしみんなはそれで気が楽になったのか、表情が柔らかくなった。エースが出てきたことで緊張してきたのを見越しての言葉だったのかもしれない。なんの影響も受けていないのは天才肌の丸山と、心ここに非ずなチビベンくらいか。

 二番手で出てきた一年は、確かにエースと言えるくらいの球は投げている。あとは打席でどう感じるかだろう。長崎先輩のところで左の涌井先輩へ交代し、木戸に言われた通り強振したあと、内野フライでワンナウト。

 しかし戻ってきた涌井先輩は、打てない球じゃなかったとのことだ。次は僕の打席だったが、また三振に倒れ情けない限りだ。一番に返って嶋谷はさっきのヒット性の出塁で機嫌が良さそうに見える。コイツはやっぱり気分屋でおだてに乗りやすいなと改めて感じた。

 だが気分の良し悪しだけで結果が出るほど甘くない。意気込んで出ていった嶋谷は、結局緩急に揺さぶられ三振で戻ってきた。

「確かに打てそうな球でしたね!
 あれならカズ先輩の練習投球の方が打つのきついですよ」

「全員ちょっと沈むボールに目が慣れちまってるみたいだな。
 目付を治すように、上目を振る意識で行こうぜ」

 木戸が的確に指示を出すと、実際にはともかく打てる気になってくるのはさすがである。こいつのプレイ以外の働きはとても大きくて、誰にも真似のできないところだ。

 気合を入れなおして守備へ散っていくナナコーナインだったが、そこからは打線の沈黙する投手戦となった。

 なんといっても圧巻は松白のピッチャーだ。ナナコー自慢の木戸と丸山を連続三振に斬って取るなど四者連続三振、かろうじてバットに当てたチビベンは内野ゴロで続く柏原先輩も三振だった。

「あれ、今日の腑抜けカズより早いな。
 しかも伸びがすげえよ」

「今日は木戸の指示で控えめに投げてるだけだよ。
 別に腑抜けてなんかないさ」

 僕は丸山に文句を言って名誉挽回を図った。でも全く聞いていない様子で話を続ける。

「でもコイツ変化球ないだろ?
 投げたのはカーブとチェンジアップにフォークか。
 緩急と縦変化だから真っ直ぐだけ見てけばイケるな」

「そんじゃ小粒組はボールの上目を狙って転がしていくこと。
 俺とマルマンはテキトーに。
 シマとカズは、先にヒット打てなかったほうをたい焼きおごりの刑に処す!」

「ワンパターンだな。
 真弓先生の財布が悲鳴を上げてるぞ?」

 ハカセが横やりを入れると真弓先生が頷き、それを見てみんなが笑った。この砕けた雰囲気もうちの持ち味だと言いたいが、どちらかというとやり過ぎな印象のほうが強く感じる。こうしてチームの雰囲気は良かったが結果は付いてこないまま七回表の攻撃に入る。

 まこっちゃんファーストゴロ、池田センパイ三振のあと、木戸が良い当たりで三塁線を抜いた、と思ったらベースに当たりシングルヒットとなってしまう。

 なんだかツイてなくて流れが悪いなあ、とこぼした僕へ丸山が言う。

「一つでも二つでも一緒だろ。
 どうせ歩って返ってくるんだしよ」

 そう言いながら高笑いで打席へ向かった丸山は、その後本当に歩いて返ってきた。もちろんその前には木戸も歩いて、だ。

「今日も二本か、絶好調だな。
 これで四打点追加だから大分置いてかれたぜ。
 打率はいい勝負かもしれねえけどホームラン数は追いつかなそうだ」

 真っ向勝負を挑んできた松白の一年はがっくりとうなだれている。おそらく真っ直ぐには自信を持っていたのだろう。まあ相手が悪かったと諦めてもらうしかない。

 その後はまた沈黙が続いていよいよ最終回、松白は下位打線の七番からだ。最後は全力で投げたいなと考えながらマウンドへ向かおうとする僕へ、木戸がいいタイミングで話しかけてきた。しかしその内容は僕の想定していたものではなく……

「なあカズよ、次七番からだな?」

「そうだな、だから全力で投げてもいいって言ってくれるのか?」

「まあそうしたいなら構わねえけどさ。
 それよりもよ、今んとこ完全試合だって気づいてるか?」

 えっ!? そう言えばずっと三人で終わらせているってことはそう言うことなのか!? いやまあそりゃ当然か。二十七個のアウトを取って終わるの野球なんだから、今は八回まで終わって二十四個ってことで、八で割ると三ってことは三人でずっと来てて、あと三つで二十七個になって試合が終わるってことになるから……

「やっぱ気が付いてなかったか。
 こういうのって言わねえ方が良かったのかねえ」

「いや、もう手遅れだろ。
 カズよりもバックが緊張するしな」

 チビベンの言う通りだ。僕は突然湧いて出た話に驚いてしまっているし、守備に付こうとしてた選手たちも立ち止まっている。だからどうすればいいのかなんてことはなにも思い浮かばないが、結果を気にせずできるだけ精一杯投げようとだけ考えていた。

「じゃ、じゃあさ、全部三振取ればいいんだろ?
 僕は別に、わ、わかってたから、き、緊張してないし……」

「おうおう、さすがだな!
 そういうことにしてやっから気合入れてけよ?
 バックスクリーンとこにはスカウトもいるし、ナナコーこそが真の強豪だって教えてやろうぜ!」

「「マジで!?」」
「「ホントですか!?」」

 木戸のあおりで全員が浮足立っている。こいつ…… 本当に僕が全部三振取ると思ってるんじゃないだろうな…… いやまて、そう思ってくれているならその期待に応えるのが相棒ってもんだ。

 僕は興奮か焦りか自分でもよくわからない精神状態のまま、最終回のマウンドへ向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

処理中です...