異世界からやってきた、自称・王国最強のハラペコ戦士とギャルJKのおかしな同居生活

釈 余白(しやく)

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第四章 新生活開始

19.のんびりとした新生活

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 おかしい。何かが違う。記憶ではこれで十分だったはずなのになんだか物足りない。食材に違いがあるのか、それとも調味料が見た目とは違い別物だと言うことなのか。

「まあまあだったかな。
 肉に塩胡椒だけってのもシンプルで悪くないわよ。
 でも豆料理は再考の余地ありかな」

「うむ…… こんなはずではなかったんだけどなぁ。
 豆を塩で煮てスープにするのは定番だったし、肉も焼くだけで満足してたはず。
 それなのに何かが違う気がするんだよ」

「きっとこっちへ来てから食べた味に慣れてってるんじゃない?
 そう言えばあんなに気に入ってたうま味調味料は使わなかったの?
 パンダの絵が描いてあるやつがキッチンにあったでしょ?」

「おお、あれがそうだったのか。
 少し舐めてみたが不思議な味がしたので入れるのをやめておいたんだ。
 次はアレも使ってみよう」

「肉と豆と他にはどんなもの食べていたの?
 料理の名前でも雰囲気でも、食材でもいいから教えてよ」

「俺は好きじゃないが麦粥や芋が主食だったな。
 パンも食ってはいたがこちらで食べた者よりも大分固くがっちりした歯ごたえだ。
 食材で言えばハーブ類やキノコ類も食べるやつはいたが、毒キノコにあたる率も高かった」

「へえ、ハーブなんかもあったんだね。
 じゃあ食べられそうなもの考えて買い物の参考にするね。
 ―― っていうかさ、やっぱり話し方少し変わったよ。
 グッと現代的になったって感じ」

「そうかな?
 俺自身は特に変えたつもりはないけど、地球の神がなにかしたらしいもんな。
 なにかどこかおかしいか?」

「ううん、全然平気。
 もっと崩してもいいくらいだと思うよ。
 まだまだ中学生っぽくないもん」

 中学生と言われても他の人間と接したことが少なく、世間がどういったものなのかもわからない。今後少しずつ慣れていく必要はありそうだ。少なくともジョアンナに迷惑が掛からない程度にはしておきたい。

「それじゃアタシは洗い物しちゃうからお風呂洗ってきてよ。
 昨日教えたから出来るでしょ?
 あともよしたらちゃんとトイレですること!
 に・ど・と! 庭でして埋めたりしないでよね」

「ああ、わかってる……
 あの小部屋が儀式用の施設じゃないのはもうわかったから大丈夫。
 それよりこのシャツにはなんで俺の名前がでかでかと書いてるんだ?」

「それね、大分前に流行っててさ。
 勢いで買ってみたんだけどサイズも全然違くて着る機会なくてね。
 ちょうどいいからうみんちゅにあげるよ」

「だが自分の名前がこんなに大きく書いてあるのは少し気恥ずかしいな。
 それと神は俺の名前を『かいと』と呼んでいたじゃないか。
 なんで姫はうみんちゅって呼ぶんだ?」

「ねー、アタシもよくよく考えたらおかしいと思ったよ。
 でもそのうみんちゅTシャツを先にもってたからそう読んじゃった」

「まあ俺はどちらでも構わないけどな。
 どちらでも俺の名前であるし、俺の名前じゃないんだから。
 そんなことよりも腹を膨らませる方法を考える方が重要だ」

 ジョアンナが用意してくれた白飯という主食のおかげで今日は腹いっぱい食うことはできたが、毎日何食もこのペースで食べていたら破産してしまうらしい。なんとか稼ぐ方法を見つけなければ。

 そんな考え事をしながら風呂を洗い、終わったころにジョアンナがやってきて湯の溜め方を教えてくれた。これでまた一つできることが増えたと言うことになり、明日から風呂の用意は俺の仕事になった。

 それにしても、それほど広くない屋敷とはいえ隅々まで掃除しようとすると一苦労だ。夕飯の後、自分の部屋を用意してもらい、片付けと掃除をしてからついでに廊下や玄関、祖母殿の部屋を掃除して回った。どうやらジョアンナは相当のきれい好きらしい。

「今日はもう遅いからいいけど、明日からは庭の掃除もするのよ?
 まあ今の季節はそれほどすることもないから毎日じゃなくていいけどね」

「なんと、土の上まで掃除するというのか。
 季節によってはここにも花が散って掃き掃除が必要になるのか?」

「そうね、今はなにもないけど春には桜が咲いてきれいなのよ?
 秋には紅葉が赤くなってさ、それもまた風流なんだから。
 小さい頃にはそれを見ながらこの縁側でゴロゴロするのが好きだったの」

「それで猫になりたいというわけか。
 あの時は随分面白いことを言いだすと思ったよ。
 だが庭を眺めてのんびりするのも悪くないのかもな。
 今こうやって座っているだけで心が落ち着く気がする」

「はぁ、うみんちゅもわかってるわねぇ。
 これが日本のわびさびってやつなのよ。
 家を残してくれたおばあちゃんには感謝してるわ」

 ジョアンナの表情を見るだけで祖母殿を慕っていたことが一目でわかる。きっと素晴らしい御仁だったのだろう。それに引き替え父母の話が一切出てこないのは気になるところだ。

 もしかしたら俺と同じであまり恵まれない家庭だったのかもしれないし、むやみに詮索するものでもないだろう。あれこれ詮索するような立場ではないのだから大人しくしているべきだ。俺はそう考えてただ黙っていた。

 一通り掃除が終わり、俺の役割をいくつか決めたところでもうだいぶ遅い時間になっていた。今までは酔っぱらって眠くなったら寝て目覚めるまでは寝ていたが、こちらの世界にある時計と言う道具の見方を教えられ、時間通りに行動することを約束させられてしまった。

 必要もないのに夜更かししていると腹が減って余分な食費がかかるし、ジョアンナには学校もあるから言うこと聞けと言われると尤もな話で逆らう余地もない。

 こうして長いとも短いとも言えないが中身の濃かった一日は終わりを告げた。
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