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第四章 目指せ!フランチャイズで左団扇編
69.すれ違い?
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フルルの予想通り、翌日から忙しさは一段落した。なぜなら肝心の卵が途中で無くなってしまい店じまいとなるからだ。
だが営業中は信じられないくらいに忙しく、客足が途切れることは無い。ブームがいつまで続くのかわからないが、住人が一周するまでは終わらないのかもしれない。それに卵が無くなって店を閉めてもミーヤたちの戦いは続くのだ。
「今日もあっと言う間だったね。
オムレツをメインにしてからは作り置きもできるし、楽になってきたでしょ」
「そうね、でも楽になった分こっちも頑張らないといけないわ。
そろそろ始めるわよ?」
フルルはそう言って麦の粉と砂糖を混ぜて水を加えて混ぜはじめた。どうやら分量に問題はなく、きちんとそこに存在し続けている。失敗するとどこかへ消え去ってしまうと言うこの世界の理がどういう仕組みなのかはわからないが、失敗したものを途中から手直ししたり、泣く泣く食べたりと言うことを許してくれない。
つまり完成させるには、見えていないレシピに沿った手順を踏む必要があるのだ。だが分量に関しては事前にミーヤが確認しながら作り、それをメモとして残しているので問題ない。それでも次の工程である撹拌で、ダマが消えないまま混ぜ続けていた時はまるごと消えてしまった。そこを乗り越えれば焼きに入れるのだが、ここがフルルにとっての最難関である。
スプーンで適量を取り鉄板の上へ垂らす。そこへ十分に湿らせたトンボを当て、軽く優しく素早くくるっと二週させる、ところでいつも失敗してしまう。
「ああ、やっぱりうまくいかないわ。
なんでミーヤは上手に出来るのよ?」
「くるっとやるときに力を入れずに指先で持ち替えるのよ。
こう、こんな感じに、ちょっとやってみて」
「だからこうでしょ?
ここで手が引っ掛かっちゃうのよねえ……」
「もっと柄の先を持って? 軽くつまむだけでいいから。
そうそう、じゃあやってみましょ」
何度も失敗しているうちに、初めて一周だけ回すことが出来た。もちろんフルルは大喜びだ。
「やった! やったわ!
何となくわかってきたかもしれない。
広げようって思わないで回すことだけ考えた方が良さそうね」
「そうよ、回せば勝手に広がっていくんだもの。
あまり立てないようにして、そうそう、寝かせるのよ」
こうして何度か練習しているうちに、一周は回せるようになってきた。これなら何とかなりそうだと一安心していると、今日何度目かのメッセージが届いた。
『この間手伝いに行かなかったのは悪かったわ。
だからそんなに怒らないで帰ってきて。
宿屋のおばちゃんも心配しているわよ?』
レナージュとはもう数日会っていない。カナイ村を出てからずっと一緒だったのに、こんなつまらない意地を張ってどうするのか。確かに手伝いには来てくれなかったが、そもそもここはミーヤの店ではないのだしレナージュが手伝う義理は無い。しかも無給で忙しいときている。
ただミーヤも毎日疲れ果ててそれどころじゃないのも確かなのだ。店が終わった後もフルルの特訓に付き合っているし夕飯も作らなければいけない。だったら毎日飲んだくれているレナージュが、こちらの様子を見に来てくれてもいいのではないか?
『そうよ! 向こうから来ればいいんだわ!』
ミーヤは心の中へ自身の気持ちを吐き捨てた。まったく勝手なレナージュ、ミーヤのことをいつもからかって冷やかして、優しく抱きしめてくれるレナージュ……
「今日はやっぱり酒場に行こうかな。
べ、別にレナージュに会いに行くわけじゃなくて、早く終わったからたまには飲みたいなって……」
「ミーヤさま、まだ飲んでないのに顔赤い」
チカマにそう言われて、今ミーヤが人間化していることを思い出した。クレープを焼くのに爪のある太い指先は不便なのだ。そのため、いつもは顔を覆っている毛皮も人間の皮膚のようにつるんとしている。
「もう、チカマったら、いじわるね」
「ボクいじわるしてない。
ミーヤさまと違って素直でいい子だから」
何も知りませんと言う顔をしながらも、ミーヤとレナージュの関係がぎくしゃくしていることに気づいていたらしい。意外にと言ったら失礼だけど、本当に意外な事だった。
「フルルはどうする?
明日のこともあるからやめておく?」
「どちらかと言うと私よりもミーヤが心配だわ。
酔いつぶれて二日酔いだから来られません、なんて言われたら困っちゃうからね。
ちゃんと監視役でついていくわよ!」
何かおかしい気もするが、今のフルルに逆らってもいいことは無いので諦めて酒場へ向かうことにした。チカマは久しぶりの酒場だと言って嬉しそうにスキップしている。
ほどなくして酒場へ着くと、大混雑の日々は過ぎたらしく久し振りに入り口がすっきりしていた。あんなに混んでいたのが異常だったんだし、フルルの店もそのうち落ち着くのだと思うとホッとする。
しかし店内へ入るとそれは異常事態だと言うことがわかった。
「おばちゃん、久しぶり……
どうしたのこれ?」
店の中にはレナージュとイライザしかいないのだ。いくらブームが去ったとはいえ、極端すぎて驚きを隠せないミーヤだった。
「ああ、アンタかい、ご覧の通りさ」
おばちゃんは力なく出迎えてくれたが、今はそれどころではない。もっと大切なことがあるのだ。
「ミーヤ! 今まで一体どうしてたのよ!
返事くらいくれたっていいじゃないの!」
「なによ! レナージュだって一度くらい見に来てくれたって良かったでしょ!
この数日ろくに寝てないし、朝から晩まで働き詰めで…… どれだけ大変だったと思ってるのよ!」
「まあ、二人ともケンカはよしなさいよ。
ちょっとした気持ちのすれ違いってやつなんでしょ?」
「フルルに言われたくないわ!」
「あなたが原因でしょ!」
ミーヤとレナージュは同時にフルルを責めたて、お互いを見て吹きだしてしまった。
「ミーヤ、ごめんね。
手伝い行くの無視しちゃったから気まずくて行かれなかったのよ」
「レナージュ、ごめんね。
忙しいことを言い訳にして連絡しなかった私が悪いのよ」
「まあこれで仲直りってわけだな、良かったぜ。
さあ久しぶりに飲み明かそうじゃないか!」
イライザにも心配をかけたんだろうなと思うと申し訳なさでいっぱいになる。こう言うことはもうこれっきりにしよう。
そんなことを考えながら、ミーヤはレナージュと固く抱き合ったのだった。
だが営業中は信じられないくらいに忙しく、客足が途切れることは無い。ブームがいつまで続くのかわからないが、住人が一周するまでは終わらないのかもしれない。それに卵が無くなって店を閉めてもミーヤたちの戦いは続くのだ。
「今日もあっと言う間だったね。
オムレツをメインにしてからは作り置きもできるし、楽になってきたでしょ」
「そうね、でも楽になった分こっちも頑張らないといけないわ。
そろそろ始めるわよ?」
フルルはそう言って麦の粉と砂糖を混ぜて水を加えて混ぜはじめた。どうやら分量に問題はなく、きちんとそこに存在し続けている。失敗するとどこかへ消え去ってしまうと言うこの世界の理がどういう仕組みなのかはわからないが、失敗したものを途中から手直ししたり、泣く泣く食べたりと言うことを許してくれない。
つまり完成させるには、見えていないレシピに沿った手順を踏む必要があるのだ。だが分量に関しては事前にミーヤが確認しながら作り、それをメモとして残しているので問題ない。それでも次の工程である撹拌で、ダマが消えないまま混ぜ続けていた時はまるごと消えてしまった。そこを乗り越えれば焼きに入れるのだが、ここがフルルにとっての最難関である。
スプーンで適量を取り鉄板の上へ垂らす。そこへ十分に湿らせたトンボを当て、軽く優しく素早くくるっと二週させる、ところでいつも失敗してしまう。
「ああ、やっぱりうまくいかないわ。
なんでミーヤは上手に出来るのよ?」
「くるっとやるときに力を入れずに指先で持ち替えるのよ。
こう、こんな感じに、ちょっとやってみて」
「だからこうでしょ?
ここで手が引っ掛かっちゃうのよねえ……」
「もっと柄の先を持って? 軽くつまむだけでいいから。
そうそう、じゃあやってみましょ」
何度も失敗しているうちに、初めて一周だけ回すことが出来た。もちろんフルルは大喜びだ。
「やった! やったわ!
何となくわかってきたかもしれない。
広げようって思わないで回すことだけ考えた方が良さそうね」
「そうよ、回せば勝手に広がっていくんだもの。
あまり立てないようにして、そうそう、寝かせるのよ」
こうして何度か練習しているうちに、一周は回せるようになってきた。これなら何とかなりそうだと一安心していると、今日何度目かのメッセージが届いた。
『この間手伝いに行かなかったのは悪かったわ。
だからそんなに怒らないで帰ってきて。
宿屋のおばちゃんも心配しているわよ?』
レナージュとはもう数日会っていない。カナイ村を出てからずっと一緒だったのに、こんなつまらない意地を張ってどうするのか。確かに手伝いには来てくれなかったが、そもそもここはミーヤの店ではないのだしレナージュが手伝う義理は無い。しかも無給で忙しいときている。
ただミーヤも毎日疲れ果ててそれどころじゃないのも確かなのだ。店が終わった後もフルルの特訓に付き合っているし夕飯も作らなければいけない。だったら毎日飲んだくれているレナージュが、こちらの様子を見に来てくれてもいいのではないか?
『そうよ! 向こうから来ればいいんだわ!』
ミーヤは心の中へ自身の気持ちを吐き捨てた。まったく勝手なレナージュ、ミーヤのことをいつもからかって冷やかして、優しく抱きしめてくれるレナージュ……
「今日はやっぱり酒場に行こうかな。
べ、別にレナージュに会いに行くわけじゃなくて、早く終わったからたまには飲みたいなって……」
「ミーヤさま、まだ飲んでないのに顔赤い」
チカマにそう言われて、今ミーヤが人間化していることを思い出した。クレープを焼くのに爪のある太い指先は不便なのだ。そのため、いつもは顔を覆っている毛皮も人間の皮膚のようにつるんとしている。
「もう、チカマったら、いじわるね」
「ボクいじわるしてない。
ミーヤさまと違って素直でいい子だから」
何も知りませんと言う顔をしながらも、ミーヤとレナージュの関係がぎくしゃくしていることに気づいていたらしい。意外にと言ったら失礼だけど、本当に意外な事だった。
「フルルはどうする?
明日のこともあるからやめておく?」
「どちらかと言うと私よりもミーヤが心配だわ。
酔いつぶれて二日酔いだから来られません、なんて言われたら困っちゃうからね。
ちゃんと監視役でついていくわよ!」
何かおかしい気もするが、今のフルルに逆らってもいいことは無いので諦めて酒場へ向かうことにした。チカマは久しぶりの酒場だと言って嬉しそうにスキップしている。
ほどなくして酒場へ着くと、大混雑の日々は過ぎたらしく久し振りに入り口がすっきりしていた。あんなに混んでいたのが異常だったんだし、フルルの店もそのうち落ち着くのだと思うとホッとする。
しかし店内へ入るとそれは異常事態だと言うことがわかった。
「おばちゃん、久しぶり……
どうしたのこれ?」
店の中にはレナージュとイライザしかいないのだ。いくらブームが去ったとはいえ、極端すぎて驚きを隠せないミーヤだった。
「ああ、アンタかい、ご覧の通りさ」
おばちゃんは力なく出迎えてくれたが、今はそれどころではない。もっと大切なことがあるのだ。
「ミーヤ! 今まで一体どうしてたのよ!
返事くらいくれたっていいじゃないの!」
「なによ! レナージュだって一度くらい見に来てくれたって良かったでしょ!
この数日ろくに寝てないし、朝から晩まで働き詰めで…… どれだけ大変だったと思ってるのよ!」
「まあ、二人ともケンカはよしなさいよ。
ちょっとした気持ちのすれ違いってやつなんでしょ?」
「フルルに言われたくないわ!」
「あなたが原因でしょ!」
ミーヤとレナージュは同時にフルルを責めたて、お互いを見て吹きだしてしまった。
「ミーヤ、ごめんね。
手伝い行くの無視しちゃったから気まずくて行かれなかったのよ」
「レナージュ、ごめんね。
忙しいことを言い訳にして連絡しなかった私が悪いのよ」
「まあこれで仲直りってわけだな、良かったぜ。
さあ久しぶりに飲み明かそうじゃないか!」
イライザにも心配をかけたんだろうなと思うと申し訳なさでいっぱいになる。こう言うことはもうこれっきりにしよう。
そんなことを考えながら、ミーヤはレナージュと固く抱き合ったのだった。
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