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「本当に大丈夫か?」
「うん。もう平気。昔から3日くらいで終わるから」
あれからずっと冴島は側にいてくれて、そして優しく抱いてくれた。骨折の足を気遣ってやりずらいのに……それでも毎回翻弄されて意識を飛ばしてしまって、後処理までしてくれてるから目が覚めたら新しいシーツに肌触りのいいパジャマを着てる。でもなんとなく覚えてる〝好きだよ〟と言ってくれた記憶が残ってるが僕は自分のことじゃないと思い込んだ。本当は1週間くらい続くヒートだが少し動ける今しかないと心配そうにする冴島を説得した。
「お呼びですか?」
冴島が出て行ったあと僕は担当の林さんを呼んだ。何かあれば林さんに相談するようにと施設長さんに言われていたからだ。
「林さんすみませんが相談したいことがあります」
それは……冴島の側を離れることだった。冴島には守りたい人がいるのに僕が番でいいわけがない。あれは僕がヒートになったせいで事故みたいなのだから。僕はこの先一生、誰に抱かれることができなくても冴島に抱いてもらったという記憶の中で生きていけるそう思ったのに……
「大樹様には相談なされたんですか?」
心配そうに林さんに言われて僕は泣くのを我慢して答えた。
「冴島には守りたい大切な人がいるから。僕は邪魔なんだよ」
自分で言っていて辛くなった。そのあとも番になったのにとか、それは勘違いとかいう林さんに僕は怒鳴ってしまった。聞いてくれないなら1人で出て行くと。
林さんは仕方なさそうにため息を吐いて番に捨てられたオメガのホームに案内します。と言ってくれた。
車に轢かれる前に持っていたスーツケースを押しながら僕は隣の棟に向かって歩き出した。冴島の香りがするものが何か欲しかったなーと思っていたら、深い森の香りが鼻孔がくすぐった。こんな時に思い出すなんてなぁーと思ったら後ろから抱きしめられた。
「どこに行くんだ南」
鋭い声と共にアルファの威圧的なフェロモンが身体中にまとわれて息が苦しくなった。ふわっと身体が浮いて冴島にお姫様抱っこされてると気づいた。俺が降ろしてと言っても聞いてくれず僕はそのまま自分の部屋に戻されて座り心地のいいソファーに降ろされた。
「林さんありがとう」
「いえ。でも南様は何か勘違いをされているようです」
「わかってます。ちゃんと誤解はときます」
僕には遠くてあまり聞き取れなかったが林さんと冴島が話していた。
冴島はドアを閉めたあと大股で僕の方に近づいて、ソファーに座っている僕の前で跪いた。
「南、どうして隣に行こうとしたのか理由を教えてくれないか?」
「……」
言えるわけがない。言わなくてもわかってるはずなのに……涙が自然と溢れてきた。
「南、泣くほど俺と番になるのは嫌だったか?」
何を言ってるんだこの人は?そう思いながらも僕は首を横に振った。
「そうだよな。俺が南と番になりたいって言ったら嬉しいって言ってくれたし、何度も確認したもんな。それなのに出て行きたいのはやっぱり……」
「はぁ?何言ってんの?」
思わず涙も引っ込んだ。
「えっ?」
冴島は、驚いて目をぱちぱちとまばたきをしていた。
「僕、そんなこと言った記憶ないよ」
すると証拠はあるとスマホを操作した。ほらっと画面を見せられると……そこには
「南、好きだよ。ずっとずっと好きだった。南と番になりたい。番になってどんなことからも守ってやりたい」
「うん。僕も冴島が好き、大好き。だから噛んでお願い」
「本当に本当に俺でいいのか?」
「冴島は嫌なの?」
「嫌じゃない。ありがとう南」
なんだこれ?どうなってるんだ?
「ちゃんと言ってだだろ?嘘じゃないだろ?」何度も確認する冴島にこんなの見せられたらうなづくしかなかった。
冴島は僕を抱っこして対面に座ると真剣な眼差しで僕を見つめた。
「南、結婚しよう。これから先、どんなことからもお前を守れるように力をつけてきた。あの毒親からも守ってあげれる。やっと南と一緒にいられるんだ俺の長年の夢が叶ったからさ」
そう言って笑ってくれたけど、ちょっと待って……僕には聞かなければならないことがある。
「でも冴島には……えっと……その大切な人がいるんだろ?だけど僕となんていいのか?」
すると冴島はキョトンとして何言ってるの?と聞き返されてしまった。
「えっだってこの前、言ってたし……それになんかよそよそしい態度だったりしてるから」
するとごめんという言葉と共に強く抱きしめられた。
「お前の側にいると抱きしめたくて、キスもその先もしたくてたまんなくて、だからそういう態度とっちまったごめん。それと……信じてくれないかもしれないけど俺は昔からお前が好きで、結婚するならお前がいいって思ってたから俺、童貞だぞ。お前しか抱きたくなかったから、それなのに帰ってくるのに手間取ったりしてるうちにお前は他のやつに抱かれてるし、挙句に結婚の約束までしたのに捨てられた?冗談じゃないって思ったよ。本当は想いを伝え合ってからって段階踏もうとしたらお前ヒートだし、もう無理だろ?理性なんて飛んじまって、それでもお前に番になりたいって言ったらOKもらって浮かれてたのに、お前はどうして肝心なことを俺に聞かないんだ?これからはちゃんと言えよ」
この容姿端麗な冴島が童貞?僕のことがずっと好きだった?あまりにも衝撃なことだらけで僕はどう返事をしていいのかわからなかった。でもこの体勢はちょっと困るかも。まだヒートがちゃんと終わってないのに番に抱きしめられているせいで体が熱くなってきた。
「うん。もう平気。昔から3日くらいで終わるから」
あれからずっと冴島は側にいてくれて、そして優しく抱いてくれた。骨折の足を気遣ってやりずらいのに……それでも毎回翻弄されて意識を飛ばしてしまって、後処理までしてくれてるから目が覚めたら新しいシーツに肌触りのいいパジャマを着てる。でもなんとなく覚えてる〝好きだよ〟と言ってくれた記憶が残ってるが僕は自分のことじゃないと思い込んだ。本当は1週間くらい続くヒートだが少し動ける今しかないと心配そうにする冴島を説得した。
「お呼びですか?」
冴島が出て行ったあと僕は担当の林さんを呼んだ。何かあれば林さんに相談するようにと施設長さんに言われていたからだ。
「林さんすみませんが相談したいことがあります」
それは……冴島の側を離れることだった。冴島には守りたい人がいるのに僕が番でいいわけがない。あれは僕がヒートになったせいで事故みたいなのだから。僕はこの先一生、誰に抱かれることができなくても冴島に抱いてもらったという記憶の中で生きていけるそう思ったのに……
「大樹様には相談なされたんですか?」
心配そうに林さんに言われて僕は泣くのを我慢して答えた。
「冴島には守りたい大切な人がいるから。僕は邪魔なんだよ」
自分で言っていて辛くなった。そのあとも番になったのにとか、それは勘違いとかいう林さんに僕は怒鳴ってしまった。聞いてくれないなら1人で出て行くと。
林さんは仕方なさそうにため息を吐いて番に捨てられたオメガのホームに案内します。と言ってくれた。
車に轢かれる前に持っていたスーツケースを押しながら僕は隣の棟に向かって歩き出した。冴島の香りがするものが何か欲しかったなーと思っていたら、深い森の香りが鼻孔がくすぐった。こんな時に思い出すなんてなぁーと思ったら後ろから抱きしめられた。
「どこに行くんだ南」
鋭い声と共にアルファの威圧的なフェロモンが身体中にまとわれて息が苦しくなった。ふわっと身体が浮いて冴島にお姫様抱っこされてると気づいた。俺が降ろしてと言っても聞いてくれず僕はそのまま自分の部屋に戻されて座り心地のいいソファーに降ろされた。
「林さんありがとう」
「いえ。でも南様は何か勘違いをされているようです」
「わかってます。ちゃんと誤解はときます」
僕には遠くてあまり聞き取れなかったが林さんと冴島が話していた。
冴島はドアを閉めたあと大股で僕の方に近づいて、ソファーに座っている僕の前で跪いた。
「南、どうして隣に行こうとしたのか理由を教えてくれないか?」
「……」
言えるわけがない。言わなくてもわかってるはずなのに……涙が自然と溢れてきた。
「南、泣くほど俺と番になるのは嫌だったか?」
何を言ってるんだこの人は?そう思いながらも僕は首を横に振った。
「そうだよな。俺が南と番になりたいって言ったら嬉しいって言ってくれたし、何度も確認したもんな。それなのに出て行きたいのはやっぱり……」
「はぁ?何言ってんの?」
思わず涙も引っ込んだ。
「えっ?」
冴島は、驚いて目をぱちぱちとまばたきをしていた。
「僕、そんなこと言った記憶ないよ」
すると証拠はあるとスマホを操作した。ほらっと画面を見せられると……そこには
「南、好きだよ。ずっとずっと好きだった。南と番になりたい。番になってどんなことからも守ってやりたい」
「うん。僕も冴島が好き、大好き。だから噛んでお願い」
「本当に本当に俺でいいのか?」
「冴島は嫌なの?」
「嫌じゃない。ありがとう南」
なんだこれ?どうなってるんだ?
「ちゃんと言ってだだろ?嘘じゃないだろ?」何度も確認する冴島にこんなの見せられたらうなづくしかなかった。
冴島は僕を抱っこして対面に座ると真剣な眼差しで僕を見つめた。
「南、結婚しよう。これから先、どんなことからもお前を守れるように力をつけてきた。あの毒親からも守ってあげれる。やっと南と一緒にいられるんだ俺の長年の夢が叶ったからさ」
そう言って笑ってくれたけど、ちょっと待って……僕には聞かなければならないことがある。
「でも冴島には……えっと……その大切な人がいるんだろ?だけど僕となんていいのか?」
すると冴島はキョトンとして何言ってるの?と聞き返されてしまった。
「えっだってこの前、言ってたし……それになんかよそよそしい態度だったりしてるから」
するとごめんという言葉と共に強く抱きしめられた。
「お前の側にいると抱きしめたくて、キスもその先もしたくてたまんなくて、だからそういう態度とっちまったごめん。それと……信じてくれないかもしれないけど俺は昔からお前が好きで、結婚するならお前がいいって思ってたから俺、童貞だぞ。お前しか抱きたくなかったから、それなのに帰ってくるのに手間取ったりしてるうちにお前は他のやつに抱かれてるし、挙句に結婚の約束までしたのに捨てられた?冗談じゃないって思ったよ。本当は想いを伝え合ってからって段階踏もうとしたらお前ヒートだし、もう無理だろ?理性なんて飛んじまって、それでもお前に番になりたいって言ったらOKもらって浮かれてたのに、お前はどうして肝心なことを俺に聞かないんだ?これからはちゃんと言えよ」
この容姿端麗な冴島が童貞?僕のことがずっと好きだった?あまりにも衝撃なことだらけで僕はどう返事をしていいのかわからなかった。でもこの体勢はちょっと困るかも。まだヒートがちゃんと終わってないのに番に抱きしめられているせいで体が熱くなってきた。
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