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激怒
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おじ様の怒号が広い空間を支配しビリビリと震わせる。思わず心臓を持っていかれたのではないかと錯覚するほど激しく、強いものだった。
皆同じように考え、その場にいた生徒達は胸に手を当てて自分の鼓動を確認している。それほど、衝撃的だったのだ。
「………か、カーチェスト公爵…………???」
アキレウスは呟くと魂が抜かれたようにその場にへたり込み、ユーナも真っ白な顔からさらに血の気が引いていく。
「今度は言わないのだな」
彼がユーナの目を見て低く唸った。
「へ……」
「娘に名を呼ばれ『アキ様、アキ様』と泣き叫んだと聞いているが」
「……あっ…いや、それは…」
「私が怒っても何ともないということか」
「いえ、その、あのときはカノンさんが――」
「気安く娘の名を呼ぶな」
「…………ッ!」
ユーナはそれ以上何も言い返せず、おじ様の獣を射るような視線に戦慄く。あのおじ様に歯向かうなんて、なかなか度胸があるな。
「あなた、それくらいにしましょう」
おば様がおじ様の肩に手を添え、落ち着くように促した。おじ様を見つめる目はとても慈悲深くそれでいて恋しているような可憐なものだったけれど、すぐに凛とした笑みを浮かべてアキレウスに向き直る。
「ロルナンド王家とカーチェスト公爵家で、話し合いをしましょう」
「話し合い…?」
「あなたとカノンの婚約を解消するか否かについての話し合いです」
「それなら必要ない!既に父上からの許可を得ているのだから、もうカノンとの婚約は破棄されている」
「国王陛下が許可したとはいえ、カーチェスト家が認めない限り婚約は解消されません。ですから、まだロルナンド王家との婚約関係は続いています」
「え…………で、でも、父上は……」
「法のもとに王族の権力も何もありません。学園で教わりませんでしたか?」
「……………。」
アキレウスはまともに授業を受けていない。課題も友人やカノンに見せてもらっていたし、やる気がないのだろう。そのことを自覚しているからこそ、おば様の言葉に何も反論できないのだ。
あの様子だ、きっと国王陛下はアキレウスにまあ何とか上手くいくから大丈夫とでも言っていたのだろう。
全くのデタラメなのだけれど。
「おじ様、おば様。その話し合い、ウォルター家が仲立ちをするというのはいかがでしょう?」
「……あら、いいわね」
私の提案におば様が賛成すると同時に、アキレウスがまた顔を赤くする。
「ふざけるな!お前には関係がないと何度も―」
「関係があります。誰かさんのせいで気を失ってしまったカノンを送り届けたのはウォルター家の侍女です。そしてカーチェスト公爵夫妻がここに来てくださったのも、同様にシェリーが伝えたおかげ。それに…」
さりげなく目配せをするとおば様がニコリと頷いてくれた。
「私たちはあくまでもこの会場で何があったかは知りません。いずれにせよ、第三者として話を進めてくれる人が必要だわ。マリエル、明日に出向いていただくよう、ウォルター公爵夫妻に伝えておいてもらえるかしら?」
「もちろんです、おば様」
「国王陛下と王妃様には、貴方から伝えてください」
アキレウスに冷たい声でそう言うと、すっかり怯えた様子のユーナが恐る恐る、
「あの、私はどうすれば………??」
「ユーナ、君は僕の隣にいてくれ。一緒に話をして、僕らが『真実の愛』で結ばれているとわかってもらおう」
「ア、アキ様ぁ……っ」
真実の愛、ね…。
私は呆れるあまり、アキレウスの腕の中で私を静かに睨んでいるユーナに気がつかなかった。
皆同じように考え、その場にいた生徒達は胸に手を当てて自分の鼓動を確認している。それほど、衝撃的だったのだ。
「………か、カーチェスト公爵…………???」
アキレウスは呟くと魂が抜かれたようにその場にへたり込み、ユーナも真っ白な顔からさらに血の気が引いていく。
「今度は言わないのだな」
彼がユーナの目を見て低く唸った。
「へ……」
「娘に名を呼ばれ『アキ様、アキ様』と泣き叫んだと聞いているが」
「……あっ…いや、それは…」
「私が怒っても何ともないということか」
「いえ、その、あのときはカノンさんが――」
「気安く娘の名を呼ぶな」
「…………ッ!」
ユーナはそれ以上何も言い返せず、おじ様の獣を射るような視線に戦慄く。あのおじ様に歯向かうなんて、なかなか度胸があるな。
「あなた、それくらいにしましょう」
おば様がおじ様の肩に手を添え、落ち着くように促した。おじ様を見つめる目はとても慈悲深くそれでいて恋しているような可憐なものだったけれど、すぐに凛とした笑みを浮かべてアキレウスに向き直る。
「ロルナンド王家とカーチェスト公爵家で、話し合いをしましょう」
「話し合い…?」
「あなたとカノンの婚約を解消するか否かについての話し合いです」
「それなら必要ない!既に父上からの許可を得ているのだから、もうカノンとの婚約は破棄されている」
「国王陛下が許可したとはいえ、カーチェスト家が認めない限り婚約は解消されません。ですから、まだロルナンド王家との婚約関係は続いています」
「え…………で、でも、父上は……」
「法のもとに王族の権力も何もありません。学園で教わりませんでしたか?」
「……………。」
アキレウスはまともに授業を受けていない。課題も友人やカノンに見せてもらっていたし、やる気がないのだろう。そのことを自覚しているからこそ、おば様の言葉に何も反論できないのだ。
あの様子だ、きっと国王陛下はアキレウスにまあ何とか上手くいくから大丈夫とでも言っていたのだろう。
全くのデタラメなのだけれど。
「おじ様、おば様。その話し合い、ウォルター家が仲立ちをするというのはいかがでしょう?」
「……あら、いいわね」
私の提案におば様が賛成すると同時に、アキレウスがまた顔を赤くする。
「ふざけるな!お前には関係がないと何度も―」
「関係があります。誰かさんのせいで気を失ってしまったカノンを送り届けたのはウォルター家の侍女です。そしてカーチェスト公爵夫妻がここに来てくださったのも、同様にシェリーが伝えたおかげ。それに…」
さりげなく目配せをするとおば様がニコリと頷いてくれた。
「私たちはあくまでもこの会場で何があったかは知りません。いずれにせよ、第三者として話を進めてくれる人が必要だわ。マリエル、明日に出向いていただくよう、ウォルター公爵夫妻に伝えておいてもらえるかしら?」
「もちろんです、おば様」
「国王陛下と王妃様には、貴方から伝えてください」
アキレウスに冷たい声でそう言うと、すっかり怯えた様子のユーナが恐る恐る、
「あの、私はどうすれば………??」
「ユーナ、君は僕の隣にいてくれ。一緒に話をして、僕らが『真実の愛』で結ばれているとわかってもらおう」
「ア、アキ様ぁ……っ」
真実の愛、ね…。
私は呆れるあまり、アキレウスの腕の中で私を静かに睨んでいるユーナに気がつかなかった。
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