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三つ巴会議
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୨୧┈┈┈┈┈┈マリエル視点┈┈┈┈┈┈୨୧
「これより、ロルナンド・カーチェスト両家の婚約について会議を行う!」
ウォルター家の、応接室。この部屋でそれぞれが、大きな円形のテーブルを囲うように座っている。
そこでお父様は慌てた様子も見せず話し合いを始めさせた。
昨日の今日でかなり急ではあったけれど、まだ意識を失っているカノンを除けば全員、この部屋に集まることができた。
ただ――
「一体何事でしょう」
綺麗に着飾った国王陛下と王妃様は、案の定これが何の集まりかは知らないようだった。
「陛下。話し合いを進めるにあたって、この部屋の中にいる限りは形式的な儀礼を省略することをお許しください」
「いいだろう」
「では両家の主張を聞きましょう。ではまず…」
「僕から話そう」
アキレウスはドヤ顔をしながら立ち上がった。そして隣に座っているユーナに熱い視線を送っている。
「え、えーと…」
お父様がチラリとこちらを見た。…まあ、いいだろう。どちらが先に証言してもカノンの優位は変わらないので、私は小さく頷いた。
「では、アキレウス第2王子。両家の婚約破棄についてのお考えをお話ください」
「ああ。まず、僕とカノンは6歳のとき、婚約を結んだ。王家と結びつくための明らかな政略結婚だ」
ひゅっ、と上擦ったような呼吸が無意識に漏れた。いけないいけない、我慢しなければ。
「最初の頃はまだよかった。カノンも愛嬌があったし楽しかったから。でも学園に入る頃にはいつの間にか眉一つ動かさない冷徹な人間になってしまった」
我慢、我慢……。さりげなくおじ様の方を見ると、卒業パーティのときと似た憤怒が静かな瞳に灯っていた。
ダメですよおじ様、我慢です。
「それでも一応は婚約を結んでいるのだからと、僕は苦痛に耐えて生活してきたのだ。僕の行動ひとつひとつに文句を付けてくるし愛嬌はないし、そのくせ授業を終えると真っ直ぐに帰る。僕の婚約者であるくせに、全く僕に歩み寄ろうとしないのだ。それだけでもカノンが婚約者にふさわしくない理由になるだろう」
しかし、とアキレウスは続けた。
「あろうことかあの女は、僕がユーナと仲良くしているとわかると、ユーナに陰湿な嫌がらせを始めたんだ」
この場にカノンが居ないのをいいことに、アキレウスはべらべらと喋り続ける。カーチェスト家の怒りも見えないくらいに。
「お父様、隣のユーナ嬢の話も聞いてみてはいかがでしょうか?」
「そうだな、折角この場に出席しているのだから」
お父様の皮肉にも気づかず、ユーナは顔を輝かせた。自分のターンだと思ったのだろう。嬉々として立ち上がる。
「私は、カノンさんに…あ、いえ、カノン様に、いじめられていました。アキ様と仲良くするなと言われ、私物を隠されたり手をあげられたりして……ッ!」
ああ、見飽きたよユーナ、あんたの涙は。
「アキ様はいつもカノン様のせいで苦しんでいました。そして、その傷を癒せるのは私しかいないとも言ってくれました。そう、私たちは契約なんかではなく『真実の愛』で結ばれているのです!」
会場が明らかに白けている。勿論、例外はいるのだが。
「君の言う通りだよ、ユーナ。僕たちこそが結ばれるのにふさわしいんだ。だから父上の許可を得た上で、カノンとの婚約破棄を宣言した。カノンとの婚約は破棄、そして僕の婚約者にふさわしいユーナが王妃になるべき、僕の意思は変わらない。以上だ」
凍えるような空気に最後まで気が付かないまま、とうとうアキレウスは話を終えた。どうしてくれようかと震えるおじ様の手を、宥めるようにおば様が手を重ねている。
王妃様を見ると困惑した様子で、婚約破棄を認めたという陛下も同じ様子だった。
そして陛下は、話が違う、と呟いた。
「これより、ロルナンド・カーチェスト両家の婚約について会議を行う!」
ウォルター家の、応接室。この部屋でそれぞれが、大きな円形のテーブルを囲うように座っている。
そこでお父様は慌てた様子も見せず話し合いを始めさせた。
昨日の今日でかなり急ではあったけれど、まだ意識を失っているカノンを除けば全員、この部屋に集まることができた。
ただ――
「一体何事でしょう」
綺麗に着飾った国王陛下と王妃様は、案の定これが何の集まりかは知らないようだった。
「陛下。話し合いを進めるにあたって、この部屋の中にいる限りは形式的な儀礼を省略することをお許しください」
「いいだろう」
「では両家の主張を聞きましょう。ではまず…」
「僕から話そう」
アキレウスはドヤ顔をしながら立ち上がった。そして隣に座っているユーナに熱い視線を送っている。
「え、えーと…」
お父様がチラリとこちらを見た。…まあ、いいだろう。どちらが先に証言してもカノンの優位は変わらないので、私は小さく頷いた。
「では、アキレウス第2王子。両家の婚約破棄についてのお考えをお話ください」
「ああ。まず、僕とカノンは6歳のとき、婚約を結んだ。王家と結びつくための明らかな政略結婚だ」
ひゅっ、と上擦ったような呼吸が無意識に漏れた。いけないいけない、我慢しなければ。
「最初の頃はまだよかった。カノンも愛嬌があったし楽しかったから。でも学園に入る頃にはいつの間にか眉一つ動かさない冷徹な人間になってしまった」
我慢、我慢……。さりげなくおじ様の方を見ると、卒業パーティのときと似た憤怒が静かな瞳に灯っていた。
ダメですよおじ様、我慢です。
「それでも一応は婚約を結んでいるのだからと、僕は苦痛に耐えて生活してきたのだ。僕の行動ひとつひとつに文句を付けてくるし愛嬌はないし、そのくせ授業を終えると真っ直ぐに帰る。僕の婚約者であるくせに、全く僕に歩み寄ろうとしないのだ。それだけでもカノンが婚約者にふさわしくない理由になるだろう」
しかし、とアキレウスは続けた。
「あろうことかあの女は、僕がユーナと仲良くしているとわかると、ユーナに陰湿な嫌がらせを始めたんだ」
この場にカノンが居ないのをいいことに、アキレウスはべらべらと喋り続ける。カーチェスト家の怒りも見えないくらいに。
「お父様、隣のユーナ嬢の話も聞いてみてはいかがでしょうか?」
「そうだな、折角この場に出席しているのだから」
お父様の皮肉にも気づかず、ユーナは顔を輝かせた。自分のターンだと思ったのだろう。嬉々として立ち上がる。
「私は、カノンさんに…あ、いえ、カノン様に、いじめられていました。アキ様と仲良くするなと言われ、私物を隠されたり手をあげられたりして……ッ!」
ああ、見飽きたよユーナ、あんたの涙は。
「アキ様はいつもカノン様のせいで苦しんでいました。そして、その傷を癒せるのは私しかいないとも言ってくれました。そう、私たちは契約なんかではなく『真実の愛』で結ばれているのです!」
会場が明らかに白けている。勿論、例外はいるのだが。
「君の言う通りだよ、ユーナ。僕たちこそが結ばれるのにふさわしいんだ。だから父上の許可を得た上で、カノンとの婚約破棄を宣言した。カノンとの婚約は破棄、そして僕の婚約者にふさわしいユーナが王妃になるべき、僕の意思は変わらない。以上だ」
凍えるような空気に最後まで気が付かないまま、とうとうアキレウスは話を終えた。どうしてくれようかと震えるおじ様の手を、宥めるようにおば様が手を重ねている。
王妃様を見ると困惑した様子で、婚約破棄を認めたという陛下も同じ様子だった。
そして陛下は、話が違う、と呟いた。
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