【完結】「どうせあいつは俺と離婚できない」と浮気相手に言っているらしいけど、離婚して困るのはあなたですよ?

まきじた

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第一話

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「今夜、ゴルフ行ってくる。泊まって明日はそのまま仕事行ってくるから。明日の夕飯は用意しとけよ。それじゃ」

「…そう。行ってらっしゃい」

 るんるん、という音が聞こえてきそうなくらい上機嫌な夫を見送ると、私は小さくため息をついた。ちらりとリビングのソファ脇を見る。

「ゴルフバッグも持たずに、何がゴルフよ…」

 夫が浮気を始めたのは数ヶ月前。おそらく相手は職場の同僚。名前も知っている。

 何故かって?それは夫がスマホを隠さないから。

 浮気しているなら画面を伏せておくとかしてもよいだろうのに、トイレに行くときも寝るときも堂々とスマホを置いていく。『早く会いたい♡』などの通知がバレバレ。

 酷いときは隣の部屋で浮気相手と電話して愛を囁く日もあり…根本的に舐められているのだろう。

「俺に惚れたあいつは離婚なんかできない」

 そう言っているくらいなのだから。むしろ、見せつけているのかもしれない。そして私を見下しているのだ。

 浮気されるほど魅力のない女だと。

「馬鹿みたい。仮に私が離婚できない理由があるとするなら………あら?」

 電話だ。それも、夫から。

 浮気相手とのデートだというのに電話がかかってくる理由はわからないが、特に無視する理由もない。

 少し変に思いながら電話を取ると、知らない声が聞こえてきた。

「もしもーし。奥さんですかぁ?」

「あなた……誰?」

「あ、旦那さんじゃなくてびっくりしました?えへへ、まぁくんは私のために飲み物を買ってきてくれてるので、その隙にまぁくんのスマホから電話しちゃいました♡」

「まぁくん…」

 これは明らかに……浮気相手だ。きっと彼女もそれを隠すつもりがないから電話したんだろう。

 「浮気相手は夫が既婚者であることを知らずに付き合っているかもしれない」という、僅かな希望がパチンと消えてしまった。

「奥さん、早くまぁくんと別れてあげてください!まぁくんは我慢して離婚せずにいてあげてるみたいですけど、ほんとは私と結ばれたいはずなんです!奥さんの方からなんとか言ってください!」

 こうきたか。私は思わずポカンとして、それから彼女の言葉を反芻してようやく言葉の意味がわかってきた。

「…なるほどね」

「あれ、もしかしてぇ…ショックですか?」

 一段と跳ね上がった声に、私は疑問符を浮かべる。

「ショックですよね~!愛してる人に浮気されるなんて……私だったら立ち直れないかも!でもでも、今こそ前に進むべきですよ!早く離婚してください!」

「…そうね。その話、詳しく聞きたいわ。離婚するかどうかはあなたとの話で決めることにする」

「!」

「でも、夫は少し席を立っただけなんでしょう?すぐ戻ってきてしまうわ。LINEのIDを教えてあげるから、そこに連絡してちょうだい」

 そう言うと彼女は素直に頷いて、すぐにLINEを送ってくれた。

 …私が夫に離婚を切り出せなかった理由が、消えそうだわ。
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