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第二話
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「私たち、離婚しましょう」
少し落ち着いた雰囲気のレストランで、私たち夫婦はディナーを楽しんでいた。デザートも食べ終え、その余韻を味わっている頃合いで私は用意していた言葉を言い放った。
「…は?」
大口を開けて固まるその顔は、我が夫ながらかなり滑稽で笑えた。
私は事前に必要事項を記入済みの緑色の紙―離婚届―をテーブルの上に差し出し、にっこりと笑った。
「理由はあなたの不貞行為。それ以外に理由はいらないわね。あなたとあなたの浮気相手に慰謝料も請求します。もちろんその支払いは今までのように私の親に頼るのは無理よ?」
「ちょ、ちょっと待て。離婚…?何故、お前が?」
「何故?あなたが不倫したからでしょう」
「お前は、俺に惚れてるんじゃ…それで…」
「それで、離婚なんか言い出せないと?」
「あ、ああ…」
「馬鹿ね」
「な……!?」
夫は怒りをあらわにした。しかし私はお構いなしに続ける。
「いくら惚れてたって、家のことほっからかして浮気されたら100年の恋も冷めるわよ」
「そ、そんな…いや、待て。慰謝料とか言ったか…?」
「ええ、それなりの総額を請求するつもりよ」
「なんで俺が払わないといけないんだ!」
「不倫しても許されると思ってたわけ?呆れる」
「なっ……そうだ、それに、俺が浮気したなんて証拠、どこにあるんだ」
「あら、ここよ?」
私は弁護士にも渡したA4サイズの紙の束を差し出す。
そこには大量の写真と、浮気相手と私のLINE。
「あなたと彼女が服も着ずにベッドに寝ている写真まであるのよ。これが証拠じゃなかったら何なのかしら?」
「こ、こんな写真、どこで……」
「あなたの浮気相手が送ってくれたの。素直で可愛いわね」
離婚を切り出すには少し証拠が弱いと思っていたところに、証拠が自ら歩いてきてくれたのだ。正直彼女には感謝している。慰謝料を減額するつもりはないけれど。
「でもいいじゃない。あなたは彼女のこと好きだったんでしょ?彼女もあなたのこと愛してるみたいよ。人間、本当に好きな人と結ばれるべきよ」
呆然としている夫を横目に荷物をまとめ、伝票を手に取る。
「あなたはこれから大金が必要になるでしょうし、ここは私が奢ってあげるわ」
それと、と夫の耳元で囁く。
「人ってそう簡単には変わらないの。今度はあなたが裏切られないといいわね」
あれからしばらく時間が経った。一時は踏み倒されるかと思った慰謝料も、無事に払われた。当然元夫も浮気相手も会社での居場所がなくなり退職したので、なんだか危なそうなところからお金を借りたらしい…が、私には知ったこっちゃない。
2人はあのあとしばらく揉めたあと、結婚したらしい。しかし私の最後の忠告に惑わされたのか、元夫は浮気相手に対して疑心暗鬼になり、いい結婚生活とは言えないようだ。
浮気相手と電話したときも感じたけれど、彼女は人のものを奪って優越感に浸りたかったんだと思う。人のものでなくなった元夫に興味を失うのはきっと早いだろう。
当の私は、元夫と知り合う前から好意を持ってくれていたという男性の猛アプローチを受け、結婚した。子宝にも恵まれ、可愛い娘は今3歳になったところだ。
まさに幸せ……現夫の顔を見て、さらにそう思うのだった。
少し落ち着いた雰囲気のレストランで、私たち夫婦はディナーを楽しんでいた。デザートも食べ終え、その余韻を味わっている頃合いで私は用意していた言葉を言い放った。
「…は?」
大口を開けて固まるその顔は、我が夫ながらかなり滑稽で笑えた。
私は事前に必要事項を記入済みの緑色の紙―離婚届―をテーブルの上に差し出し、にっこりと笑った。
「理由はあなたの不貞行為。それ以外に理由はいらないわね。あなたとあなたの浮気相手に慰謝料も請求します。もちろんその支払いは今までのように私の親に頼るのは無理よ?」
「ちょ、ちょっと待て。離婚…?何故、お前が?」
「何故?あなたが不倫したからでしょう」
「お前は、俺に惚れてるんじゃ…それで…」
「それで、離婚なんか言い出せないと?」
「あ、ああ…」
「馬鹿ね」
「な……!?」
夫は怒りをあらわにした。しかし私はお構いなしに続ける。
「いくら惚れてたって、家のことほっからかして浮気されたら100年の恋も冷めるわよ」
「そ、そんな…いや、待て。慰謝料とか言ったか…?」
「ええ、それなりの総額を請求するつもりよ」
「なんで俺が払わないといけないんだ!」
「不倫しても許されると思ってたわけ?呆れる」
「なっ……そうだ、それに、俺が浮気したなんて証拠、どこにあるんだ」
「あら、ここよ?」
私は弁護士にも渡したA4サイズの紙の束を差し出す。
そこには大量の写真と、浮気相手と私のLINE。
「あなたと彼女が服も着ずにベッドに寝ている写真まであるのよ。これが証拠じゃなかったら何なのかしら?」
「こ、こんな写真、どこで……」
「あなたの浮気相手が送ってくれたの。素直で可愛いわね」
離婚を切り出すには少し証拠が弱いと思っていたところに、証拠が自ら歩いてきてくれたのだ。正直彼女には感謝している。慰謝料を減額するつもりはないけれど。
「でもいいじゃない。あなたは彼女のこと好きだったんでしょ?彼女もあなたのこと愛してるみたいよ。人間、本当に好きな人と結ばれるべきよ」
呆然としている夫を横目に荷物をまとめ、伝票を手に取る。
「あなたはこれから大金が必要になるでしょうし、ここは私が奢ってあげるわ」
それと、と夫の耳元で囁く。
「人ってそう簡単には変わらないの。今度はあなたが裏切られないといいわね」
あれからしばらく時間が経った。一時は踏み倒されるかと思った慰謝料も、無事に払われた。当然元夫も浮気相手も会社での居場所がなくなり退職したので、なんだか危なそうなところからお金を借りたらしい…が、私には知ったこっちゃない。
2人はあのあとしばらく揉めたあと、結婚したらしい。しかし私の最後の忠告に惑わされたのか、元夫は浮気相手に対して疑心暗鬼になり、いい結婚生活とは言えないようだ。
浮気相手と電話したときも感じたけれど、彼女は人のものを奪って優越感に浸りたかったんだと思う。人のものでなくなった元夫に興味を失うのはきっと早いだろう。
当の私は、元夫と知り合う前から好意を持ってくれていたという男性の猛アプローチを受け、結婚した。子宝にも恵まれ、可愛い娘は今3歳になったところだ。
まさに幸せ……現夫の顔を見て、さらにそう思うのだった。
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