[R18]異世界に売られた少年は甘い檻の中で溺愛される

harihari

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魔獣の森

空から舞い降りるもの

 ――ナギ。
 どこか遠くで声が聞こえた気がして、草地の上に横たわっていた凪は閉じていた目をうっすらと開いた。

(……あす……てる?)

 声の主を探すが、目ぼしい人影は見つからない。
 気のせいだ――その事実が何故かひどくショックで、凪は嘆息を漏らした。

(そうだ……こんな森の奥にいるわけがない)

 イースランによって魔素水と呼ばれる液体を飲まされた後、裸に剥かれて、草地の上に寝かされてから一体どのくらいの時間が経過したのだろう。両手足は大地から伸びる蔦に絡め取られてしまって、ほんの少しの身動きも取れず、まるで標本にされたようだ。

(身体が……熱い。熱くておかしくなりそうだ)

 身体の芯から火が灯ったような、そんな熱さが身体を支配していた。その熱は甘い疼きとなって凪を責め、思考までも溶かしていくようだ。無理矢理飲まされた魔素水が発情を促すせいで身体が疼いて仕方なかった。

 せめてもの抵抗とばかりに目の前に広がる景色に目を向け、できるだけ意識を逸らす。
 視界に飛び込んできたのは、清々しいほどに青い空と、大樹を彩る緑の葉。耳を澄ませると葉と葉の擦れる音がさわさわと聞こえてくる。時と場合が違っていたら、きっと森林浴でもしているかのような気分になることだろう。
 けれど今は、森の緑が、風が、光が、空が、ひどく遠い。

 そうしていると、初夏くらいの柔らかな風が吹き抜け、凪の素肌を撫で上げた。天を向いて猛々しく勃ち上がった昂りが風を受けてふるりと震えると、凪の脳はたちまち甘い欲求で埋め尽くされていく。

(……したい………)

 思わず股間に手が伸びる。

 が――…………

 ぎしり、と両手を拘束するものが音を立て、それを諌めた。

「……あ……ぅ…………」

 欲望の解放を阻まれて、凪の口から切なげな呻き声が漏れる。自由の効かない身体を再認識して、凪は唇を噛み締める。

 凪の両手足はイースランが魔法で生み出した蔦によって左右に引っ張られ、大きく広げた状態で大地に縫い留められていた。
 蔦を千切ろうと力を込めるが、その努力は虚しい結果に終わってしまう。手足の関節に食い込む蔦は見た目以上に頑丈で、どれだけ力を入れてもまるで歯が立たなかった。

(くそっ……)

 内心で毒づきながら、意識はどうしても股間に集中してしまう。
 両手が使えれば今すぐにでも自身の昂りを慰め、精を解き放っているところであるが、蜘蛛の巣に捕らえられた蝶のように自由を奪われた態勢ではそんな簡単なことさえ叶わない。それどころか、我慢を強いられれば強いられるほどに淫らな欲望が凪の思考を支配していく。

「あす……る」

 熱に浮かされて朦朧とする意識の中、呂律の回らない舌でその名を呼ぶが返事はない。アステルは凪がここにいることを知らないのだから当たり前だ。

「…………」

 当たり前のはずなのに、事実に何故か胸が締め付けられるような感覚を覚えてしまい、そんな自分に落胆する。

 助けて。その言葉は出なかった。

 頼るもののない孤独にじわりと涙が浮かんだ。
 無力な自分は、誰かの庇護下でしか生きていけないのだ。

「ふふ、まるで迷子の子犬だね。そんなに鳴いて、どうしたのかな」

 そんな凪の様子を見て笑う影があった。声のした方に目を向けると、そこには黒いローブを身に纏い、フードを目深に被った男がいる。イースランだ。

 彼はすぐ近くで、剥き出しになった巨大な大樹の根の上に悠然と腰かけて凪の痴態を鑑賞していた。まるで蜘蛛の巣にかかった哀れな蝶を観察するかのように。捕食者の顔をして。

「触って欲しい?」

 凪の思考を読んだかのように、誘惑が鼓膜をくすぐる。

「…………うるさい……」

 甘く、蕩けそうな言葉に、正直、心が動いた。しかし一瞬の躊躇の末に、凪は苦しげな呼吸とともにイースランを睨みつける。自身を貫く欲望のためだけにイースランに媚びるのは嫌だった。

 しかし、そんな凪の剣幕もイースランにはまるで効いていなくて、涼しい顔で流されてしまう。
 そして彼は、はるか上空を見上げて何かを見つけると、口元に三日月のような笑みを浮かべ、腰掛けていた大樹の根から立ち上がった。

「――少し早いかもだけど、まあいいか」

 草を踏み締める足音が響き、音のした方向に目を向けると、イースランが唇を愉悦の形に歪めながら悠然とした足取りで近づいてくるのが見えた。肉食獣が獲物を捕らえるときと酷似した動作に、凪の身体に震えが走る。
 嫌な予感がした。

「来るな……っ」

「ふふ……良い格好だね。まるで蜘蛛の巣に捕らえられた哀れな蝶だ」

 イースランは冷たい光を瞳に宿して凪を見下ろすと、凪の目の前で立ち止まった。

「その蝶は、僕という蜘蛛の毒牙にかかって快楽に悶えるしかないんだ。ああ、なんて哀れで可愛らしいんだろうね」

「や……やめろ……」

「やめろ?まだ立場がわからない?君を『食べる』かを決めるのは僕。君の役目は黙ってそれを受け入れること。家畜は家畜らしく主人に媚びていろ」

 イースランは開かれた両足の間に腰を下ろすと、細腕からは考えられないほどに強い力でがっしりと太腿を押さえつけてくる。ほんの少し腰を揺らすことさえ出来なくなった。

 恐る恐る下半身に視線を向けると、そそり立った自らの雄と恍惚とした笑みを浮かべるイースランの姿が目に映った。眼前で繰り広げられる恐ろしい光景に凪は顔を歪める。彼はゆっくりとその顔を近づけてきていて、それから……

「じゃあ、君の精をいただくね」

 これからされようとしていることを理解してしまい、顔が引き攣った。慌てて逃げようと暴れるが、強い力で押さえつけられている身体は満足に動かすことさえ叶わなかった。

 直後、生温かい感触とぬめった舌の感触が凪の昂りを包み込み、激しく吸い上げてきた。

「……あ゛ッ……あぁぁぁ!!」

 発狂したような凪の悲鳴が辺りに木霊した。凪は堪らず身体を仰け反らせ、唯一動く首を全力で左右に振るが、イースランは止まらない。そのままイースランの喉がごくりと上下し、生温かいものが身体の中心を通っていく感覚が伝わると、頭の中は真っ白になり、身体から力が抜けていく。目からは堪えきれずに涙がぼろぼろと流れ出た。

「なん……で、こんな……」

 泣きながら訴えかけるが、イースランはまるで気にしない様子でそれを根元まで飲み込むと再び強く吸い上げる。まるでストローでジュースでも飲むかのように一滴残らず精液を吸い上げてくるのだ。

 精を吸われるたびに頭の中が真っ白になって意識が飛ぶような浮遊感を覚えた。けれど意識を手放すことは許されなかった。幾度となく地獄の淵から引き戻されては、再び快楽の沼に突き落とされる。その繰り返しだ。

 何度も何度も休みなく与えられる刺激に身体は痙攣を繰り返し、蔦の拘束はぎしぎしと激しく音を奏でた。

(も……限界……)

 壊れてしまったほうが楽だ。

 射精を請い、腰を振り、脚を開いて、己を嬲る相手を受け入れながら快感に啼き喘ぐ――自我を捨て、思考を止めて、与えられる肉欲だけに身を委ねればきっと楽になるのだ。まるで人形のように。家畜のように。

 一度でもそんな考えが過ってしまうと、頑なだった心が揺れ動いた。もう何も感じたくなくて、考えたくなくて、次第に強張る身体が弛緩していく。

「た……すけ……」

 朦朧とした意識で口にした言葉にイースランが嗤った気がした。

 再び声が聞こえてきたのは、その時だった。

 ――ナギ。

 陽光を浴びて宝石のように光輝く淡雪が凪の頬を掠めた気がして、凪は空を見上げた。

 空は清々しいほどに青くて、空気も冷たくないのに、氷の結晶がはらはらと舞い落ちていた。ほんの少しだけ冷気を帯びた結晶は、まるでダイヤモンドダストのように煌めいて宙を舞い、肌に落ちると淡雪のように儚く溶けて水滴となる。

 灼熱のように熱くなった身体がほんの少し冷えた気がした。砂漠の真ん中で一滴の水を得るような心地良さに目を細める。

 ――――ナギ。

 舞い落ちる氷の結晶と共に声が降ってきたのは気のせいだろうか。
 凪は潤んだ瞳を空に向ける。しかし、涙でぼやけた視界に映るのは場違いなほどの快晴ばかりで、声の主の姿を見つけることはできなかった。

 だから、これはきっと幻聴だ。

「ナギ!」

 三度目に聞こえた声は、先ほどまでよりずっと大きく、はっきりと聞こえた。切羽詰まったような声。その声の主の姿を思い浮かべると、思わず涙が溢れそうになる。
 救いを求めて見上げた空には、満月のような金色の瞳が映し出され、長い銀髪がたなびいた気がした。

 けれどこれは。
 これは………………

(……幻だ)

 それはあり得ないことだと頭を振る。こんなところに居るわけがない。
 凪は失望と落胆の色を帯びた目をそっと閉じた。

「『氷結グラキエス』!!」

 その瞬間、凪の考えを否定するかのような力強い声が響いた。同時にイースランの悲鳴が耳に届く。

 目を開くより先に両手足を戒めていた蔦が切り払われ、自由になった身体を抱き起こされたかと思うと、すぐに温かい体温が全身を包み込む。

 抱きしめてきたその人物の襟元に顔を埋めると、ムスクのいい香りが鼻腔をくすぐった。
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