[R18]異世界に売られた少年は甘い檻の中で溺愛される

harihari

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愛玩動物になる日

主と従

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 篠原たちが去り、凪とアステルだけが残された。凪は懲りずに思考を巡らせる。売買が成立したということは、扉の向こうに逃げることができたらその先は自由ということだ。契約には逃げてはならないと記載されていなかった。両手の戒めは解かれ、現在は両足のみが縛られている。相手は銀髪の優男アステルただ一人。扉は目の前。これからどこかへ連れて行かれるとしたら、扉の目の前にいる今が一番の好機ではないだろうか。

(逃げるなら今しかない)

 両足に固く結ばれた縄をどのように解くかだけが問題だ。
 しかしその懸念はすぐに解消されることになった。アステルが凪の足に巻き付いた縄を解き出したからだ。

「まずは私の屋敷に向かいましょう。自分で歩けますか?」

 アステルの問いに、凪は相手を油断させるためにも極力無抵抗に、小さく頷く。そして縄が解けた瞬間を見定め――そして。

(今だ!)

 アステルの身体を強く押して転ばせると、その一瞬の隙をついて凪は扉へと駆ける。近くはないが遠くもない距離だ。凪が座らされていた台座からおよそ三メートル程度。しかしアステルは凪が逃げることを予期していた。

「無駄ですよ。『氷結グラキエス』」

「っ!?」

 アステルの声と共に、凪の足がどこからともなく現れた氷に閉じ込められ、瞬く間に身動きが取れなくなる。そして、次の瞬間には凪はアステルの腕の中に閉じ込められるようにして捕まっていた。
 凪が呆然としていると、アステルは小さく微笑み、その耳元で囁いた。

「逃げられるなんて思わないことです。私の魔法はいつでもあなたを捕まえられますから」

 その言葉に背筋が凍るのを感じた。まるで心臓を鷲掴みにされたかのような恐怖が全身を駆け巡る。必死に足を動かすが、氷の拘束はビクともしない。
 凪は驚きに目を見開いた。アステルが何かした様子はない。ただ、彼が一言呟いただけで、まるで魔法のように氷が出現したのだ。氷は徐々に大きくなっていき、足だけでなく、凪の下半身を包み込んでいく。

 氷に閉じ込められているというのに、不思議と両足に冷たさは感じなかった。ただ、身動きが取れず、足首から太腿までを氷に飲み込まれていく。為す術もなく腰まで氷漬けになり、凪に抵抗の意志も術も失われたことを確認してからようやくアステルの腕が離れた。

「愚かな子供ですね。せっかく高い金を払ったのに、こんな境界の近くで、あなたを自由にするはずがないでしょう?」

 アステルは悠然とした動作で凪の顔の前に立った。そして物色するかのように顎を掴んで持ち上げる。上を向かされると、アステルの金眼と目が合った。

 凪はその瞳に宿る深い闇を感じ取り、息を呑む。物腰の優しい雰囲気とは裏腹に、その目は酷く沈んでいた。今までの人生でこんなにも暗く恐ろしい眼差しをした人に出会ったことはなかった。その恐ろしさに震えが走るが、ここで弱みを見せたら負けだとばかりに唇を噛み締めて耐える。アステルの瞳を真正面から睨み返しながら、必死に相手を威圧するべく虚勢を張った。

「ふ……ふざけるなっこの変態!!」

 自分の身体と人生なのに、何故他人の良いようにされなければならないのか。この状態で反抗したらどんな仕置きが返ってくるともわからない。にも関わらず、気がつけば凪は心の内に溜まった黒い感情を吐き出してしまっていた。

「あんたもあのクソ野郎も最低の人間だ!!勝手にこんな世界に連れて来ておいて、俺を奴隷だなんだって……おまえらみんなイカれてるよ!!」

 凪の言葉に、アステルの眉がピクリと動いたのがわかった。それでも構わずにまくし立てる。感情のままに言葉を紡いでいくと、驚くほどするすると言葉が溢れた。

「人を攫って裸にひん剥いて、俺の身体ベタベタ触って、こんなふざけた契約書に血判まで押させて、契約主とか知らねーよっ!奴隷になんてなりたくない!俺は自分の家に帰りたいんだっ!!なんで俺ばっかりこんな目に合うんだよ!俺が何したっていうんだっ!」

 凪の心からの叫びだった。ずっと我慢してきた感情が堰を切ったように溢れ出す。その言葉を聞いたアステルがどんな表情をしているか見ることもなく、凪はまくし立てた。
 凪の悲痛な叫びに、アステルはしばしの間沈黙していた。しかしやがて小さくため息をつくと、凪の顎を掴み、強引に自分の方に顔を向けさせた。

 アステルを取り巻く空気が変わった――気がした。
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