【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ

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39話 白髪の美青年

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 全速力で馬を走らせるルースたちの視界に、ついに未確認生物の黒い影が捉えられた。
 
 まだ故郷の街が襲われる前だ。

「間に合った!」

 ソウタは、レオ・ロウたちの故郷に被害が及ぶ前に敵を見つけられたことに、心底安堵し、喜びの声を上げた。

 その瞬間、ルースは馬から真上に高く飛び上がった。
 
 彼の手にした剣が赤い閃光を放ち、眼下の怪物に向かって襲いかかる。
 
 一閃のもとに三体の敵が切り裂かれるのを見て、ソウタは馬上で体を安定させながら、感嘆の声をもらした。

「すごい……!」

 レオ・ロウとユノ・セリウスもルースに続き、それぞれの得意な攻撃で未確認生物を次々と撃破していく。
 
 ソウタとオリオンも、的確なシールドと回復魔法でサポーターとしての役割を完璧にこなし、皆の動きを支えた。

 激しい交戦の末、一行はほとんど怪我もなく未確認生物を退治することに成功した。
 
 皆の顔に安堵の表情が広がり、ほっと息をついた、その時だった。

 突如として、背後から現れた何者かが、ユノ・セリウスを拘束し、人質にとった。

「ユノ!!」

 レオ・ロウが激昂し、人質をとった相手を睨みつけた。

「お前が親玉か!」

 そこに立っていたのは、白い髪をした長髪の青年だった。
 
 その容姿は、陶器のように滑らかな白い肌、灰色の瞳、そして薄い唇が相まって、息をのむほど美しい。
 
 しかし、その美しさの奥には、どこか人間離れした異質な雰囲気が漂っている。

 彼はユノ・セリウスの首に腕を回し、楽しげな、しかし冷酷な笑みを浮かべた。

「ああ、あともう少しで楽しくなったのに。こっちの被害が大きいから、一人くらい殺さないと割に合わないでしょ」

 そう言いながら、白髪の青年は、細い指でゆっくりとユノ・セリウスの首を絞め始めた。

 ユノ・セリウスの顔が苦痛に歪む。

「やめろ!」

 ルースは怒りを滲ませながら、ゆっくりと白髪の青年に近づきながら言った。

 白髪の青年は、ルースの様子を面白そうに見つめ、挑発するように告げた。

「お前の腕一本と交換してくれるなら、返してやってもいいよ?」

 ルースは、一瞬躊躇した。
 しかし、ユノ・セリウスを見捨てられない。
 彼は、ゆっくりと左腕を差し出そうとした。

「へえ、本当にやるんだ?」

 白髪の青年は、ますます面白そうに笑い、ルースの差し出した腕に攻撃しようとしたその瞬間。

「失せろ、この野郎!」

 ソウタが、見たこともないくらい恐ろしい顔をしながら、白髪の青年目掛けて鋭い攻撃を放った。
 
 それは、サポーターとは思えない、的確で強力な魔法攻撃だった。

「……ん?君、攻撃もできるの?面白いね!」

 白髪の青年は、目を輝かせながらソウタを見た。

 しかし、ソウタの攻撃は容易く回避した。

「今日は面白かったからいいや。また会おうね」

 白髪の青年は、そう言い残すとユノ・セリウスの首から手を離し、どこからともなく現れた飛べる未確認生物に乗って、高笑いしながら逃げ去ってしまった。

「ユノ……!」

 レオ・ロウとオリオンは、すぐさま駆け寄ってユノ・セリウスを助け起こした。

 ソウタは、白髪の青年が去った方向を、ただならぬ雰囲気で睨みつけていた。
 
 その表情は、普段の穏やかな彼からは想像もできないほど険しい。

 ソウタのただならぬ雰囲気に、ルースは少し驚きながらも、声をかけようとした。
 
 しかし、ソウタはルースの呼びかけを無視し、すぐにユノ・セリウスの様子を見に行った。

 ――

 未確認生物と白髪の青年が退却し、帝都付近は一時的に落ち着きを取り戻していた。

 しかし、先ほどの出来事の余波は、まだその場に残されていた。

 ユノ・セリウスは意識を取り戻すと、すぐにルースの前に膝まづいた。

「殿下、不覚にも敵に捕まってしまい、申し訳ございませんでした。そして、助けようとしてくださったこと、心の底より感謝申し上げます」

 レオ・ロウも、ユノ・セリウスの隣に膝まづき、深々と頭を下げて敬礼した。

 しかし、ルースは二人の謝罪と感謝の言葉が耳に入らないようだった。

 ソウタに無視されたショックで、それどころではないのだ。
 
 彼の顔には、普段の威厳は影を潜め、戸惑いと不満が入り混じった表情が浮かんでいた。

 その場の気まずい空気を敏感に感じ取ったオリオンが、口を開いた。

「殿下。レオ・ロウさんたちの故郷がどんな所か、私も気になります。一度、街で休憩を挟んでから、帝都へ戻られてはいかがでしょうか?」

 街の様子が気になっていたレオ・ロウとユノ・セリウスは、オリオンの提案が良い案だと思い、すぐに頷いた。二人はルースの許可を待つ。

 ルースもその提案を受け入れ、頷いた。

「……そうだな。皆、馬に乗れ」

 そして、自分の馬に乗りながら、ソウタにも声をかけた。

「ソウタも、私の馬に乗るように」

 しかし、ソウタはルースの言葉に、普段の彼からは想像できないほど冷たい声で言い返した。

「僕は一人で乗れます。レオ兄さんと乗ってください」

 そう言うと、ソウタはレオ・ロウの馬にひらりと飛び乗り、そのまま先に行ってしまった。

「え……ソウタ殿!?」

 突然、馬を奪われたレオ・ロウは困惑し、呆然と立ち尽くした。
 
 ユノ・セリウスは、そんなレオ・ロウにそっと近づき、小声で耳打ちした。

「レオ・ロウ。ソウタ様は、どうやら機嫌が良くないようですよ」

 なぜソウタが怒っているのか全く理解できないルースとレオ・ロウは、戸惑うばかりだ。
 
 しかし、ユノ・セリウスとオリオンは、ソウタがなぜ不機嫌なのか、なんとなく理由を察して、深い溜息をついた。


(せっかくカッコイイところを見せられたと思ったのに……)

 しょんぼりとした表情で、一人馬に乗るルース。
 
 ユノ・セリウスは、馬を失ったレオ・ロウを自分の馬に乗せてあげた。
 
 オリオンもまた、苦笑いを浮かべながら自分の馬に乗り、ソウタの後を追ってレオ・ロウたちの故郷へと向かい始めた。

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