【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ

文字の大きさ
40 / 68

39話 白髪の美青年



 全速力で馬を走らせるルースたちの視界に、ついに未確認生物の黒い影が捉えられた。
 
 まだ故郷の街が襲われる前だ。

「間に合った!」

 ソウタは、レオ・ロウたちの故郷に被害が及ぶ前に敵を見つけられたことに、心底安堵し、喜びの声を上げた。

 その瞬間、ルースは馬から真上に高く飛び上がった。
 
 彼の手にした剣が赤い閃光を放ち、眼下の怪物に向かって襲いかかる。
 
 一閃のもとに三体の敵が切り裂かれるのを見て、ソウタは馬上で体を安定させながら、感嘆の声をもらした。

「すごい……!」

 レオ・ロウとユノ・セリウスもルースに続き、それぞれの得意な攻撃で未確認生物を次々と撃破していく。
 
 ソウタとオリオンも、的確なシールドと回復魔法でサポーターとしての役割を完璧にこなし、皆の動きを支えた。

 激しい交戦の末、一行はほとんど怪我もなく未確認生物を退治することに成功した。
 
 皆の顔に安堵の表情が広がり、ほっと息をついた、その時だった。

 突如として、背後から現れた何者かが、ユノ・セリウスを拘束し、人質にとった。

「ユノ!!」

 レオ・ロウが激昂し、人質をとった相手を睨みつけた。

「お前が親玉か!」

 そこに立っていたのは、白い髪をした長髪の青年だった。
 
 その容姿は、陶器のように滑らかな白い肌、灰色の瞳、そして薄い唇が相まって、息をのむほど美しい。
 
 しかし、その美しさの奥には、どこか人間離れした異質な雰囲気が漂っている。

 彼はユノ・セリウスの首に腕を回し、楽しげな、しかし冷酷な笑みを浮かべた。

「ああ、あともう少しで楽しくなったのに。こっちの被害が大きいから、一人くらい殺さないと割に合わないでしょ」

 そう言いながら、白髪の青年は、細い指でゆっくりとユノ・セリウスの首を絞め始めた。

 ユノ・セリウスの顔が苦痛に歪む。

「やめろ!」

 ルースは怒りを滲ませながら、ゆっくりと白髪の青年に近づきながら言った。

 白髪の青年は、ルースの様子を面白そうに見つめ、挑発するように告げた。

「お前の腕一本と交換してくれるなら、返してやってもいいよ?」

 ルースは、一瞬躊躇した。
 しかし、ユノ・セリウスを見捨てられない。
 彼は、ゆっくりと左腕を差し出そうとした。

「へえ、本当にやるんだ?」

 白髪の青年は、ますます面白そうに笑い、ルースの差し出した腕に攻撃しようとしたその瞬間。

「失せろ、この野郎!」

 ソウタが、見たこともないくらい恐ろしい顔をしながら、白髪の青年目掛けて鋭い攻撃を放った。
 
 それは、サポーターとは思えない、的確で強力な魔法攻撃だった。

「……ん?君、攻撃もできるの?面白いね!」

 白髪の青年は、目を輝かせながらソウタを見た。

 しかし、ソウタの攻撃は容易く回避した。

「今日は面白かったからいいや。また会おうね」

 白髪の青年は、そう言い残すとユノ・セリウスの首から手を離し、どこからともなく現れた飛べる未確認生物に乗って、高笑いしながら逃げ去ってしまった。

「ユノ……!」

 レオ・ロウとオリオンは、すぐさま駆け寄ってユノ・セリウスを助け起こした。

 ソウタは、白髪の青年が去った方向を、ただならぬ雰囲気で睨みつけていた。
 
 その表情は、普段の穏やかな彼からは想像もできないほど険しい。

 ソウタのただならぬ雰囲気に、ルースは少し驚きながらも、声をかけようとした。
 
 しかし、ソウタはルースの呼びかけを無視し、すぐにユノ・セリウスの様子を見に行った。

 ――

 未確認生物と白髪の青年が退却し、帝都付近は一時的に落ち着きを取り戻していた。

 しかし、先ほどの出来事の余波は、まだその場に残されていた。

 ユノ・セリウスは意識を取り戻すと、すぐにルースの前に膝まづいた。

「殿下、不覚にも敵に捕まってしまい、申し訳ございませんでした。そして、助けようとしてくださったこと、心の底より感謝申し上げます」

 レオ・ロウも、ユノ・セリウスの隣に膝まづき、深々と頭を下げて敬礼した。

 しかし、ルースは二人の謝罪と感謝の言葉が耳に入らないようだった。

 ソウタに無視されたショックで、それどころではないのだ。
 
 彼の顔には、普段の威厳は影を潜め、戸惑いと不満が入り混じった表情が浮かんでいた。

 その場の気まずい空気を敏感に感じ取ったオリオンが、口を開いた。

「殿下。レオ・ロウさんたちの故郷がどんな所か、私も気になります。一度、街で休憩を挟んでから、帝都へ戻られてはいかがでしょうか?」

 街の様子が気になっていたレオ・ロウとユノ・セリウスは、オリオンの提案が良い案だと思い、すぐに頷いた。二人はルースの許可を待つ。

 ルースもその提案を受け入れ、頷いた。

「……そうだな。皆、馬に乗れ」

 そして、自分の馬に乗りながら、ソウタにも声をかけた。

「ソウタも、私の馬に乗るように」

 しかし、ソウタはルースの言葉に、普段の彼からは想像できないほど冷たい声で言い返した。

「僕は一人で乗れます。レオ兄さんと乗ってください」

 そう言うと、ソウタはレオ・ロウの馬にひらりと飛び乗り、そのまま先に行ってしまった。

「え……ソウタ殿!?」

 突然、馬を奪われたレオ・ロウは困惑し、呆然と立ち尽くした。
 
 ユノ・セリウスは、そんなレオ・ロウにそっと近づき、小声で耳打ちした。

「レオ・ロウ。ソウタ様は、どうやら機嫌が良くないようですよ」

 なぜソウタが怒っているのか全く理解できないルースとレオ・ロウは、戸惑うばかりだ。
 
 しかし、ユノ・セリウスとオリオンは、ソウタがなぜ不機嫌なのか、なんとなく理由を察して、深い溜息をついた。


(せっかくカッコイイところを見せられたと思ったのに……)

 しょんぼりとした表情で、一人馬に乗るルース。
 
 ユノ・セリウスは、馬を失ったレオ・ロウを自分の馬に乗せてあげた。
 
 オリオンもまた、苦笑いを浮かべながら自分の馬に乗り、ソウタの後を追ってレオ・ロウたちの故郷へと向かい始めた。

感想 0

あなたにおすすめの小説

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

推しの運命を変えるため、モブの俺は嫌われ役を演じた

月冬
BL
乙女ゲームの世界に転生した俺は、ただのモブキャラ。 推しキャラのレオンは、本来なら主人公と結ばれる攻略対象だった。 だから距離を置くつもりだったのに―― 気づけば、孤独だった彼の隣にいた。 「モブは選ばれない」 そう思っていたのに、 なぜかシナリオがどんどん壊れていく。 これは、 推しの未来を知るモブが、運命を変えてしまう物語。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る

桜城 寧
BL
【第1部完結しました。第2部更新予定です!】 処刑された記憶とともに、BLゲームの悪役会計に転生したことに気付いた主人公・カイル。 処刑されないために、チャラ男の仮面を被り、生徒会長に媚びを売り、能力を駆使して必死に立ち回る。 だが、愛された経験がない彼は、正しい人との距離感を知らない。 無意識の危うい言動は、生徒会長や攻略対象、さらには本来関わらないはずの人物たちまで惹きつけ、過剰な心配と執着、独占欲を向けられていく。 ——ただ生き残りたいだけなのに。 気づけば彼は、逃げ場を失うほど深く、甘く囲われていた。 *カクヨム様でも同時掲載中です。