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51話 新たな絆
ルースの誕生日を祝い、かけがえのない時間を過ごしてから数日。
今日は仕事が休みだったので、ソウタは皇宮内の私室でゆったりと寛いでいた。
(そういえば、誕生日の夜はノワールにお世話になったっけ……お礼をしないと)
ソウタは、ノワールの好物である新鮮な人参を持って、厩舎へ向かうことにした。
厩舎に着くと、レオ・ロウの愛馬である茶色い馬と、ユノ・セリウスの愛馬である白い馬がいて、ソウタは軽く挨拶を交わす。
ルースの愛馬であるノワールを呼ぶと、ノワールは嬉しそうに駆け寄ってきた。
「この前は乗せてくれてありがとう」
ソウタは、ノワールの首筋を撫でながら、人参をあげようとさらに近づこうとした。
その時、何やらソウタの後ろが騒がしい。
驚いたソウタは、人参を持ったまま後ろを振り返った。
そこには、以前オークションで見た、あの金色の毛をした馬がいて、激しく暴れていた。
金毛の馬の手綱を持っていた厩舎の管理人がバランスを崩し、地面に転んでしまう。
管理人が金毛の馬に踏みつけられそうになったのを、ソウタは瞬時に判断し、シールドを張って助けた。
「大丈夫ですか!?」
ソウタは、急いで管理人を安全な場所へ避難させると、暴れる金毛の馬の手綱をしっかりと掴み、落ち着かせようとした。
馬の身体をよく見ると、見えづらい足の裏側に怪我をしていることに気づく。
ソウタはすぐに治癒魔法をかけてあげた。
じんわりと温かい光が馬の怪我を癒していくと、馬は次第に落ち着きを取り戻し、荒い息を吐いた。
厩舎の管理人も、ソウタに深く頭を下げて礼を言う。
騒ぎを聞きつけ、「何事だ?」と急いで駆けつけてきたのは、レオ・ロウとユノ・セリウスだった。
「金毛の馬が怪我をしていて暴れていたんです。治癒したのでもう大丈夫ですよ」
ソウタは、そう言いながら、金毛の馬の首筋を優しく撫でた。
厩舎の管理人は、感心したように言った。
「この馬は、誰にも身体を触れさせないんです。触ろうとすると、大暴れするもんですから……まさか、ソウタ様が落ち着かせるとは」
ソウタは、褒められて嬉しそうに笑い、金毛の馬に持ってきた人参を差し出した。
金毛の馬は、しばらく人参の匂いを嗅いでいたが、やがてゆっくりと食べ始めた。
レオ・ロウとユノ・セリウスも、その光景を見て感心する。
ソウタと馬の間に、既に特別な絆が芽生えているかのようだった。
その様子を、少し離れた場所から見ていたルースの愛馬のノワールは、ソウタが自分のために持ってきたはずの人参を奪われ、悲しそうにヒヒンと鳴いた。
茶色い馬と白い馬が、慰めるように小さく鳴き声を上げた。
ソウタは、金毛の馬に人参をあげながら、隣にいたユノ・セリウスに質問した。
「この馬、前にオークションで見かけたけど、どうしてまだここにいるんですか?」
ユノ・セリウスは丁寧に答える。
「闇オークションから動物たちを救出した際、他の動物たちは保護団体へ引き取られましたが、この金毛の馬は、その特殊な出自ゆえに引き取り手が決まらず、一時的にこの厩舎に預けられているのです」
「そうなんだ……」
ソウタは、返事をしながら金毛の馬を見つめた。
その馬のどこか寂しげな様子に、ソウタの胸は締め付けられた。
ソウタは、ユノ・セリウスと厩舎の管理人に懇願した。
「あの、取引先が見つかるまでの間、僕がこの子の面倒を見てもいいですか?」
厩舎の管理人は、この馬の扱いに本当に困っていたようで、深く頭を下げた。
「ソウタ様が引き受けてくださるなら、私からもお願いします!」
ユノ・セリウスも快諾してくれ、ソウタは心から喜んだ。
ノワールのために持ってきた人参を別の馬にあげてしまったことを謝り、
「また後日、たくさん持ってきてあげるからね!」と約束して、その日は皇宮の私室へと帰った。
次の日から、ソウタは毎日、金毛の馬の元を訪れ、優しく語りかけた。
金毛の馬も、ソウタにだけは警戒心を解き、毛の手入れをさせてくれたり、ソウタの手ずから餌を食べたりするようになった。
その様子を、少し離れたところからレオ・ロウとユノ・セリウスが眺めていた。
「ずいぶん懐いてるな」
レオ・ロウは、楽しそうに馬と触れ合うソウタを見て、笑みをこぼした。
しかし、ユノ・セリウスは、どこか浮かばない顔をしている。
レオ・ロウはそんなユノ・セリウスを見て、どうしたのかと尋ねた。
ユノ・セリウスは眉をひそめながら、重い口調で告げた。
「あの金毛の馬は貴重な品種なので、他国への贈呈案が出ています」
レオ・ロウは、すぐに言い返した。
「しかし、ソウタ殿以外には暴れるのだから、その案は無理だろう」
ユノ・セリウスは、一層顔を曇らせる。
「……研究用として贈呈するそうです」
その言葉を聞いて、レオ・ロウは黙ってしまった。
馬がどのように扱われるのか、想像に難くなかったのだ。
次の日、ソウタは金毛の馬が、他国に引き取られるという噂を耳にした。
研究用として贈られるとは、ソウタはまだ知る由もなかった。
ソウタは、いつものように金毛の馬の元へ行き、その美しい毛並みを撫でながら、優しく語りかけた。
「別の国に行っても、元気で過ごすんだよ……」
金毛の馬は、ソウタの言葉を理解したかのように、悲しそうに目を瞬かせた。
そんな中、ルースが厩舎に訪れた。
彼はソウタの様子を見て、問いかけた。
「ソウタ、この馬が気に入ったのか?」
「うん……すごくいい子なんだ」
ソウタは、金毛の馬を優しく撫でながら答えた。
ルースは、そんなソウタを愛しそうに見つめ、柔らかな声で言った。
「それなら、この馬に名前をつけてやってほしい」
ソウタは、ルースの言葉に驚き、少し考えた後、ふと思いついたように、名前を口にした。
「……ノア」
そう呼びかけると、名前をつけてもらった金毛の馬は、嬉しそうに目を瞬かせ、ソウタの手に頭を擦り寄せた。
次の日、皇宮内で行われた議論会。
金毛の馬の処遇について話が及んだ際、ルースは堂々と命を下した。
「金毛の馬は、貴族派残党討伐に多大な貢献をしてくれたソウタに与える。大切に管理するように」
その場に議論会の参加者として出席していたソウタは、驚いてルースを見つめた。
そして、込み上げる感謝の気持ちを込めて、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます、殿下……!」
議論会が終わった後、ソウタは一目散に金毛の馬の元へ走った。
厩舎に駆け込むと、ノアの首に両腕を回し、喜びを爆発させた。
「君は今日から僕の愛馬だ!よろしくね、ノア!」
ノアも嬉しそうに、ソウタに頭を寄せた。
その様子を、少し離れたところからルースが見つめていた。
ソウタに抱きしめられている馬が、少し羨ましいと感じたが、ソウタの心からの嬉しそうな笑顔を見て、ルースもまた満ち足りた喜びに浸っていた。
ルースの愛馬であるノワールも、レオ・ロウの馬、ユノ・セリウスの馬も、新しい仲間が増えたことに、なんだかんだと嬉しそうな様子で、厩舎は温かい空気に包まれていた。
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