【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ

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1話 服を脱いでください

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 トオルがこのゲームの世界に転移してから、早くも一年が経とうとしていた。20歳になったばかりの彼は、魔法の適性がなかったため、ゲームで得た知識を活かして薬師として生計を立て、町の外れにある山の片隅でひっそりと暮らしている。

「今日はどんな薬を作ろうかな……」

 水で顔を洗いながら、トオルはぼんやりと鏡に映る自分の顔を見つめた。黒髪に黒い瞳、色白でどこか頼りなく見えるその容姿は、転移前と変わらない。
 身支度を終え、朝食をとっていると、静寂を破るかのように外から爆発音が聞こえてきた。

「モンスターの襲撃だろうか……?」

 透はすぐに魔物撃退薬を片手に取り、不安を胸に外の様子を見に行った。しかし、そこにいたのは魔物ではなく、ぽっかりと開いた巨大な洞窟だった。

「昨日までこんな洞窟、なかったのに……」

 透の好奇心が、危険を知らせる本能を上回る。これは何か珍しいものがあるに違いないと、彼は洞窟の暗がりへと足を踏み入れた。

 洞窟の中は薄暗く、ひんやりとしていたが、壁には無数の水晶が埋め込まれており、その光が幻想的にキラキラと輝いている。

(もしかしたら、貴重な薬草が手に入るかもしれないな)

 透は周囲を見回しながら奥へと進んでいく。しばらく歩くと、洞窟の先に人影を見つけた。

(あの人は……!)

 プラチナブロンドの髪に澄んだ青い瞳を持つ、冷酷なまでに美しい男性、グレイドだった。彼は若くして騎士団長に上り詰めた王国随一の実力者であり、その威厳は私服姿であっても隠しきれない。

 白いシャツに簡素なベルトを巻いただけの姿は、普段の厳格な騎士団服とは違い、どこか柔らかい印象を与えていた。透はすぐに声をかけた。

「……グレイド騎士団長?」

 名を呼ばれたグレイドは、ゆっくりと透に目を向けた。

「君は……透じゃないか。なぜこんな場所に?」

「お久しぶりです。変な音がここの方から聞こえたので、気になって……」

 グレイドは静かにうなずき、視線を洞窟の奥へと向けた。

「ここは君の住居の近くだからな……しかし、一人で来るなんて危険じゃないか?」

「魔物撃退薬を持ってきたので、大丈夫ですよ」

 そう言って、透は少し得意げに薬瓶を取り出した。その様子を見て、グレイドは「君はすごいな」と言いながら、口元だけで優しく笑った。

 透は彼のその表情を見て、一年前にこの世界へ転移したばかりの頃を思い出す。右も左も分からず困っていた自分を助けてくれたのが、このグレイドだった。

 彼が役所に掛け合ってくれたおかげで、透は住む場所を得ることができ、こうして薬師として楽しく生活できている。

(僕が今、こうしていられるのは、騎士団長のおかげなんだよな……)

 ずっとお礼を言いたかったが、グレイドは当時忙しく、なかなか会う機会がなかった。

「……! 透……!」

 ぼんやりと昔のことを考えていると、グレイドの叫び声が響いた。次の瞬間、透は突然力強く抱きしめられる。驚きで体が固まった。すると、透を抱きしめたグレイドから苦しげな声が漏れた。

 よく見ると、グレイドの肩に白い蛇が噛み付いているではないか。透は急いでその蛇を捕らえ、それが毒蛇かどうかを確認する。白い蛇は、真っ赤な斑点模様の、いかにも毒々しい見た目をしていた。

「これは……毒ですね」

 透は白い蛇を遠くに放り投げると、急いでグレイドの噛まれた場所を処置しようと、座り込んだ彼の服を引き剥がそうとした。突然の行動に、グレイドは少し困惑している。

「騎士団長、服を脱いでください」

「……透、これくらい、大したことはない」

「早く毒を取り除かないと。僕が吸い出します」

 透の強引な態度に、グレイドの顔はみるみるうちに赤らんでいく。そんなことに気づく様子もない透は、グレイドの服をはだけさせ、その広い肩に手を置いて、毒蛇に噛まれた部分を吸い出した。

「……っ」

 グレイドは何かを堪えるかのように、声を押し殺した。透は何度か血を吸い出し、もう大丈夫だろうと、彼の様子を見るために顔を上げた。

「騎士団長、具合はどうですか?」

 透の問いかけに、グレイドは自分の血で赤く汚れた彼の唇を見つめ、ドキドキしながらうなずいた。

「……ああ。透、ありがとう」

 毒を吸い出す前よりも、顔が真っ赤になっているグレイドを見て、透は心配になった。

(僕の処置が悪かったのかな……家に帰って、急いで解毒剤を作らないと)

「騎士団長、僕の家に行きましょう」

 グレイドは透の言葉に、ただうなずくことしかできなかった。

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