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「お前は初めて会った時から、皆に向けるのとは違う……俺を哀れむような、蔑むような目で見ていたな」
脱力した私を撫でながらの睦言にしては色気のない話だ。
「そんなの気のせいだわ」
クロームはガーネットの向けていた視線をそんな風に解釈していたのだろうか。
ガーネットはクロームを心配していただけだったはずだ。
哀れみがあったとしても、あの子が蔑むような視線を送るはずがない。
「どういうことだ?」
無垢なガーネットはクロームに友人としての好意以上を持たない。
鈍いと言ってしまえば元も子もないが、自分の運命を変えることに集中している朱音には、そういった機微を感じ取る余裕はなかったのだ。
クロームがガーネットの体との行為に、望みを持つのは悪いことではないけれど。
「ごめんなさいね。残念だけど、本当に中身は別人なのよ」
私はしばらく俯瞰で朱音とガーネットを見守ってきたが、その行動に干渉していないし、途中からはずっと眠っていた。
だから本当の意味で私が始まったのはついさっきのはずよね?
それは確かな気がするのだけれど。
私はガーネットの上位意識といった位置づけなのではないだろうかと推測している。
ガーネットが行ったことも感じたこともかなりの内容で共有しているからだ。
違和感があるとすれば、ガーネットがクロームに偏った気持ちを持っていたことだ。
いったいいつから?
もしかして、私の影響でガーネットにクロームが死ぬことが伝わったのだろうか。
いいえ、それだと……やっぱり辻褄が合わないわ。
朱音がそれを知っていて、今まで何も行動に出ないままでいるなんておかしい。
ぐちぐちと、柔らかくなってきた蜜口をクロームの指が嬲り、意識がそこに戻る。
そうだ、このまま引き下がれない。
これ以上溶かされる前にクロームを手に入れてしまおう。
「とにかく、私がだれでもいいの。
その童貞、私に捧げて頂かないと」
少し腰をあげ、硬く立ち上がったクロームの陽物を手で支えて馴染ませるように陰唇にこすりつける。
「苦しそうな顔をしているのは、私がガーネット自身ではないせいね。
それとも、淫らな私とガーネットの幻影に葛藤しているのかしら?」
クロームの陽根は私には手に余るものだが、少しずつなら中へ導けるかもしれない。
少しずつ、少しずつ身をよじりながら先を沈めて馴染ませる。
「もう、無垢なガーネットはいないの」
水音を伴って、先端を少しずつ齧り取るような動きに、クロームはうめき声をあげる。
「あらあら、良い声で鳴くのね。
いい子だから、そのまま子猫のようにしていらして」
猫なで声でクロームの髪を撫でる。
とはいえ、私の体はクロームの恐ろしい質量を懸命に処理している最中だ。
本当にじっとしていてもらわないと、大怪我をする。
「くっ……そうまでいうなら、お前の望み通り、嫁になど行けない体にしてやる」
強姦するという役目を思い出したのか、クロームは私をひっくり返してマウントを取る。
クロームのペースでされたら体が持たない予感がする。
支配されるのは嫌だと、私は後ろに下がり、体勢を立て直そうとした。
しかし、クロームは逃げようとした私を逃がさないように、寝台に沈めて縫い留める。
まぁ、強姦になるのなら結果的にはどの体勢でもいいけれど。
「こんな事をするなんてお前はイカれている。
お前の周りの男たちはさぞ落胆するだろうな。
いいのか?
好きな奴の名を呼んで助けを求めなくて?」
酷く冷たい目で私を睨むけれど、その奥にふつふつとした情欲が滾っている。
「助け? 戯れに神の名でも呼びましょうか?
あなたたちから元のガーネットを取り上げた神だけれどね。
誰を呼ぼうとも、体はあと少しでクローム様の物ですわ」
とっくに覚悟は出来ているのよ。
私は少し身を起こして、クロームにそっと口付ける。
口付けが呼び水になったようで、クロームは獣のように私を軋む寝台に押し付けると、唇を割り舌を引き摺り出して絡めとる。
そのうちにクロームの舌が私の口腔内にまで侵入し、執拗に内側を舐め回す。
上手く息が吸えずに涙目になっている隙に、下腹部に重く硬い圧迫感を感じた。
クロームの凶悪な陽根が処女の証を貫かんとギリギリと圧をかけてくる。
まずい、その勢いで突き入れられたら……。
「そんなの……やっ、ちょっと! 待って!」
クロームは、私の蜜口に切っ先を当てると、私の体のサイズに合わない猛りを躊躇なく一息に突き立てる。
「一気に入れたら……っ、つっ!……いっ、いたっ……!
馬鹿!! クローム!!
クロームってば!! やっ……ああっ……!!」
慌てて、制止を試みるが、身動きが出来ないくらいに押さえつけられて、更に奥に侵入される。
途中、背筋を駆け上がるような痛みと、何かが裂けたような感触があった。
「ふぁっ……あっ……いっ……痛っ……」
息も整わずに、クロームに深く爪を立てる。
一番きついところは通過して、途中まで貫かれ、進行は止まった。
まだ半分ほどしか呑みこめていない。
息が吸えなくて、ひっ、ひっ、と短く喘ぐ。
「……っ痛ったいじゃない!!」
ドンと胸板を叩くが、思った以上に頑丈だ。
叩いた振動で中が痛んで、それ以上攻撃もできない。
「お前がけしかけたくせに……」
クロームは私の剣幕にたじろいている。
「挿れ方というものがあります!
ああ、もう!! その中でもこれは最低の部類よ!」
中を確認するのが怖い。
おそらく処女膜を酷く傷つけてしまったはずだ。
「上手にやれば最小限の出血で済んだはずだったのに……きゃっ……動かさずにいて!
動いたら噛むわよ!」
これ以上動かされないように、クロームを抱き寄せる。
浅い息をつきながら、痛みに震える。
「ガーネット、どうして破瓜の痛みを比較する対象がある?
体は無垢だったぞ。見ろ、血が出ている」
身動きが取れずに半ばで進行を止めた陰茎を伝って破瓜の血が滲んできている。
血を見てゾクッとなって膣が締まり、クロームが悶える。
「気持ちよくて締まったわけじゃないから、いちいち反応しないで。
あんな勢いで入れたら、処女じゃなくても怪我をするわ」
痛みで震える私を困ったように抱き、宥めるように背を撫でる。
そういうの腹が立つわ。
「なぜ性経験豊富な知識がある?」
なかなか私とガーネットが違う存在なのだと認識できないでいるようだ。無理もない。
「そうね。ガーネットは、お嬢様だし、朱音だって病院にばかりいたから、そんな知識はないわよね」
紅香は快楽主義者で性に奔放だったから、という説明をどこから始めたらいいかしら。
「お前はなんだ?」
しかし今は、痛くて詳細を話してやる気力がない。
私だって少し落ち着いて考え事をしたいのに、質問攻めにするなんてひどいわ。
「クローム様、本懐は遂げたでしょう?
続きをして差し上げたいけれど、今日はもう諦めてくださいな」
じとりとクロームを睨む。
あなたの好きなようにしていいわ、なんて、言ってなるものか。
健気に痛みを我慢して、そのうち気持ちよくなるなんて処女ファンタジーよ。
「痛むのか……?」
「ここまでして切り上げるのは酷かもしれませんけど、今はとにかく痛いので無理よ。
乙女相手に、こんな無体をされるなんて、困った方ね」
しかし、こちらの都合は付いた。
これでガーネットは誰の物にもならなくなったわね。
うっかり和姦になるところだったけれど、最後はしっかり強姦にしてくれし、多くは望むまい。
「もう、これ抜いてくださいな。
もう十二分にお嫁にいけない体です」
言うと、何を思ったのかクロームは私を抱く力を強める。
「……それから、サファイア様には泣いている私を残して帰ったと伝えてください。
どちらにしても、こんな痛みでは続きをしても快感を得るのは無理よ。
私、気持ちの良いこと以外したくないの」
もちろんこんな酷い童貞とはとはこれっきりにするわ。
クロームはやっと違和感に気が付いたのか、私の両肩を掴んで私の顔を覗き込む。
「待て……サファイアが命じたと、なぜ知っている?」
これ以上は繋がっているから動けないわよ。
「だって、私は先ほどから申しておりますが、ガーネットではありませんので。
まぁ、サファイア様だってサファイアではないのだけれど」
はくはくと口を動かすばかりで次の句が出てこないようだ。
「後悔してます?
もしかして……童貞を愛らしいサファイアに捧げたかったかしら?
ガーネットと違って、愛らしいサファイアはこの世界には存在しなかったのだけれど」
「……お前は、俺が、なぜこんなことを命じられているのか知っているのか?」
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陰茎は先ほどの勢いは形を潜め、私の破瓜の血を纏い、クロームとともに震えている。
「ガーネット、お前は何者だ?」
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私のことが好きになってきているのに、否定しようと必死な貴方。
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私は悪役然とした微笑みを浮かべる。
「ふふふ、私、クローム様の死神ですのよ」
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