犬より猫が好きな理由

砂山一座

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生易しいものではない*

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「準備万端?」
 指を抜き取られた後にピチャピチャと音がする。だれか、この音が私の体液を舐めてる音じゃないと言って欲しい。
 ついに猫の交尾の姿勢をとらされ、ネロが私に跨る。軽口をたたいてる割に息を荒くしながら耳の中まで舌を突っ込んで舐めまくる。
 好きなだけ舐めてから、ネロはざらりとした声で秘密を打ち明けるように私に囁く。
「……ねえ、猫のココには返しがついててさ、抜く時痛みで雌は排卵しちゃうんだよ」
 ぷちゃぷちゃぷと陰茎の先を膣の入り口に当てて、場所を確かめているような突き上げる動作をする。
「俺が怖い?」
 頸をザリザリと舐め回して、軽く歯をたてる。
「……怖い」
 怖いけれど、いつか来ることだと思っていた。
 だって獣人は番を探しに街にやってくるのだ。
 ついに食べられてしまうのか、と私は覚悟を決めた。
「じゃぁ痛くないように、一回出しちゃうおうか!」
 それなのにネロは仄暗い声を引っ込めて、いつもの調子に戻るとぎゅうぎゅうと私を抱きしめる。
「え?」
 今度は急に仰向けにされると、ぺろりと唇を舐められた。請われるままに口を開けば、ざらつく舌に口内を丁寧に舐められる。
 気持ち良くて、口の中も、何も挿れられていない下腹部も苦しい。
 手際良く脱げかけた下着を放り投げ、ブラウスのボタンを外され、すっかり紅潮してしまった腹が暴き出される。
 胸を愛撫される予感に一層膣を食いしばり、震えるが、一向に触れられる様子がない。
「え?」
 代わりに手をとられ、ネロの大きな手に重ねられ勃ちあがった赤黒い陰茎を握り込まされるされた。
 硬く熱い肉棒がビクビクと震えている。
「見てて」と耳元で喘ぎ声混じりにささやかれ、右耳の下あたりの首筋を噛まれる。
「きゃっ、あっ……首、やぁ……」
 ネロは私を噛みながら、立ち上がった陰茎を私の手ごと扱き、大層な盛り上がりだ。
「はっ、あー、ご主人、エロい! 最高にエロかったー。
 これに捻じ込むかと思うと秒でイクよねー。ほら、ちゃんと見ててってば。俺、イク! イっちゃうよ!」
 たちまち、びゅっと熱いものが私の腹の上に出される。

 ひくわー、まじ引く!!

「ぎゃぁ! ネロ、なにすんのよっ!」
「はぁ、まだ一回目だから濃いなー」
 腹に出したのをネチネチと捏ね、のばしていく。
「もったいないから。中に塗っとくか」
 丁寧に掬い上げて、そのゆびを私の綻びかけた秘部に押し込む。
「ネロ、ちょっ、ダメ、ダメだってば、避妊してよ……それ精液なんでしょ?」
「そうだよ。うんと奥まで塗っとくね」
「んー、んーっ、だめっ、あっ……んあっ……」
 ずるりと二本指を突っ込まれ、さっきよりも深い所を目指して押し込まれる。
「はい、あーんして。はい、ここ! これね! 子宮の入り口から飲むんだよ、お腹すいたでしょ、ご主人!」
 たっぷりと精液のついたままの指で、ごちゅごちゅと信じられないほど奥まで触られる。
「うそぉ……あんた、ほんとに中に……」
 処女を失う前に、膣内に精液を入れられた事実に愕然とする。
「新鮮だから、問題ないよ」
「問題ないわけあるか!」
 ――上半身なんか、まだ服を着たままだ。
 同意もないし、愛を囁かれたわけでもない。
 もちろんネロの子どもを産むなんて考えたこともない。
 キス? あれってキスだったのかわからないし、挿入されるのかと思ったら、手で……手で……。
 ネロとの行為は一つも思ったように進まない。
「なんでネロはいつもそうなのよ……」
 せめてもう少しロマンティックだったら、私だって心構えができるのに。
「わかってないなぁ、ご主人、これは交尾なんだよ。
 俺、ご主人の排卵期の匂いに発情させられちゃって苦しいの。ご主人と赤ちゃん作らないと治らないわけ。頑張って待ってたけど、もう待てない。ご主人、助けてよ。拾ったからには最後まで世話してくれるんでしょ?」
 少なくとも、子宮の入り口をゴリゴリと撫でながら言うことではない。
「ほら、ちゃんとお尻あげて」
「……やだ、もう、つらい……中……切ない……」
 ベソベソ泣き出したわたしを宥めるように抱きしめる。
「そうだよね。ここぐちゃぐちゃだもん」
 子宮口の所を優しく撫でられるのが発狂しそうなほど悦くて、意識を保っていられない。
「ねえ、ご主人の中まで入っていい? 中、犯したい」
「それ以上のことしちゃったくせに、なにいってんのよ!」
「えへへ、やっとご主人にマーキングしてやったぜ」
 胎内に精液でマーキングって、そんなの常軌を逸してる。
「ばか! ネロのばか!」
 ネロをぎゅっと抱きしめるぐらいでしか私はネロに自分の不満を訴えられない。
 ぴったりとくっつけばネロの息も体温も熱い。余裕がないのが痛いほどわかる。
 ああ――なんだ、ネロも結局、痩せ我慢か……。
 何だか愛しくなって、腕に力をこめる。
「ね、本当のやつさせて。もう俺の子しか産みたくなくなるように、毎月頑張るから」
 甘い告白なんて獣人には必要ないのかもしれない。
 だって、私はネロがどんなつもりでうちに来たのかを知っていて家に住むのを許してしまったのだし。
「え? ネロ、もしかして排卵日にしかしないつもり?!」
 今度はネロが目を丸くする。
「え? それ以外も誘ってくれるの? ヒト、ヤバくない?」
 ピンと尻尾が立つ。だけでなく、さっき大量に精を放ったばかりの陽根がまた力を持ち始まる。
 ――あ、余計なこと言ったかも。
「あー、俺、ご主人に決めて正解! 最高! ヒトっていい生き物だよ、ベストオブつがい!」
 ぎゅーぎゅーに抱きしめられて、至る所を甘噛みされる。
「それって、私のこと好きってこと?」
「これを、好きなんて生易しいものだと思うわけ?」
 私の目を覗き込むネロの目は爛爛と仄暗い灯をともしている。
「わかんない」
「何よりも自由を求める猫が、わざわざ飼われに来る意味を考えてみてよ。誰でもないご主人の所に来たんだよ、俺。健気じゃない?」
 きっとこれ以上の愛の告白はない。
 ネロは他でもない私だけを狙ってやってきたのだ。 
「わー、重い愛だね、それは」
「わかったら、キスして、それからお尻出して」
 私は、ちょっとさっきのキスは納得いかなかったし、と不満を込めて、精一杯背伸びをしたキスをネロに送った。  

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