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前世が姉だった時のギャップが激しくて可愛い妹がズルい
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前世の妹、杏奈がずっとやっていた乙女ゲーム『姫騎士と盾の守護者』。
主人公は、王都の中心にある学園に入学することになった平民の新入生。
【姫騎士】を目指し、日夜勉強や訓練に励む中、姫騎士と対を為す相棒とも言える存在【盾の守護者】候補の男性キャラとの仲を深めていくゲームである。
そして、前世杏奈の、アンジェリカは、何かしらの理由で死んでしまうらしい。
現コルネリアである琴音は、ゲーム自体はやっていないため、何故死んでしまうのかが分からない。そして、それを知っている現アンジェリカの、ゲームの持ち主だった杏奈は……。
「うえーん、どうしよ~、琴音ねえちゃ~ん」
コルネリアに抱きついて泣いていた。
凛々しい姫騎士候補のはずのアンジェリカが抱きついてくる事に戸惑いと、アンジェリカとしての喜びが入り混じる。
(違う。中身は前世の妹、前世の妹)
前世の記憶を取り戻すまでコルネリアから甘えることがあっても、こんなふうに迫られたことは勿論一度もなかった為、コルネリアの頭の中はパニック状態だった。
凛々しい姉の前世が、前世の自分の妹で、この世界が乙女ゲームで、今姉、前妹が死ぬかもしれない。
聡明なことで評判のコルネリアだったが、頭の処理が追いついておらず、ただただ黙りこくって、アンジェリカのまっすぐで美しい髪を撫でて落ち着かせることしかできなかった。
「アンジェリカ様! コルネリア様! 何かありましたか?」
二人の絶叫を聞いてか外で控えていた侍女達が飛び込んでくる。
「……あ、ああ、いや、何でもない。ちょっとな。すまない、驚かせてしまったようで」
アンジェリカが慌てて、コルネリアから離れて、侍女たちに説明する。
その様子は先程まで「うえーん」と泣いていた人物とは思えないほどの凛々しい表情で、少し目は赤くなっていたが、涼やかな目もとから放たれた不可視の光線にコルネリアの侍女の顔がアンジェリカの目以上に赤くなる。
「ちょっと、私が、驚いて大きな声を出してしまったの。心配してくれてありがとう」
コルネリアが少し困っているかのように眉を垂らし、恥ずかしそうに謝ると、今度はアンジェリカの侍女が、口角が思いっきり上がってしまうのを必死で抑えながら首を振った。
「い、いえ! 何もなければ何よりです。それより、夜も更けてまいりましたので、今夜のところはお休みになられては」
なんとかごまかせたかとコルネリアの心の中の琴音は、ほお~っと息を吐いた。
コルネリアは、前世の記憶が蘇ったことで自分の人格に何か大きな影響があるのでは、と懸念したが、そこまでの不都合なことは起きていないようだった。
(言うなれば、中学時代ヲタク陰キャだった人間が、高校で陽キャデビューした位の感じね)
記憶が増えて昔の自分がどうだったか知った程度で、そこまでの影響はなく、反射的に、今の家での振舞はいつも通りに出来ていた。
姉妹同士の時のみ、昔の自分たちで喋ってしまうという感じだった。
「そう、ね。お姉さま、また、明日にでもお話にお付き合いくださいませんか」
「え? でも……」
アンジェリカは、侍女たちがいてもコルネリア(琴音)の前である限り、『杏奈』に戻りがちだった。
なので、慌ててコルネリアはアンジェリカに抱きつき、耳元で囁いた。
「今は、こっちの姉妹を演じなさいよ。明日会うまでに乙女ゲームの中身を思い出せるだけ思い出しておきなさい……お姉さま、明日もコルネリアの元に来てください」
コルネリアが離れながら、明日の約束を取り付けようとする。
すると、アンジェリカが顔を赤くしながらも返事をする。
「わ、わかった! また、明日会おう」
(いや、これまで何回もアンジェリカにコルネリアは抱きついているでしょう。しかも、全然顔なんて赤くしなかったくせに!)
何をいまさら、とコルネリアは考えていた。
が、アンジェリカは、
(うわわわわわ、おねえちゃんが耳元で囁いてなにこれなにこれなにこれー!)
と、前世の姉を意識し始めてからうまくコルネリアと接することが出来なくなっていた。
侍女が怪しむ前にと、コルネリアはアンジェリカの手を引き、外で連れ、お休みのキスを頬にして別れた。その間、アンジェリカは
(うわわわわ! 改めて、コルネリアかわいくない!? 中身おねえちゃんなのに、外は可憐な少女ってかわいくない!? 手が柔らかくない!? えー、外に出されるの~? ぎゃあああああ! 頬に! 頬に!)
挙動不審の赤面なアンジェリカという家の誰も見たことない姿に侍女は大病では、と心配するくらいだった。
そして、コルネリアはアンジェリカが死んでしまう理由が分からず、アンジェリカはコルネリアの可愛さに悶々としたまま眠れぬ夜を過ごすことになった。
主人公は、王都の中心にある学園に入学することになった平民の新入生。
【姫騎士】を目指し、日夜勉強や訓練に励む中、姫騎士と対を為す相棒とも言える存在【盾の守護者】候補の男性キャラとの仲を深めていくゲームである。
そして、前世杏奈の、アンジェリカは、何かしらの理由で死んでしまうらしい。
現コルネリアである琴音は、ゲーム自体はやっていないため、何故死んでしまうのかが分からない。そして、それを知っている現アンジェリカの、ゲームの持ち主だった杏奈は……。
「うえーん、どうしよ~、琴音ねえちゃ~ん」
コルネリアに抱きついて泣いていた。
凛々しい姫騎士候補のはずのアンジェリカが抱きついてくる事に戸惑いと、アンジェリカとしての喜びが入り混じる。
(違う。中身は前世の妹、前世の妹)
前世の記憶を取り戻すまでコルネリアから甘えることがあっても、こんなふうに迫られたことは勿論一度もなかった為、コルネリアの頭の中はパニック状態だった。
凛々しい姉の前世が、前世の自分の妹で、この世界が乙女ゲームで、今姉、前妹が死ぬかもしれない。
聡明なことで評判のコルネリアだったが、頭の処理が追いついておらず、ただただ黙りこくって、アンジェリカのまっすぐで美しい髪を撫でて落ち着かせることしかできなかった。
「アンジェリカ様! コルネリア様! 何かありましたか?」
二人の絶叫を聞いてか外で控えていた侍女達が飛び込んでくる。
「……あ、ああ、いや、何でもない。ちょっとな。すまない、驚かせてしまったようで」
アンジェリカが慌てて、コルネリアから離れて、侍女たちに説明する。
その様子は先程まで「うえーん」と泣いていた人物とは思えないほどの凛々しい表情で、少し目は赤くなっていたが、涼やかな目もとから放たれた不可視の光線にコルネリアの侍女の顔がアンジェリカの目以上に赤くなる。
「ちょっと、私が、驚いて大きな声を出してしまったの。心配してくれてありがとう」
コルネリアが少し困っているかのように眉を垂らし、恥ずかしそうに謝ると、今度はアンジェリカの侍女が、口角が思いっきり上がってしまうのを必死で抑えながら首を振った。
「い、いえ! 何もなければ何よりです。それより、夜も更けてまいりましたので、今夜のところはお休みになられては」
なんとかごまかせたかとコルネリアの心の中の琴音は、ほお~っと息を吐いた。
コルネリアは、前世の記憶が蘇ったことで自分の人格に何か大きな影響があるのでは、と懸念したが、そこまでの不都合なことは起きていないようだった。
(言うなれば、中学時代ヲタク陰キャだった人間が、高校で陽キャデビューした位の感じね)
記憶が増えて昔の自分がどうだったか知った程度で、そこまでの影響はなく、反射的に、今の家での振舞はいつも通りに出来ていた。
姉妹同士の時のみ、昔の自分たちで喋ってしまうという感じだった。
「そう、ね。お姉さま、また、明日にでもお話にお付き合いくださいませんか」
「え? でも……」
アンジェリカは、侍女たちがいてもコルネリア(琴音)の前である限り、『杏奈』に戻りがちだった。
なので、慌ててコルネリアはアンジェリカに抱きつき、耳元で囁いた。
「今は、こっちの姉妹を演じなさいよ。明日会うまでに乙女ゲームの中身を思い出せるだけ思い出しておきなさい……お姉さま、明日もコルネリアの元に来てください」
コルネリアが離れながら、明日の約束を取り付けようとする。
すると、アンジェリカが顔を赤くしながらも返事をする。
「わ、わかった! また、明日会おう」
(いや、これまで何回もアンジェリカにコルネリアは抱きついているでしょう。しかも、全然顔なんて赤くしなかったくせに!)
何をいまさら、とコルネリアは考えていた。
が、アンジェリカは、
(うわわわわわ、おねえちゃんが耳元で囁いてなにこれなにこれなにこれー!)
と、前世の姉を意識し始めてからうまくコルネリアと接することが出来なくなっていた。
侍女が怪しむ前にと、コルネリアはアンジェリカの手を引き、外で連れ、お休みのキスを頬にして別れた。その間、アンジェリカは
(うわわわわ! 改めて、コルネリアかわいくない!? 中身おねえちゃんなのに、外は可憐な少女ってかわいくない!? 手が柔らかくない!? えー、外に出されるの~? ぎゃあああああ! 頬に! 頬に!)
挙動不審の赤面なアンジェリカという家の誰も見たことない姿に侍女は大病では、と心配するくらいだった。
そして、コルネリアはアンジェリカが死んでしまう理由が分からず、アンジェリカはコルネリアの可愛さに悶々としたまま眠れぬ夜を過ごすことになった。
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