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いきなり出てくるラスボスはズルい
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アンジェリカが〈火脚〉によって反乱軍を一網打尽にしていた様をコルネリアは見ていた。
(えー何あれ!? すごくない! かっこよくない!? お姉さま、素敵!)
キラキラした目で見ているコルネリアにミーアが尋ねた。
「あの人、アンジェリカさんで、コルネリアさんのお姉さんなんだよね?」
「そう、お姉さまなの!」
「なんで、さっきネエチャンって言ってたの? アンジェリカさんが姉なんだよね?」
(こ、この子……意外と鋭い!)
桃色髪を揺らしながら、首を傾けるミーアに対して何という言葉をかけるべきか、コルネリアは天才と呼ばれたその頭脳をフル回転させた。そして、
「コルネリア……コルネ、ちゃん、コルネーちゃん、ルネーちゃん、ネーちゃん! ね?」
何が「ね?」なのかは説明不足だったが、ミーアには伝わったようで
「なるほど。愛称ってことね」
「そう! ね?」
「じゃあ、わたしもネーちゃんって呼んでいい?」
「え? ああ、うん……いいよ!」
「ありがとう! それと、助けてくれてありがとう! ネーちゃん!」
ミーアは、コルネリアを思いっきり抱きしめながら感謝の言葉を告げた。
(ふわあああ! めっちゃいい匂いがするなあこの子!)
と、コルネリアが考えていたのが気づかれたのか、ミーアの動きが止まる。
そして、突如として震えだす。
「ど、どしたの? ミーア」
「ネーちゃん、わかんない。わかんないけど、何か怖いのが……来る!」
ミーアが振り向くと、そこにはアンジェリカと赤毛の女の子エリザ、そして、その視線の先には、藍色と黒を混ぜたマーブル柄の服を着た魔女のような女が居た。
魔女は、アンジェリカに向けて指さすと指先から赤い炎を生み出した。
慌てて、後ろに〈火脚〉で離れようとするアンジェリカだったが、途中で急に止まってしまう。
そして、魔女の炎をモロにお腹に受けかけたところで、エリザがかばい二人してふっとぶ。
「杏奈!」
コルネリアは叫んで飛び出していた。
アンジェリカを、杏奈を傷つけた魔女に向けて。
すると、魔女はこちらを向き
「ど~も、はじめまして。【停滞の魔女】スタグナと申しま~す」
その言葉を聞いた瞬間、コルネリアの動きが止まる。
そして、スタグナは、ゆっくりと手を振り、風を起こした。
「きゃああああ!」
コルネリアは、そのまま風で飛ばされ、建物の壁に激突する!
「ねえちゃん!」
アンジェリカはコルネリアに駆け寄ろうとする。が、その動きさえも止められてしまう。
「は~い、動かない~」
スタグナはアンジェリカに向けて、風と炎の融合魔法を打ち込む! 燃えながら錐揉み状態で飛んでいくアンジェリカを、飛び出したコルネリアが風魔法で受け止める。
「だ、大丈夫? アンジェリカ」
「そっちこそ。大丈夫? コルネリア」
「アレは、誰?」
「アレ……多分、このゲームのラスボス」
「はあ!?」
コルネリアは驚愕の表情でアンジェリカを見つめる。
それもそのはず、あのスタグナがラスボス、つまり、最後の敵であるならば、ゲームも始まっていない今、出てくるのはおかしい。何故そんなことに、コルネリアは必死に頭を動かす。
「なんでこんなところに? って思った? 簡単に言うと~、あんた達姉妹がルートをめちゃくちゃにしたからなの」
スタグナはおっとりした口調で、答える。
「ルート……嘘、あなた全部分かってるの? ここがゲームの世界だって」
「ゲーム? 遊戯? まあ、人生なんて暇つぶしだからね~」
かみ合わない言葉に、コルネリアは混乱を極める。
「えーとね、まず、あんたたちの言う姫騎士の伝説ってのは、大体三百年周期くらいで始まるのね。で、大体この筋書きってのが決まっていて、私はそれをルートって呼んでる。そのルートを正すのが私の役割……そして、今回は死ぬ予定の妹を姉が救おうとしたから、正す。つまりは、死んでもらう」
スタグナが大きな氷塊を作り出す。
慌てて二手に逃げようとする二人だが、やはり動けなくなり、氷塊を真正面から喰らってしまう。
「ど、どうなってるのよ」
「スタグナは動きを止める魔法を使うの。だ、けど、こんなに何も出来ないなんて……」
コルネリアとアンジェリカは互いに支えあいながら立ち上がるが二人とも満身創痍である。
「早く死んで、ね? ルートに戻さないと。神に選ばれし子が成長し、私に挑み勝つ。そして、封印をする。つかの間の平和を楽しむ。それで一つの流れなの」
「そうやって、やられた振りをして、うまく生き延びてきたわけね」
「神がね、邪魔をするの~。定期的に。だから、まるで上手くいっているように見せてあげるの。神の考えた物語通りにいってると。でも、それは私の考えた筋書きなのよ」
スタグナは、長い舌を垂らしてこちらに嗤いかける。
「神様と人間を騙して生き延びてきた魔女。それがスタグナだったわけね……私も、騙されてた一人なのかな……悔しいな」
アンジェリカが呟く。
「ざーんねんでした~。じゃあ、次の人生ではもう少し賢く生きてね~」
スタグナが近づこうとした瞬間、コルネリアが〈四つ花〉を放つ。
そして、〈火脚〉で超加速したアンジェリカがスタグナに体当たりをぶつける。
「「やだ」」
二人の声が揃う。
「多分この奇跡が神様がくれたラストチャンス」
「もういっかい死んでも多分ねえちゃんと姉妹になれない気がする」
「あんたには悪いけどまだまだ姉妹でいたいの」
「遊びに行きたいところもあるし、してほしいこともある」
「話したいことも」
「聞きたいことも」
「作りたい思い出も」
「叶えたい思い出も」
「「いっぱいある、だから」」
「あんたのつまんない物語をぶち壊して」
「あたしたちの物語を始めさせてもらう!」
その時、王立学校の中心部が大きく輝き、白い雷が落ちた。
姉妹の目の前には【白銀の剣】。
「嘘よ嘘よ嘘よ! まだ! あんたの出番じゃないでしょ! 滅茶苦茶にしないで! あたしの考えた筋書きを!!!」
スタグナが狂ったように叫ぶ。その顔は醜悪に歪み、蛇のように鱗が生え始める。
スタグナの物語の終わりと姉妹の物語の始まりが近づき始める。
(えー何あれ!? すごくない! かっこよくない!? お姉さま、素敵!)
キラキラした目で見ているコルネリアにミーアが尋ねた。
「あの人、アンジェリカさんで、コルネリアさんのお姉さんなんだよね?」
「そう、お姉さまなの!」
「なんで、さっきネエチャンって言ってたの? アンジェリカさんが姉なんだよね?」
(こ、この子……意外と鋭い!)
桃色髪を揺らしながら、首を傾けるミーアに対して何という言葉をかけるべきか、コルネリアは天才と呼ばれたその頭脳をフル回転させた。そして、
「コルネリア……コルネ、ちゃん、コルネーちゃん、ルネーちゃん、ネーちゃん! ね?」
何が「ね?」なのかは説明不足だったが、ミーアには伝わったようで
「なるほど。愛称ってことね」
「そう! ね?」
「じゃあ、わたしもネーちゃんって呼んでいい?」
「え? ああ、うん……いいよ!」
「ありがとう! それと、助けてくれてありがとう! ネーちゃん!」
ミーアは、コルネリアを思いっきり抱きしめながら感謝の言葉を告げた。
(ふわあああ! めっちゃいい匂いがするなあこの子!)
と、コルネリアが考えていたのが気づかれたのか、ミーアの動きが止まる。
そして、突如として震えだす。
「ど、どしたの? ミーア」
「ネーちゃん、わかんない。わかんないけど、何か怖いのが……来る!」
ミーアが振り向くと、そこにはアンジェリカと赤毛の女の子エリザ、そして、その視線の先には、藍色と黒を混ぜたマーブル柄の服を着た魔女のような女が居た。
魔女は、アンジェリカに向けて指さすと指先から赤い炎を生み出した。
慌てて、後ろに〈火脚〉で離れようとするアンジェリカだったが、途中で急に止まってしまう。
そして、魔女の炎をモロにお腹に受けかけたところで、エリザがかばい二人してふっとぶ。
「杏奈!」
コルネリアは叫んで飛び出していた。
アンジェリカを、杏奈を傷つけた魔女に向けて。
すると、魔女はこちらを向き
「ど~も、はじめまして。【停滞の魔女】スタグナと申しま~す」
その言葉を聞いた瞬間、コルネリアの動きが止まる。
そして、スタグナは、ゆっくりと手を振り、風を起こした。
「きゃああああ!」
コルネリアは、そのまま風で飛ばされ、建物の壁に激突する!
「ねえちゃん!」
アンジェリカはコルネリアに駆け寄ろうとする。が、その動きさえも止められてしまう。
「は~い、動かない~」
スタグナはアンジェリカに向けて、風と炎の融合魔法を打ち込む! 燃えながら錐揉み状態で飛んでいくアンジェリカを、飛び出したコルネリアが風魔法で受け止める。
「だ、大丈夫? アンジェリカ」
「そっちこそ。大丈夫? コルネリア」
「アレは、誰?」
「アレ……多分、このゲームのラスボス」
「はあ!?」
コルネリアは驚愕の表情でアンジェリカを見つめる。
それもそのはず、あのスタグナがラスボス、つまり、最後の敵であるならば、ゲームも始まっていない今、出てくるのはおかしい。何故そんなことに、コルネリアは必死に頭を動かす。
「なんでこんなところに? って思った? 簡単に言うと~、あんた達姉妹がルートをめちゃくちゃにしたからなの」
スタグナはおっとりした口調で、答える。
「ルート……嘘、あなた全部分かってるの? ここがゲームの世界だって」
「ゲーム? 遊戯? まあ、人生なんて暇つぶしだからね~」
かみ合わない言葉に、コルネリアは混乱を極める。
「えーとね、まず、あんたたちの言う姫騎士の伝説ってのは、大体三百年周期くらいで始まるのね。で、大体この筋書きってのが決まっていて、私はそれをルートって呼んでる。そのルートを正すのが私の役割……そして、今回は死ぬ予定の妹を姉が救おうとしたから、正す。つまりは、死んでもらう」
スタグナが大きな氷塊を作り出す。
慌てて二手に逃げようとする二人だが、やはり動けなくなり、氷塊を真正面から喰らってしまう。
「ど、どうなってるのよ」
「スタグナは動きを止める魔法を使うの。だ、けど、こんなに何も出来ないなんて……」
コルネリアとアンジェリカは互いに支えあいながら立ち上がるが二人とも満身創痍である。
「早く死んで、ね? ルートに戻さないと。神に選ばれし子が成長し、私に挑み勝つ。そして、封印をする。つかの間の平和を楽しむ。それで一つの流れなの」
「そうやって、やられた振りをして、うまく生き延びてきたわけね」
「神がね、邪魔をするの~。定期的に。だから、まるで上手くいっているように見せてあげるの。神の考えた物語通りにいってると。でも、それは私の考えた筋書きなのよ」
スタグナは、長い舌を垂らしてこちらに嗤いかける。
「神様と人間を騙して生き延びてきた魔女。それがスタグナだったわけね……私も、騙されてた一人なのかな……悔しいな」
アンジェリカが呟く。
「ざーんねんでした~。じゃあ、次の人生ではもう少し賢く生きてね~」
スタグナが近づこうとした瞬間、コルネリアが〈四つ花〉を放つ。
そして、〈火脚〉で超加速したアンジェリカがスタグナに体当たりをぶつける。
「「やだ」」
二人の声が揃う。
「多分この奇跡が神様がくれたラストチャンス」
「もういっかい死んでも多分ねえちゃんと姉妹になれない気がする」
「あんたには悪いけどまだまだ姉妹でいたいの」
「遊びに行きたいところもあるし、してほしいこともある」
「話したいことも」
「聞きたいことも」
「作りたい思い出も」
「叶えたい思い出も」
「「いっぱいある、だから」」
「あんたのつまんない物語をぶち壊して」
「あたしたちの物語を始めさせてもらう!」
その時、王立学校の中心部が大きく輝き、白い雷が落ちた。
姉妹の目の前には【白銀の剣】。
「嘘よ嘘よ嘘よ! まだ! あんたの出番じゃないでしょ! 滅茶苦茶にしないで! あたしの考えた筋書きを!!!」
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