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11話 イケメン、美女と美少女に挟まれる★
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【一也視点】
六月十五日。
ばあさんの奇行とヤンキー女の暴走という波乱のランチタイムを乗り越えたオレは、その後何事もなく営業が進んでいくことにほっとしていた。
夕方になり、学生たちの姿がちらほらと見え始める。
こういうちょっとシックな雰囲気のカフェで学生がやってくるのは珍しい。
やはり、俺のおかげだろうな。
そして、かわいい子が多い。
同じレベルの男女が惹かれあうと言うが、そのデータは間違っていないのだろう。
だが、困る。俺は一人だ。
などと自問自答をしているとスタッフに変な目で見られた。仕事しろ。
とにかく、この店に来る若い子はレベルが高い。
そして、その高いはずのレベルが普通に見えてしまう程の美少女がやってきた。
黒髪ミディアムで清楚な雰囲気の女子高生。
立ち振る舞いから何から美しい。
更に、その最強美少女の後ろから、最強美女もやってきた。
明るいブラウンでふんわりとしたやわらかそうな髪を下ろしたグラマラス美女。
なんという二人。芸能人だろうか。芸能人に違いない。
ウチに業界人のお客様が。
「い、いらっしゃいませ」
「ロマグレさんをとっとと」
「りんちゃん、落ち着いて。珈琲とソイラテを」
美女のオーダーを受け、キッチンへ走る。
先程黒髪の美少女が言ったロマグレさんってだれだ?
「ねえ、あれって……」「うん、見たことある。絶対そうだよ」
「たまに○ンスタにここの……」「わたし結構来るけど変装とかしてたのかな」
高校生たちが黒髪美少女をチラチラ見ながら何か話をしている。
やはり、有名なコなんだろう。そして、この店のことを伝えてくれているようだ。
なんだ、ウチの店のファンか。
先程のこわばった表情がただの緊張だと分かり、彼女が愛らしく見えてくる。
サービスの一つでもしてあげるのが最高のカフェ店員だろう。
俺はキッチンにデザートを作らせ、ドリンクと一緒にお持ちする。
彼女達は、デザートを見ると目を見開く。サプライズ成功だ。
そのまま二人の目の前にデザートプレートを置く。
「うるさ」
ん? うるさい? 何がだろうか? ああ、女たちがこの子を見て騒いでいるからだろう。
あとで注意してこう。まいったな、また感謝されるかもしれない。
「あの……これ、注文していないんですが」
グラマラス美女が困ったような笑顔で聞いてくる。
「ああ、こちらは当店からのサプライズプレゼントです。是非お召し上がりください」
俺は最高の笑顔を彼女達に向ける。
黒髪美少女がマジマジとデザートプレートを見てる。
「お気に召していただけ「すみません結構です」」
黒髪美少女が俺の言葉を遮って言ってきた。
「ごめんなさいね、この子、チョコレートと普通のクリームばっかりのはちょっと食べられなくて」
なるほど、芸能人だから食事制限的なものもあるのか。キッチンのヤツにしっかり言っておこう。
「それで、ロマグレ」
「りんちゃん、落ち着いて。まずはドリンクいただきましょう」
グラマラス美女が黒髪美少女にそう言うと、黒髪美少女はソイラテを一気に飲み干す。
そして、俺を見つめ、口を開く。
「それで、」
「りんちゃん、私が話すからね。多分りんちゃんが持ってないロマグレさんの写真LIN○で送ったから」
黒髪美少女が慌ててスマホを開く。さっきからなんだ、ロマグレさんって。
「ごめんなさい、ちょっとお伺いしたいんですが」
グラマラス美女が何か聞きたいらしい。俺はお話を聞くために近づく。下心はない。
高級そうな香水の甘い良い匂いがする。
「えと、福家拓司さんという白髪の方が働いてらしたかと思うんですが」
また、ジジイの話か。たくちゃんとかロマグレとか呼び名が多すぎるだろ、ジジイの癖に。
「ああ、福家ですか。福家は辞めました」
「え……」
グラマラス美女が、まるで誰かが死んだみたいに驚いている。まあ、ジジイだし、アイツ野垂れ死んだかもしれないが、あんなトロいジジイ雇うヤツもいないだろうし。
「辞め、たんですか? 本当に」
「辞めました。白髪のスタッフの福家ですよね? 辞めましたよ」
いい加減苛々してきた。そんなに念押しして聞かないで欲しい。
しかも、まるで自分の恋人を失ったかみたいな顔して、俺のせいみたいじゃないか。
思わず、声を荒げてしまう。でも、まあ、丁度いいだろう。
これで周りにも伝わっただろう。店に居座るじじばばやおばはん達はこれで来なくなるだろう。
「ええ、ですが、ご安心下さい。新しく有能なスタッフを……」
そう言いかけた瞬間、横から風が吹いた。
黒髪美少女の手が俺の、首に伸びかけていた。
「コロ「りんちゃん! 落ち着こうね。ごめんなさいね、お邪魔しました」」
俺の目を狙う黒髪美少女の手が空を切る。
グラマラス美女が押さえてくれたようだ。一体なんなんだ?
今、なんて言いかけた? コロ? ころ? え、殺?
背中に冷や汗が流れる。
そして、去って行く二人だが、ずっと黒髪美少女がこちらを睨んでいる。
「ロマグレさんより有能な人なんているわけないでしょうが……ユルサナイユルサナイ……」
何かずっと呟いている。こええよ! なんだやっぱり芸能人はクスリでもやってるんか!?
な、なんだったんだ?
あの美女も瞳を潤ませていたような気がする。泣いてた? なんでだ?
気付けば、ぞろぞろと会計していく若い子たち。
まさか、こんなにカブって会計し始めるなよ。
全く、若いのは空気が読めないな。
そして、この日、残念ながら、売上記録の更新はならず。
せっかくポニーテールの可愛いあの子に会えたのに、ヤンキー女に絡まれ、ヤバそうな女子高生に襲われ、グラマラス美女に泣かれ、俺にとって最悪の一日だった。
だが、まさかその後ずっとそんな最悪と言える日が続くなんて、この時の俺は全く予想していなかった。
六月十五日。
ばあさんの奇行とヤンキー女の暴走という波乱のランチタイムを乗り越えたオレは、その後何事もなく営業が進んでいくことにほっとしていた。
夕方になり、学生たちの姿がちらほらと見え始める。
こういうちょっとシックな雰囲気のカフェで学生がやってくるのは珍しい。
やはり、俺のおかげだろうな。
そして、かわいい子が多い。
同じレベルの男女が惹かれあうと言うが、そのデータは間違っていないのだろう。
だが、困る。俺は一人だ。
などと自問自答をしているとスタッフに変な目で見られた。仕事しろ。
とにかく、この店に来る若い子はレベルが高い。
そして、その高いはずのレベルが普通に見えてしまう程の美少女がやってきた。
黒髪ミディアムで清楚な雰囲気の女子高生。
立ち振る舞いから何から美しい。
更に、その最強美少女の後ろから、最強美女もやってきた。
明るいブラウンでふんわりとしたやわらかそうな髪を下ろしたグラマラス美女。
なんという二人。芸能人だろうか。芸能人に違いない。
ウチに業界人のお客様が。
「い、いらっしゃいませ」
「ロマグレさんをとっとと」
「りんちゃん、落ち着いて。珈琲とソイラテを」
美女のオーダーを受け、キッチンへ走る。
先程黒髪の美少女が言ったロマグレさんってだれだ?
「ねえ、あれって……」「うん、見たことある。絶対そうだよ」
「たまに○ンスタにここの……」「わたし結構来るけど変装とかしてたのかな」
高校生たちが黒髪美少女をチラチラ見ながら何か話をしている。
やはり、有名なコなんだろう。そして、この店のことを伝えてくれているようだ。
なんだ、ウチの店のファンか。
先程のこわばった表情がただの緊張だと分かり、彼女が愛らしく見えてくる。
サービスの一つでもしてあげるのが最高のカフェ店員だろう。
俺はキッチンにデザートを作らせ、ドリンクと一緒にお持ちする。
彼女達は、デザートを見ると目を見開く。サプライズ成功だ。
そのまま二人の目の前にデザートプレートを置く。
「うるさ」
ん? うるさい? 何がだろうか? ああ、女たちがこの子を見て騒いでいるからだろう。
あとで注意してこう。まいったな、また感謝されるかもしれない。
「あの……これ、注文していないんですが」
グラマラス美女が困ったような笑顔で聞いてくる。
「ああ、こちらは当店からのサプライズプレゼントです。是非お召し上がりください」
俺は最高の笑顔を彼女達に向ける。
黒髪美少女がマジマジとデザートプレートを見てる。
「お気に召していただけ「すみません結構です」」
黒髪美少女が俺の言葉を遮って言ってきた。
「ごめんなさいね、この子、チョコレートと普通のクリームばっかりのはちょっと食べられなくて」
なるほど、芸能人だから食事制限的なものもあるのか。キッチンのヤツにしっかり言っておこう。
「それで、ロマグレ」
「りんちゃん、落ち着いて。まずはドリンクいただきましょう」
グラマラス美女が黒髪美少女にそう言うと、黒髪美少女はソイラテを一気に飲み干す。
そして、俺を見つめ、口を開く。
「それで、」
「りんちゃん、私が話すからね。多分りんちゃんが持ってないロマグレさんの写真LIN○で送ったから」
黒髪美少女が慌ててスマホを開く。さっきからなんだ、ロマグレさんって。
「ごめんなさい、ちょっとお伺いしたいんですが」
グラマラス美女が何か聞きたいらしい。俺はお話を聞くために近づく。下心はない。
高級そうな香水の甘い良い匂いがする。
「えと、福家拓司さんという白髪の方が働いてらしたかと思うんですが」
また、ジジイの話か。たくちゃんとかロマグレとか呼び名が多すぎるだろ、ジジイの癖に。
「ああ、福家ですか。福家は辞めました」
「え……」
グラマラス美女が、まるで誰かが死んだみたいに驚いている。まあ、ジジイだし、アイツ野垂れ死んだかもしれないが、あんなトロいジジイ雇うヤツもいないだろうし。
「辞め、たんですか? 本当に」
「辞めました。白髪のスタッフの福家ですよね? 辞めましたよ」
いい加減苛々してきた。そんなに念押しして聞かないで欲しい。
しかも、まるで自分の恋人を失ったかみたいな顔して、俺のせいみたいじゃないか。
思わず、声を荒げてしまう。でも、まあ、丁度いいだろう。
これで周りにも伝わっただろう。店に居座るじじばばやおばはん達はこれで来なくなるだろう。
「ええ、ですが、ご安心下さい。新しく有能なスタッフを……」
そう言いかけた瞬間、横から風が吹いた。
黒髪美少女の手が俺の、首に伸びかけていた。
「コロ「りんちゃん! 落ち着こうね。ごめんなさいね、お邪魔しました」」
俺の目を狙う黒髪美少女の手が空を切る。
グラマラス美女が押さえてくれたようだ。一体なんなんだ?
今、なんて言いかけた? コロ? ころ? え、殺?
背中に冷や汗が流れる。
そして、去って行く二人だが、ずっと黒髪美少女がこちらを睨んでいる。
「ロマグレさんより有能な人なんているわけないでしょうが……ユルサナイユルサナイ……」
何かずっと呟いている。こええよ! なんだやっぱり芸能人はクスリでもやってるんか!?
な、なんだったんだ?
あの美女も瞳を潤ませていたような気がする。泣いてた? なんでだ?
気付けば、ぞろぞろと会計していく若い子たち。
まさか、こんなにカブって会計し始めるなよ。
全く、若いのは空気が読めないな。
そして、この日、残念ながら、売上記録の更新はならず。
せっかくポニーテールの可愛いあの子に会えたのに、ヤンキー女に絡まれ、ヤバそうな女子高生に襲われ、グラマラス美女に泣かれ、俺にとって最悪の一日だった。
だが、まさかその後ずっとそんな最悪と言える日が続くなんて、この時の俺は全く予想していなかった。
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