獣人王に溺愛され、寵姫扱いです

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神様の加護

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「加護、ですか?」
……もしかして、この世界は思っているよりも危険ってことなのかな?
正直、死ぬことよりも痛いことの方が怖い。
車に轢かれた時も咄嗟に黒猫の命を救おうと動いただけで痛みを想像していなかった。
自分が思い描いていた魔物を倒す異世界転生の主人公のような行為は、できそうもない。
ますます、神様の勧める生き直すことにしり込みする。

「我の世界はお前の世界と生活様式はさほど変わらない。獣を祖としているため、機械化などは進んでいないが。……あいつと共に造ったからな。ただ、獣人がいるという違いがある。獣人はお前の世界で言う草食と肉食に大きく分けられる。だが、草食獣人が草を食べ、肉食獣人がその草食獣人を喰らう、という訳ではない。草食獣人も家畜を喰らうし、肉食獣人が肉を好まないこともある。あくまで、身体能力の差だ。肉食獣人は戦闘的で野心家が多く、草食獣人は温厚で牧歌的な生活を好む。これも、多いというだけで絶対ではない。しかし、そのために国を治めるのは肉食獣人が多いな」

なるほど。
この辺はなんとなく想像していた感じではある。
「獣人も多様だ。お前の世界と同様、良い獣人もいれば悪い獣人もいる。見た目が獰猛な熊の獣人が悪だという訳ではない。そして進化が進む中で、完全な獣体に変化する者はほぼいない。もう、耳や尾などに特徴を残す者がほとんどだ」

獣人も思っていたよりもライトだな。
100均で見たことある動物のカチューシャをしている程度ってことか。
「あの、お聞きしている限り、そこまで僕が暮らしにくい感じはしないんですけど、加護、とは?」
「そうだな。まず、言葉だ。お前は我の世界の言語を話せない。それでは困るだろうから、会話や読み書きなどは可能になる加護を与えよう。そして、世界が異なるため食が合わない可能性がある。お前の世界と動植物は似通っているとはいえ、完全に一致はしていない。順応できるよう、何を食しても問題のない身体強化の加護も与える。それにより、病に冒されることもない」

すごい……本当に手厚い!
こんなにしてもらってもいいのかってくらいだ。
「あの、なぜそこまで……?」
もちろん、神様を庇って死んだことに対して申し訳ないって気持ちだと思うけれど、僕の世界の神様が言った通りそのまま死なせておけば良かったのに。
「今、お前がいるこの空間をどう思う?」
「え?」
僕は周囲を見渡してみる。
どう思うも何も、真っ白で何も無い。
黒い猫がちょこんと白い空間に座っているだけだ。

「何も無いだろう?この世界はお前の内……つまり魂だ。赤子のように何にも影響を受けていない……十数年生を得ていた者がこのような魂だなどと……」
表情など読み取れない黒猫の姿なのに、その声音からも憐憫のようなものを感じた。
「我は見たいのだ。お前の魂がこの世界で羽化する様を。我と波長が合うお前であれば必ずこの世界にも良い影響を与えるはずだ」

期待に満ちた神様の声音を聞いていると、何だか僕も一歩踏み出したくなってきた。
あの日の朝のように。
「生き直して、みようかな……」
発した声は小さいような気がしたけれど、僕は少し前を向いた。
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