4 / 6
加護の恩恵
しおりを挟む
「では、我の世界へと降ろそう」
早速!?
「え、ちょっ……まだっ」
自分で一歩踏み出そうと思いはしたが、こんなに急展開だとは思っていなかった!
この世界について、もっと詳しく知りたいし……と声を出そうとした瞬間、意識が混濁する。疲れきって眠気に抗えないような感覚に近い。
「お前の望むように」
上から神様の声が降り注いでくる。
自分が落ちていっているのか神様が上がっていっているのか感覚的には分からないが、すごいスピードで離れていっていることは分かる。
その感覚に意識がついていけず、混濁に合わせるように気を失った。
目を開けると、木の天井が見えた。
何度か瞬きをし、そっと自分の手を上げてみる。
動く。
寝た状態で両手を目の前まで上げ、手のひらを閉じたり開いたりと動作確認するも両手とも問題はない。
足も指を曲げてたり、ぐっと両足を上げたり曲げたりするも、痛みもなく問題ない。
ゆっくりと身体を起こす。
目眩もなく、問題なく立てた。
両手でぺたぺたと顔を触ってみるも痛みも以前との違和感などもなく、事故前と変わらない状態だと思う。
「その、ままだ」
思わず声が出た。少しかすれてはいたけれど、声も同じだ。
「げんじ、つ、だ、な」
神様と会話したことも覚えているし、あの時も意識はあったけれど、あまりに展開が急で現実味がなさすぎて呆然としてしまう。
目を閉じ、何度も意識的に呼吸をする。高鳴る心臓に手を当て、呼吸を繰り返した。
「とりあえず、確認しよう」
……少し、落ち着いた。
誰もいない中、独り言になることは分かっていても声に出す。
自分が目を覚ましたのはベッドの上だった。
シンプルな木のベッドに白い一式の寝具で新品のような清潔さがある。
ここは寝室のようだ。
すべて同一の木の家具で揃えられていて、ベッドの他に箪笥のような衣服を仕舞う家具が置かれている。
窓などはない。
箪笥の引き出しを引くと、衣服や下着が入っている。
たぶん、僕の、だよな?
神様が用意してくれたのだと思うが、やはり手厚い。
「他の部屋も行ってみよう」
寝室の扉を開けると、広い部屋にキッチンのような水場と用具、少し離れた所に四人掛けの椅子とテーブルが置かれていた。
「一人しかいないのに」
四人掛けの椅子とテーブルを見て思わず口にした。
神様は僕がここで僕以外の誰かと食卓を囲む予想で用意したんだろう。
……僕には想像もできないが。
部屋の中央には寛ぐスペースなのか背の低いテーブルとラグが敷かれてあり、その前には暖炉のようなものがある。暖炉に火は入れられていない。
今、事故の前と同じ薄手の長袖シャツを着ているが、寒くは感じない。しかし、暖炉があるということは、必要になるような寒い季節があるってことなんだろうか?
全体的に木と暖炉は煉瓦のような物で造られていて、ログハウスのような様相だ。神様が言っていたように、テレビや冷蔵庫のような機械的な物は無い。
僕の背よりも高い位置に明り取りの窓があり、そこから光が差し込んでいて、電気はなくても部屋は明るい。夜には真っ暗になるんだろうか?
狭いアパート暮らしだった僕にはこの家は十分すぎるほど広い。
まだ、この部屋で自分が生活するイメージは湧かないが、とても落ち着く雰囲気だなと思った。
後は……外だな。
外に出るための扉をちらりと見る。
やはり、知らない世界の外は怖い。
獣人の話を聞きはしたが、それ以外の環境や生物についても何も分からない。
でも、ここにずっと閉じこもる訳にはいかない。
意を決して、外に続いているであろう扉を少し開ける。
キィという音と共にふわっと木の香りが鼻を掠めた。
恐る恐る扉から外を覗くと、そこは森の中だった。
どちらかと言えば都会と呼ばれる地域に住んでいたし、旅行も行ったことがないため、こんなに自然が溢れる場所に訪れたこともなく、森と形容していいかも正直分からない。目の前には公園にあったような背の高い木が見渡す限り生えている。
人影などはなく、ホッと息を吐く。
あらためて外へと踏み出す。
やはり、木しか見えない。
外から見た家は、やはりログハウスのような外観だった。どこからが水の音がするので、近くに川などがありそうだ。
少し周辺を歩いてみようとして気がついたが、目の前にどこかに続いている歩道のようなものがあった。
これも神様が整備してくれたんだろう。近くの村と交易を、と言っていたから村に繋がっているのかもしれない。
「なんか、落ち着くなぁ」
自然と声が出た。
水のせせらぎと木の香りに癒される。
不安でいっぱいだったはずが、どうやって生活していこうかなと思いを巡らせるようになっていた。
まずは川を探そう。
水は必要だし。
なんとなく家の後ろから聞こえているような気がして、歩みを進めた。
そこで、運命の出会いをすることになる。
早速!?
「え、ちょっ……まだっ」
自分で一歩踏み出そうと思いはしたが、こんなに急展開だとは思っていなかった!
この世界について、もっと詳しく知りたいし……と声を出そうとした瞬間、意識が混濁する。疲れきって眠気に抗えないような感覚に近い。
「お前の望むように」
上から神様の声が降り注いでくる。
自分が落ちていっているのか神様が上がっていっているのか感覚的には分からないが、すごいスピードで離れていっていることは分かる。
その感覚に意識がついていけず、混濁に合わせるように気を失った。
目を開けると、木の天井が見えた。
何度か瞬きをし、そっと自分の手を上げてみる。
動く。
寝た状態で両手を目の前まで上げ、手のひらを閉じたり開いたりと動作確認するも両手とも問題はない。
足も指を曲げてたり、ぐっと両足を上げたり曲げたりするも、痛みもなく問題ない。
ゆっくりと身体を起こす。
目眩もなく、問題なく立てた。
両手でぺたぺたと顔を触ってみるも痛みも以前との違和感などもなく、事故前と変わらない状態だと思う。
「その、ままだ」
思わず声が出た。少しかすれてはいたけれど、声も同じだ。
「げんじ、つ、だ、な」
神様と会話したことも覚えているし、あの時も意識はあったけれど、あまりに展開が急で現実味がなさすぎて呆然としてしまう。
目を閉じ、何度も意識的に呼吸をする。高鳴る心臓に手を当て、呼吸を繰り返した。
「とりあえず、確認しよう」
……少し、落ち着いた。
誰もいない中、独り言になることは分かっていても声に出す。
自分が目を覚ましたのはベッドの上だった。
シンプルな木のベッドに白い一式の寝具で新品のような清潔さがある。
ここは寝室のようだ。
すべて同一の木の家具で揃えられていて、ベッドの他に箪笥のような衣服を仕舞う家具が置かれている。
窓などはない。
箪笥の引き出しを引くと、衣服や下着が入っている。
たぶん、僕の、だよな?
神様が用意してくれたのだと思うが、やはり手厚い。
「他の部屋も行ってみよう」
寝室の扉を開けると、広い部屋にキッチンのような水場と用具、少し離れた所に四人掛けの椅子とテーブルが置かれていた。
「一人しかいないのに」
四人掛けの椅子とテーブルを見て思わず口にした。
神様は僕がここで僕以外の誰かと食卓を囲む予想で用意したんだろう。
……僕には想像もできないが。
部屋の中央には寛ぐスペースなのか背の低いテーブルとラグが敷かれてあり、その前には暖炉のようなものがある。暖炉に火は入れられていない。
今、事故の前と同じ薄手の長袖シャツを着ているが、寒くは感じない。しかし、暖炉があるということは、必要になるような寒い季節があるってことなんだろうか?
全体的に木と暖炉は煉瓦のような物で造られていて、ログハウスのような様相だ。神様が言っていたように、テレビや冷蔵庫のような機械的な物は無い。
僕の背よりも高い位置に明り取りの窓があり、そこから光が差し込んでいて、電気はなくても部屋は明るい。夜には真っ暗になるんだろうか?
狭いアパート暮らしだった僕にはこの家は十分すぎるほど広い。
まだ、この部屋で自分が生活するイメージは湧かないが、とても落ち着く雰囲気だなと思った。
後は……外だな。
外に出るための扉をちらりと見る。
やはり、知らない世界の外は怖い。
獣人の話を聞きはしたが、それ以外の環境や生物についても何も分からない。
でも、ここにずっと閉じこもる訳にはいかない。
意を決して、外に続いているであろう扉を少し開ける。
キィという音と共にふわっと木の香りが鼻を掠めた。
恐る恐る扉から外を覗くと、そこは森の中だった。
どちらかと言えば都会と呼ばれる地域に住んでいたし、旅行も行ったことがないため、こんなに自然が溢れる場所に訪れたこともなく、森と形容していいかも正直分からない。目の前には公園にあったような背の高い木が見渡す限り生えている。
人影などはなく、ホッと息を吐く。
あらためて外へと踏み出す。
やはり、木しか見えない。
外から見た家は、やはりログハウスのような外観だった。どこからが水の音がするので、近くに川などがありそうだ。
少し周辺を歩いてみようとして気がついたが、目の前にどこかに続いている歩道のようなものがあった。
これも神様が整備してくれたんだろう。近くの村と交易を、と言っていたから村に繋がっているのかもしれない。
「なんか、落ち着くなぁ」
自然と声が出た。
水のせせらぎと木の香りに癒される。
不安でいっぱいだったはずが、どうやって生活していこうかなと思いを巡らせるようになっていた。
まずは川を探そう。
水は必要だし。
なんとなく家の後ろから聞こえているような気がして、歩みを進めた。
そこで、運命の出会いをすることになる。
32
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。
叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。
幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。
大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。
幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
オメガなのにムキムキに成長したんだが?
未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。
なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。
お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。
発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。
※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。
同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる