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宰相閣下
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あー、楽しかった!
久しぶりの手合わせで、思っていた通りバーンの一太刀は重く、体力がもたなかった。
打ち負けることなんて、初めてだった。
やっぱり、毎日朝練をして鍛えているバーンの努力の成果だな。
「楽しんでいる所悪いけど、遊びじゃないのよ?」
シュルツの厳しい声が飛ぶ。
ま、また怒られるのか!?
「ルカ、バーンの攻撃を受けるだけじゃ防御は学べないわ。なぜ、攻撃しなかったの」
「それは……やっぱり俺は友達に当たるかもしれないって思いながらの攻撃は無理だ。甘いし、バーンのためにはならないって分かってるけど……無理だった」
何度も攻撃に転じようとしたんだ。
でも、躊躇してしまった。
そんな迷いがある状態では攻撃できない。
「貴方は……相変わらず味方には本当に甘いわね」
仕方ないとため息をつかれる。
前も、お前に攻撃はできなかったな。
「仕方ないわね。今後、バーンの相手は私がやるわ」
「えー!」
俺もまたやりたい!
「心配しなくても、私がバーンをルカに一太刀当てるくらいは強くしてみせるから」
シュルツはバーンを鍛え上げる気だな。
楽しそうだ。
「テオドール」
シュルツがテオを呼ぶ。
テオはバーンの打ち合いでできた小傷を治癒している所だった。
「はい」
「明日、お父上が視察に来られるわ」
「え?」
テオの?なぜ??
「毒の一件は知らせておいた。基本的に寄宿学校への親の面会は許可されてないけれど、視察に同行という名目よ。心配なんでしょうね」
「……心配、ですか」
少し、テオの様子が……?
どうしたんだろう。
俺のせいでテオに迷惑かけたから、俺も会って謝罪したいな。
「基本的には宰相閣下の視察がメインよ。テオのお父上はあくまで同行だから」
「宰相閣下の!」
クリフトが食いついた。
まぁ、自分の目指す所にいる人のだもんな。
「せいぜい、この寄宿学校に滞在するのは半日だからそんなに関わることはないと思うけど、ルカ」
「え?」
「宰相閣下、分かってる?」
分かってるってどういうことだ?
「クリフト、宰相閣下の名前は?」
「え?ズール公爵フォルクス閣下です」
フォルクス!
宰相なのか!
まぁ、そうだよな……当時から、なるだろうと思ってた。
「聡い方よ?」
「分かってる。そもそも、視察ってそこまで関わらないだろ?」
「と、思いたいけど……」
シュルツは憂い顔だ。
それとは反対に、少し離れた所にいたクリフトは、先ほどの俺とバーンの手合わせについてまとめた紙を持ったまま、瞳が輝いている。
俺はシュルツから離れ、クリフトの元へ行く。
「会えるのが、嬉しいのか?」
「はい!フォルクス閣下は平民の俺がお会いできる相手ではないので……善政をされていると評判です」
「そうかー」
俺はあまり前世で深く関わった相手の行く先を考えないようにしている。
今のルカとして生きると決めたのなら、前の記憶を引きずってはいけないからだ。
シュルツのこともそうだった。
フォルクスも気にはなっていたが、自分からシュルツに聞こうとは思わなかった。
今回、こうして偶発的にしろ知れて、良かった。
明日、ちらっと姿くらい見られるだろうか。
最後の記憶の悲痛な顔が、頭をよぎった。
久しぶりの手合わせで、思っていた通りバーンの一太刀は重く、体力がもたなかった。
打ち負けることなんて、初めてだった。
やっぱり、毎日朝練をして鍛えているバーンの努力の成果だな。
「楽しんでいる所悪いけど、遊びじゃないのよ?」
シュルツの厳しい声が飛ぶ。
ま、また怒られるのか!?
「ルカ、バーンの攻撃を受けるだけじゃ防御は学べないわ。なぜ、攻撃しなかったの」
「それは……やっぱり俺は友達に当たるかもしれないって思いながらの攻撃は無理だ。甘いし、バーンのためにはならないって分かってるけど……無理だった」
何度も攻撃に転じようとしたんだ。
でも、躊躇してしまった。
そんな迷いがある状態では攻撃できない。
「貴方は……相変わらず味方には本当に甘いわね」
仕方ないとため息をつかれる。
前も、お前に攻撃はできなかったな。
「仕方ないわね。今後、バーンの相手は私がやるわ」
「えー!」
俺もまたやりたい!
「心配しなくても、私がバーンをルカに一太刀当てるくらいは強くしてみせるから」
シュルツはバーンを鍛え上げる気だな。
楽しそうだ。
「テオドール」
シュルツがテオを呼ぶ。
テオはバーンの打ち合いでできた小傷を治癒している所だった。
「はい」
「明日、お父上が視察に来られるわ」
「え?」
テオの?なぜ??
「毒の一件は知らせておいた。基本的に寄宿学校への親の面会は許可されてないけれど、視察に同行という名目よ。心配なんでしょうね」
「……心配、ですか」
少し、テオの様子が……?
どうしたんだろう。
俺のせいでテオに迷惑かけたから、俺も会って謝罪したいな。
「基本的には宰相閣下の視察がメインよ。テオのお父上はあくまで同行だから」
「宰相閣下の!」
クリフトが食いついた。
まぁ、自分の目指す所にいる人のだもんな。
「せいぜい、この寄宿学校に滞在するのは半日だからそんなに関わることはないと思うけど、ルカ」
「え?」
「宰相閣下、分かってる?」
分かってるってどういうことだ?
「クリフト、宰相閣下の名前は?」
「え?ズール公爵フォルクス閣下です」
フォルクス!
宰相なのか!
まぁ、そうだよな……当時から、なるだろうと思ってた。
「聡い方よ?」
「分かってる。そもそも、視察ってそこまで関わらないだろ?」
「と、思いたいけど……」
シュルツは憂い顔だ。
それとは反対に、少し離れた所にいたクリフトは、先ほどの俺とバーンの手合わせについてまとめた紙を持ったまま、瞳が輝いている。
俺はシュルツから離れ、クリフトの元へ行く。
「会えるのが、嬉しいのか?」
「はい!フォルクス閣下は平民の俺がお会いできる相手ではないので……善政をされていると評判です」
「そうかー」
俺はあまり前世で深く関わった相手の行く先を考えないようにしている。
今のルカとして生きると決めたのなら、前の記憶を引きずってはいけないからだ。
シュルツのこともそうだった。
フォルクスも気にはなっていたが、自分からシュルツに聞こうとは思わなかった。
今回、こうして偶発的にしろ知れて、良かった。
明日、ちらっと姿くらい見られるだろうか。
最後の記憶の悲痛な顔が、頭をよぎった。
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