前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?

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覚悟~テオドール視点~

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「テオドール」
医務室で休んでいるとフォルクス様に声をかけられる。
声が戻っていないため返事はできないけれど、寝台で寝ていた身体を起こす。

「休んでいる所、すまない。少し、お前の父親のことを話したい。いつルカが目覚めるか分からない医務室ではなく、別の部屋で話したいのだが、良いか?お前の自室でも?」
父上のことは確かにルカに聞かれたくはないな。
頷き、自室へと戻るため寝台を降りる。
医務室から出る際、まだ眠っているルカの顔をそっと見る。
側にはシュラ先生が控えていた。
まだ眠っているようだ。
僕の声を戻すためにクリフトとバーンがセリアン商会に交渉に行っている。
上手くいくだろうか……。

そのまま医務室を出て、自室へ戻る。
その間もフォルクス様は何も言わず後ろに付き添ってくれている。

自室を開け、フォルクス様を招き入れる。
フォルクス様に部屋の椅子をひき、座るように手で勧めると「ああ」と座られた。
僕には寝台に横になることを促されたが、さすがにその状態で話をする訳にもいかず、寝台の上で身体を起こしたままフォルクス様に向き合った。

「身体に障りはないか?」
フォルクス様に問いかけられ、頷く。
声が出ないことと精神的に追い詰められたせいか疲労は感じるくらいで、問題はない。
「そうか」
フォルクス様がふっと微笑まれる。
視察に来られた時よりも、なぜか穏やかな雰囲気をされていて驚く。
むしろ、宰相であるフォルクス様を巻き込む形になってしまったのに。

「ロレーヌ辺境伯についてだが」
フォルクス様の言葉にきゅっと唇を結ぶ。
「お前も驚いたであろう?転移先に父親がいた時は」
……我が目を疑った。
祝福はされていないと思っていた。
ルカはキラキラした瞳で、成長を喜んでくれると言っていたが、あの父がそんなはずはないと。
まさか、ルカを害しようとするなんて……自分が甘かったんだ。

「幸い、ルカは特に酷い外傷は見受けられない。一番の被害者は皮肉にもお前だ、テオドール。……どうする?今ならば、内々に済ませることも可能だ。大事にすれば……辺境伯の地位を失うかもしれない」
僕は首を横に振る。
ロレーヌを次代の僕が発展させようと思っていた。
父上の望む形ではなくても、そんな僕の姿をいつか認めてくれれば良いと。
だが、父上は犯罪に手を染めた。
そんな人物にこのままロレーヌを治める資格などない。

「厳罰を望む、と」
フォルクス様としっかり目を合わせ、頷く。
「……分かった。聖教が絡んでいるからこそ、辺境伯の証言も欲しい。任せてもらえるか?」
そうだ。
聖教は勢力を拡大し、問題視されている。
政治的な問題もはらむのか……すべてお任せしよう。
頷く。

「では、ここからは宰相としてではなく、フォルクスとして聞こう。ルカと出会ったことを後悔する日が来るのではないか?」
え?
どういうこと?
空気が一気にはりつめる。

「お前が辺境伯を許せないのは分かる。愛しい相手を害しようとした父を許せないだろう。為政者としても、だ。だが、このままいけば辺境伯はロレーヌを没収され、爵位も降格するだろう。それは、今後のお前の人生を大きく左右する。後ろ楯を失くすのだから。気がつけば、お前の側には誰もいない。その時に、ルカが側にいるとは限らないのだぞ?」

フォルクス様の言う通りだ。
僕が父上の権威を失くし、自分の実力のみでやっていけるだろうか?
中央に残る見込みもあるわけではない。
これから、いばらの道だろう。
ルカは本当にキキの村に帰って木こりになるのか、その実力から中央へと進むのかまだ分からない。
でも、きっとそのルカの周囲には僕よりも優秀な人達がいるんだろう。
その中に、ルカが愛を捧げる人がいるかもしれない。
側にいることさえ、できないかもしれない。

それでも。
僕は出会ったことを後悔なんてしない。

僕はしっかりとフォルクス様を見据え、首を横に振る。
何度も。

「……そうか。それならば、私が言うことはない。お前の決意を聞かせてくれたお礼に一つ愚かな男の話をしよう」
フォルクス様は先ほどの張りつめたような空気をとかれ、穏やかな顔で僕を見た。

「男は自分のことをとても優秀だと思っていた。しかし、本当の天才を前にした時、自分の愚鈍さに気づいた。その人は、誰しもが欲する人で、しかしあまりにも高みにいたために、誰も近づけなかった。もちろんその男も。その男はその人の隣に立つために必死で努力した。少しでも近づけたと思った時に、その人は消えた」

これは、もしかして……?

「あの人が守ったモノを自分も守ろうと愚かな男はそれからも必死だった。だが、月日が経つと、その愚かな男は後悔し始めた。こんなことなら、出会わなければ良かったと。それならば、こんな胸が焼けつくような感情は知らずに済んだと。目の前が真っ暗になった。何もかも投げ出して、いっそのこと、消えたあの人の元へ行こうか。今ならば、側に誰もいない……そんなことすら考えるようになった」
……やはり、フォルクス様と救国の騎士ルカのことだ。

「そんな時、愚かな男は気づかされる。今の自分を造り上げたのはあの人ではない。自分自身だ。すべての後悔をあの人に押し付けていた。あの人はいつも前を向いていたのに。そんな姿に惹かれていたのに……お前にそんな愚かな男になって欲しくなかった。だが、物言えぬお前のその表情だけで、覚悟は伝わった」
フォルクス様……。

「私の話は以上だ。辺境伯についてはまた経過は伝えよう。どうする?医務室に戻るか?」
クリフトとバーンが禁書を持ち帰ることができるのかどうか……医務室に戻れば経過が分かる。
でも、もし手に入らなければ……ルカと共にその報告を聞くのは辛い。
僕自身のことだから、最終的な段階になれば、誰か知らせに来るはず。
ここで、待とう。

フォルクス様に首を横に振り、ここに残ると伝える。
「分かった。シュラにそう伝えよう。心配するな、宰相の名にかけてお前の声は必ず戻す。休んでおけよ」
そう言い残し、フォルクス様は退室した。

フォルクス様……僕を自分に投影して、気にかけて下さったんだな。
僕に自分のような苦悩をさせたくないと。
でも、誰にんだろう?
短時間で本当に印象が変わられた。
……まさか。
いや、憶測で決めつけてはいけない。

今後のことも、禁書を二人が手に入れてくれれば良いけれど、フォルクス様の言い様では最終手段として聖教との交渉も考えているのだろう。
それだけは、嫌だ。
あの、白装束の男がルカを見る目……思い返してもぞっとする。

……まずは、二人の交渉がどうなるのか結果を待とう。

少し、このまま休もう。
いろいろなことが起きすぎた。


パタパタとした足音が近づく音で目が覚める。
どれくらい寝ていたんだろう?
頭が少しスッキリしていた。
自室の前でその足音が止まり、トントントンと早めに扉を叩く音。

二人の交渉の報告に来てくれたのかな?
立ち上がり、扉へ向かい開けようとしたほぼ同時くらいに、扉が開かれる。
「テオ!治るぞ!!」
満面の笑みでルカが部屋に飛び込んできた。

治る?
交渉が上手くいったんだ!
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