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81 此処で抱いてください※モブユン
しおりを挟むこの場に女が居れば大変な騒ぎだったろうが――だからこそジャスル様のこの“婚礼の儀”、女人は禁制である儀なのだ。…ちなみにもちろんのこと、このような乱交騒ぎが世の中にとっての通例ではない(普通はまさか、女人禁制でもない)。――俺も妻と“婚礼の儀”を執り行ったわけだが、普通に盃を交わし合い、普通にちょっとした宴会が行われたのち、別室に連れて行かれて夫婦水入らず、という流れであった。
またジャスル様は、この度盃を交わし合っていたが――それに関してばかりはいつも、相手の側室の故郷馴染みの方法を取っているため、毎回そのメオトの儀式となるやり方は違う。――が、毎回乱交騒ぎは、お決まりのことだ。
婚姻祝いの宴会とあって賑やかだったというに、これが始まった途端、この宴会場はしーんと静まり返った――誰しもが主役二人のこの行為を、“やっと本番か”と舐めるように凝視しているためだ――。
「…嫌だ、…っ嫌、…ジャスル様、こんな…」
ジャスル様に乗りかかられているユンファ様は、着物の衿元から手を差し込まれ、その胸板を揉みしだかれて嫌悪的な目をその人へ向け――悔しげに眉を顰め、涙を流しては頭を振りながら、「やめて、やめて…っ」と、それでもジャスル様の両手首を掴み、床を白足袋の足で踏み、蹴り、逃れようと足掻く。――しかしその実、彼はもう手足にほとんど力が入らなくなっていることだろう。…あの媚薬入りの酒のせいだ。
「…っ人の目の前で、…はしたなく乱れる姿を晒せとおっしゃるのですか…っ」
糾弾の勢いでユンファ様が言う。…しかしジャスル様は、もみもみとユンファ様の着物の下、何も気に留めず彼の胸板を揉みしだいている。
「…ふ、メオトってのはのぉユンファ、身も心も結ばれて初めて完成されるのだ、…全くおかしなことを言うなよお前は、グフフ…――多くの者に、ワシらが結ばれる姿を見てもらい、証人となってもらわねばならんだろうが? この“婚礼の儀”には端っからのぉ、これも含まれておったのだよ。」
「…嫌っ…嫌だ、嫌…っ嫌…、媚薬なんて、なぜそんな卑劣なこと……」
と…苦しげに泣き、怯えながらニヤつくジャスル様を見上げたユンファ様に――にまぁ…っと醜く笑ったジャスル様は、ペロリと舌なめずりをする。
「…卑劣…? そりゃあお前を善くしてやろうという、ワシの心遣いだ。むしろワシは、お前に感謝されるべきなんだがのぉ…ほら、ぽーっとするだろう。なあ、なぁんにも考えず、気持ち良くなろうなぁ……」
「……、……」
絶望…――みるみるその涙目を険しくし、絶望の表情を浮かべたユンファ様は、…ジャスル様を睨み付けながらも、その切れた形のまなじりから、はらりと涙をこぼした。――それでもよい、と言った自分を、あわや恨んでいるのかもしれぬ。
あれほど純情な人にこの仕打ちは、頭では理解し、覚悟を持っていたとしても――かなり厳しいものであることだろう。
「…………」
こうなると言った俺の言葉には、何も嘘などなかった。
…俺は、ただユンファ様を連れ出したいばかりに、あえて惨たらしい嘘を言っていたわけではない。
しかし、かといってユンファ様とて、俺の言葉を嘘だとは思っていなかったのだろう。…それでもいい、むしろ自分の身に何があっても止めるな、何もするな、と言っていたユンファ様だが――やはり相当な覚悟をしていても、身を切るような思いがあるに違いない。
「…そう睨むなユンファ…な。まあまあ、しばしおとなしく横たわっていろ。…すぐに善ぅなるて、すぐ極楽に行けるぞ…――なあ…この場に居る者どもに、ワシらがメオトとなった証として、ワシらのマグワイを見せ付けてやろう…」
「……ッ! 嫌です…、嫌だ!」
顔を顰め、いよいよそう言い切り、泣きながらより激しく暴れはじめたユンファ様を押さえつける――最前列でコレを見ていた、男。…あわよくばご相伴に預かれるやも、という下心が故だ。
「…っ!? やめて、何をなさるのです、…」
彼の両手首を頭上に纏める男、「やめて、やめて!」と暴れ頭を振るユンファ様を見下ろし、ねっとりとした声を出すジャスル様。
「…ユンファよ…、お前、そう生意気な態度ばかり取っておるが、お前の故郷はどうなってもよいのだな…? 構わぬのだぞ。故郷の蝶たちを、このノージェスの労働者としたって、なんらワシはやぶさかではないわい。…」
「……っ、…」
そう言われたユンファ様は、…ひたり。
暴れる手足をしずめ、悔しげに顔を歪めながらも、ぎゅっと目を瞑りながら――下唇を、噛み締めると、彼は。
「……、わかりました…」――ぽそり。
しかしジャスル様は、ユンファ様の細い体の線を、白い着物の上から下まで…ゆっくりと撫で下げつつ…――ニヤニヤと続ける。
「…なんだ、聞こえないのぉ…。なあユンファ、昨日も言ったよなぁ…? このノージェスじゃあ蝶族たちは、みーんな性奴隷にしか見られんと…。お前がそんな生意気な態度ばかり取るのなら、なあ、もうみーんな連れて来よう。高ぁく売れるよ…――需要があるよぉ、子供から大人まで、あれほど美しい者しかおらんからのぉ…」
「…っわかりました…! わかりましたから……」
「…何が。ちゃんとワシの目を見て言わんか。」
卑劣な…――ユンファ様の顎から頬を掴み、ぐっと上を向かせたジャスル様…ゆっくりと目を開いたユンファ様は、ぽろぽろ涙をこぼしながらその人を見て。
「…抱いてくださいジャスル様…、ジャスル様に抱かれたいです、…こ、此処で……」
そう言うユンファ様に――ジャスル様は、わざとらしく目を丸くした。
「…おぉ、おおぉいいのかぁユンファ…? そんなに旦那様に抱かれたいか。褥に行くまで我慢できないか? そんなにワシの魔羅が欲しくて欲しくてたまらんのか、お前は。」
「…ひ、…っぐ、…は、はい、…旦那、様……我慢できませ、……~~っ」
ジャスル様の下卑た言葉を、悔しげに繰り返したユンファ様は、泣いてそれ以降は言葉にできなかった。
それにニンマリと喜んだジャスル様は、「…そうか。淫乱で良い子じゃのぉユンファ…」と笑い、ユンファ様の両手を纏める男へ「これならもうよいわ、席に戻れ」と命じた。
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