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135 三日間のメオト

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「………、…」
 
 ――俺はひと晩、自室に監禁された。
 …いや、大義名分的には、ひと晩そこでゆったりとまずは、戦の疲れを癒やせ…というのである。
 
 俺は灯りも灯さない自分の部屋、寝台へと腰掛け――手にしているユンファ様への土産を眺めて、ぼんやりとしている。…瓶と、宝石。
 
 
 これをユンファ様に渡すことは叶うだろう。
 
 
 しかし――いよいよ俺は、殺されるに違いない。
 
 
 
 俺が、喉から手が出るほどに欲しかった褒美――。
 
 
“「明日の朝より三日の間――あのユンファを、お前のものとしようねぇソンジュ…。つまりじゃ、その三日の間あれは、お前の伴侶となるんじゃ。正式な伴侶…お前とあのユンファはその三日間、メオトとなってよいぞ……」”
 
 
 ――ユンファ様。
 
 
 ユンファ様が、三日間ほど、俺の伴侶になる――。
 …やはり見透かされていた。――いや、もう隠しようもないことだろう。…下手すればこの屋敷の誰しもが、俺たちが想い合っていることを知っているのやもしれぬ。
 
 そして、その想いを見透かした上でジャスルは――戦果の褒美に、あのユンファ様を三日間ばかり、俺の伴侶にしてやるというのだ。
 
 
“「…もうメオトともなれば、ワシにも誰にも遠慮することはないよぉソンジュ…なあ、好きにするがよいわ。あのユンファ、煮るなり焼くなり…わかるな…? あれを、お前の男のサガのまま、好きなだけ抱け。孕ませろ、あのユンファを……」”
 
 
 そうまでして、ユンファ様を孕ませたいか。
 …しかし、本当にジャスルは、俺の子をユンファ様に産ませ――そしてその子を、世間では自らの子にする。…本当に、それで満足なのだろうか。
 ユンファ様が孕んだあと、口封じに俺を殺し、腹の子を自らの種でできた子だとする――。
 
 
 何にしたって、この“褒美”というのは罠だ。
 
 
 想い人の子しか孕めぬという蝶族――そのユンファ様を、この三日のうちに俺が抱く。
 するともしや、ユンファ様はいよいよ孕むやもしれぬ。
 
 
 そして――ユンファ様が、俺の子を孕めば。
 
 
 その赤子こそ――俺たちの気持ちの、証左となる。
 その赤子こそが――俺たちの、ジャスル様への裏切りの証となるのだ。
 
 それにかこつけて、俺を殺す気か――。
 …そしてユンファ様にはその子を産ませ、ジャスルにしてみればやっとめでたく、世間へ蝶をお披露目できる――と考えてはみたが、…本当に、本当にそれだけだろうか?
 
 妙に気位の高いジャスルだ。
 …あるいはそれ以外の思惑もあるような気がする。
 
 もしや俺を、俺たちを飼い殺しにするつもりかもしれぬ。――殺すよりも惨く、まるで種馬の如く、繁殖してなんぼの家畜同然に扱われる可能性とてあるか。
 
 
 何にしても――褒美などとは、単なるそれでないことは確かだ。…俺がこれで愚かにもユンファ様とつがえば、俺たちは確実に、ジャスルによって何かしらの策に嵌められることだろう。
 
 
 
 
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