ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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恋は盲目 ※モブユン

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「……うん大丈夫、あたし、今のは聞かなかったことにしてあげるわ。はは…」
 
 苦笑しているサトコさんは、大人の対応を取ってくださった。――そしてモグスさんもまた、胸の前で腕を組み、うんうんとなぜかしみじみ頷いている。
 
「…まー若いのがしないなんて、そう思ってる子供は此処にいないから。…だぁいじょぶ大丈夫、あるある。あるよなぁ、若いとみーんなに恋人自慢したくなるときくらい、まあ誰にだってな。ましてや付き合いたてじゃあな? うんうん、あるある。」
 
「………、…」
 
 あぁ…あぁもう本当に、…死ぬほど恥ずかしい。
 涙目になっている僕は自分の膝頭を掴み、鎖骨から上を熱くしながら深く項垂れて、眉を寄せ、きゅっと固く目を瞑った。――今にも穴があったら入りたい。
 
「…でも、よねソンジュさん。…そうやってユンファさんのこといじめないのよ? 子供じゃないんだからさ」
 
「いじめてなどいません。…事実を言ったまでです」
 
「…でもソンジュお前、そういうのは仲直りしてからにしろや。仲良しラブラブ状態なら、惚気話くらいおじさん、いっくらでも聞いてやるからよぉ。」
 
「………、…」
 
 いや、仮に仲直りという展開になったとしても、の話をベラベラ話されても困る(僕が)。――恋人自慢なんかじゃないだろうどう考えても、…ソンジュさん、僕たちセックスしました、ということをなぜ言いたがるんだ。――どう考えてもおかしいよ、当て付けのように僕のことをいじめているとしか思えない。
 
 そのタイミングで、レディさんが口を開く。
 
「…あ、そだ。ねぇ?」
 
「………、…」
 
 ん…――、ちゃん…?
 はたと目を開ける僕は、――パンダ…?
 ランラン…シャンシャン…カンカン…――たんたん…、…いやパンダか…?
 いや、モグスさんがもぐもぐちゃん。ソンジュさんが、わんわんちゃん。――サトコさんが、おさとうちゃん。
 レディさんはどうも、人にあだ名を付けて呼びたい人らしいので、となれば…――そうして、と呼ばれたのはまさか…いやおそらく、僕である。
 
「…たんたん…?」
 
 思わず反問の形で繰り返した僕に、レディさんは明るく、ふわふわとした声でこう答える。
 
「…だってぇ、お目々がタンザナイトっていう、きれーな宝石みたいって、わんわんちゃんが言ってたからぁ――たんたんちゃん♡ どぉお?」
 
「…なるほど……」

 ザナイトから、ちゃん、だったのか。
 いやだが、どこか間抜けというかなんというか、はどうもパンダの名前みたいである。
 
「…あーでもぉ…のがいいかなぁ? ふあふあちゃんのがかわいーかなぁ?」
 
「………、…」
 
 今度はふあふあちゃん――ユンのファ、からだろうか。
 僕へのあだ名を決めあぐねているらしいレディさん、しかし誰も彼女のそれを止める気配はない。…サトコさんは「全くもう…」とどこか仕方なさそうに笑っているようだが(本当にレディさんのお姉ちゃんみたいである)、モグスさんはふざけて「え~、ちょーかわい~っ」と女子高生の真似をしているだけだ(おじさんが女子高生の真似…)。
 そして、ソンジュさんはというと。
 
「…ふあふあちゃんがいいね、可愛らしくて。たまに俺もそう呼ぼうかな」
 
「…………」
 
 なんて、案外ノリノリである。
 貴方だけは止めてくれるかと思っていました…――するとレディさんは、ソンジュさんのそれに背中を押されたか。
 
「うん♡ じゃーあ、ふあふあちゃんで♡」
 
「……は、はい……」
 
 いっそもう好きに呼んでくれ…――思えばソンジュさんがわんわんちゃん、モグスさんがもぐもぐちゃん、サトコさんだけやや趣向が違っておさとうちゃんではあるが、…なんにしたってレディさんは、それらに近いあだ名を僕に付けるまで、延々とこの会話を続けることだろう。
 ならばもう僕は諦めるほかにないと、その“ふあふあちゃん”で承諾した――。
 
 
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