ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

文字の大きさ
359 / 689
翳目 ※

9

しおりを挟む

 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…んーじゃあな。でもあんまり時間かけないでくれよ、ソンジュ…ほらぁ、飯も冷めちまうし…な?」
 
「…ええ、善処しますね」
 
「おお…、ユンファさんも、早く切り上げられるように。な…、……」

 僕の…僕たちのことがいまだ気掛かりな様子のモグスさんは、どこか後ろ髪を引かれているようながらも、この部屋から出て行こうとしている。――その人が扉のドアノブに手をかけ、ガチャリと開いたその瞬間、
 
「……、……ッ!」
 
 僕は口を開いた。――やっぱり今助けを求めなければならない――しかし僕は、あ、とすら声を出せなかった。
 声を出そうと息を吸い込んだその瞬間、僕が声を発しようとしたそのタイミングでガバッと、後ろから、ソンジュさんの大きな手に口を塞がれたからだ。
 
「…んグ、……ッ」
 
「…………」
 
 そして後ろにぐっと強く引かれ、顎が真上に、…僕の顔は、ソンジュさんの顔のほうに上げさせられる。
 凍り付いたような、冷ややかな淡い水色の瞳は僕を見下ろし、「しーー…」――バタン……虚しく閉じていった、この部屋の扉。
 
「…貴方はなぜ抗うの…? 俺たちの、に……」
 
「……、…、…」
 
 運、命…――?
 ふ…と解放された僕の口元、顔、僕の両手首はソンジュさんに捕らえられ、腰の裏で纏められてしまったが――僕は扉のほうへ向かって、
 
「っモグスさん! 待ってください、僕っ…!」
 
「…ふふふ…――だよ」
 
「……っ?」
 
 笑みを含ませてそう言ったソンジュさんは、僕の耳元で、こう囁いてくる――。
 
「…この部屋…なんだ……」
 
「……、…、…っ」
 
 防音仕様――いや、だからさっきモグスさんは「外に出たら大声で叫べ」と言ったのか、――僕はその場で踏ん張り、後ろで纏められた手を解こうと上体を激しくよじる。
 
「…嫌、やめてくれ、嫌だ! つがいになんか、…」
 
 僕は後ろ手で拘束されていながらも肩を、体を捻り、抵抗をする。――しかし僕のその抵抗をものともせず、ソンジュさんはグイグイと僕を後ろに歩かせる。
 正直力では敵わず、踏ん張っても駄目なのだ、ドタッ…ドタッと、無理にも足が後ろに引かれて動いてしまう。
 
「…やめ…っ! お願いしますソンジュさん、ソンジュさ、お願い、駄目、つがいにだけは……!」
 
「…ユンファさん、落ち着いてください…――俺はと言っているでしょう…? 俺はきちんとした話し合いもせずに、無理やり貴方のことをつがいにするような真似は、本当にいたしません……」
 
 そのまま僕は、後ろ向きに歩くソンジュさんに導かれ…ドタッとほとんど、尻もちをつくような形で座った。
 あの茶色い二人掛けのソファ――目の前のテーブルには空の白いティーカップ、白い磁器のティーポット……ティーセットが、非情にも冷たく白く光っている。
 
「…まずは落ち着いて、あたたかいお紅茶でも飲みましょうね……」
 
「……、…、…」
 
 そう妖しくも甘ったるい声で言ったソンジュさんは、僕の背後にいる。
 つまり僕は今、ソファに座ったソンジュさんの、その開いた脚の間に座らせられたようだ。――ただ、と彼は後ろから片手で、僕の腹を抱きかかえている。
 
「…落ち着いて、大丈夫だからね…? 愛しているよ…誰よりも愛してる、誰よりも、誰よりも…ユンファ…愛してる…――俺はただ、愛する貴方に優しくしたいだけ……」
 
「………、…」
 
 ふわり…後ろから抱き締められる――ソンジュさんの体温が、僕の背中に纏わりついているよう――だが僕は恐ろしくてたまらず、身が竦み、その上血の気も失せて寒くなり、カタカタ震えている。
 
「…大丈夫だから…まずは落ち着いて、話をしましょう。安心してくださいね、ユンファさん…。俺は何も、ユンファさんのことを無理やりつがいにしよう、だなんて――…、そのように考えているわけではないのです……」
 
「……、…、…」
 
 
 …――?
 
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...