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目覚める夢
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しおりを挟むしかし――やはり僕には、以前ソンジュさんと出会った記憶はない。
それこそソンジュさんほど背の高い華やかな美形、それも、ホワイトブロンドに淡い青目となればパッと見でさえ目立つ見目でもあるわけで、仮にもし以前僕と彼が出会っていたとしたら僕だって、まあまずその出会いを忘れそうにもないのだが(カナイさんのとき然りだ)。
ただここで思うのは、もしソンジュさんが以前僕と出会い、そして、あの『夢見の恋人』を書いたpine先生だったとしたら――モグスさんの、この発言。
“「…ユンファさん…“夢見の恋人”って小説、知ってたりしない? いや結構有名だったでしょう、ねえ、ちょっと前までは。」”
“「ァほんと? いやー私、なぁんかね…いやなーんとなくですぞ。やあーあのお話に出てくるユメミくんが、どーーもユンファさんに似ているような気がしてね……?」”
モグスさんのこれらの発言もまた、辻褄が合うような気がするのだ。…だが――。
“「…はははっ…いやぁ~なるほどね。いやぁなるほど、そういうことかぁ…――なあボク、もしかしてお前、あの日に一目惚れした人って……」”
「……?」
あの日…――?
前にも思うように、モグスさんが言っていたそのあの日というのは、まず彼がカナイさんとして、僕が勤める『DONKEY』に来たときのことではないはずだ。――その時点での一目惚れ、また初恋というのは、まずあり得ない。
いや。では、一旦ソンジュさんがpine先生であるとして、また、あの『夢見の恋人』のユメミのモデルが僕である、と仮定しておこう。――すると、僕とソンジュさんとの初めての出会いは、その『夢見の恋人』の執筆以前ということになる。
となれば、pine先生は中学二年生――十四歳――のとき、『夢見の恋人』で作家デビューをしている。
そして、もしソンジュさんが本当に、僕をユメミのモデルとしていた場合――僕たちは少なくとも、彼が十四歳、僕が十七歳以前に出会っている、ということになるはずだ。
つまり、少なくともデビュー当時の中二ということに…いやしかし、まさかいくらpine先生が天才とはいえども、その年内にあれだけの長編作品を書き上げられるはずはないか。…すると、僕とソンジュさんが出会った当時の年齢は恐らく、少なくとも彼が十三歳以下のとき、僕が十六歳以下のときくらい…――。
となると、僕がそのころの彼と出会った記憶がないのもまあ、無理がないといったら妙なのだが――十三歳の少年であった彼と、青年となった今のソンジュさんとを照らし合わせても、合致しないのはそうじゃないだろうか。
中学生とはいえ十三歳の少年では、彼もまだ小学生ほどの子供のようであっただろうし――もちろん個人差はあるが――、何よりそうともなれば、僕はせいぜい十六歳かそれ以下ということにもなる……。
しかし正直、高一以下のころの記憶なんて、まさか十一年以上前のことでは、僕にそうそう残っているはずが……。
「……、…」
“「てかいつの間にアンタ…いつから付き合ってんのよ」”
“「約十一年前から」”
「……十一年、前…?」
十一年前――。
ぼんやりと見下ろした…きっちりと並ぶ、pine先生の作品のタイトルを彷徨い、くらくらと僕の瞳が揺れる。
十一年前…――ソンジュさんはその頃、十三歳。
そして僕が、十六歳…――高校一年生。
「…………」
十三歳の少年……――高一のときの文化祭。
ダンス……まさか。――いや、わからない。
“「それは、どうでしょうね…? 三歳年下の男に、ダンスに誘われても…踊らないでしょう、ユンファさんは。ふふふ……」”
僕は、自分の頭の中に浮かび上がってきたあやふやな記憶に、苦しげに目を瞑った。――よくは思い出せないのだ。
しかし、僕はその文化祭の日――人生の中でも、殊に印象深く残っている。…なんならこれまでに経験してきた文化祭の中でも、その日は特に印象的な日であった。
そして僕はその日、確かに十三歳くらいの男の子と、話をしたことがあったようには思う。…ただ会話の内容にしろ、その子の詳しい容姿にしろ、僕ははっきりとは思い出せないのだが。
とはいえ――薄らぼんやりと覚えているのは――僕はたしか図書室で擁護の先生を待っていたのだが、そこに入ってきたその子は確か赤毛、いや、あれはきっと金髪だ。…なぜなら、あのときは文化祭のフィナーレ、舞踏会間際のことであったからだ。――そして僕は、その子に誘われたダンスを、何かしら理由を付けて断ったような記憶もある。
つまり、外はもう夕暮れに…ソンジュさんのようなホワイトブロンドならば、あるいはその橙色の陽の光に染まって、――ユメミは、図書室の窓から夕暮れを眺めて、…カナエはその姿に一目惚れ、……。
「……、…」
やっぱり…ユメミのモデルは、まさかの――僕、だったりするのだろうか……?
いやしかし、残念ながら…僕はその日――確かに特別印象に残っている文化祭の日ではあるのだが、僕が強いて記憶しているのは、その少年のことではないのだ。
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