ぼくはきみの目をふさぎたい

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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目覚める夢

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「なんというか…、とでも言いましょうか……」
 
「……?」
 
 役得?
 …って…どういう意味で言ってるんだろうか。
 僕は頭を上げ、ソンジュさんの顔を見上げながら、どういうことかを問う単純な疑問の目線を向ける。――しかし彼は僕と目が合うなり、ニヤッとしてはふいっと顔を横へ背けてしまった。
 
「…ふふ…」
 
「…………」
 
 役得…――まさか、またセクハラ的な意味だろうか?
 
「……、ソンジュさん、もう大丈夫そうです」
 
 まあ何はともあれ――事実僕はソンジュさんに助けられているため、だとしても別にセクハラとも思わないが――もう大分脚の痺れも取れてきたし、と僕は、ソンジュさんの胸板を軽く押して、離れようとした。
 
「…ありがとうござ…」
 
「いえ、まだ完全には痺れが取れていないのでは? 危ないですから、完全に脚が治ってから歩いたほうがよろしいかと。…」
 
 しかし僕が離れることを拒むように、すかさずソンジュさんは、僕をぎゅっと抱き締めて引き留めてきた。
 
「……っ、いや、歩いたほうが血流もよくなるかと……」
 
 まあ実は正直なところ、確かにまだ完全に痺れが取れたわけではない。…だが、まあこれくらいなら歩いてしまったほうが血流も良くなり、痺れも早く取れそうなくらいまで落ち着いたのだ。
 脚の痺れは一時的な血流の悪化が原因らしい。
 ならば、歩いて筋肉を使ったほうが当然、治りも早くなるものである。――しかしソンジュさんは、「駄目」と甘い声で囁いてきては、僕のことを離してくれない。
 
「……、どうして、ですか…」
 
 ソンジュさんのもふもふした胸板に片頬を押し付けている体勢の僕は、ドキドキしながらも困っている。
 
「…俺が心配なんですよ。もしユンファさんが転ばれては…あるいは舐めるか、また薬…」
 
「あ、そう…ですか…、いやわかりました、…じゃあ完全に治ってからにしますね、すみません……」
 
 つまりこれはまた、らしい。
 まあ、もうそのはさすがに面倒だ――たかだか脚が痺れて転んだくらいで舐められるか薬か、なんて、さすがに過保護すぎるとは思うが…ソンジュさんなら本当にやりかねない――と、僕は甘んじた。
 
「ふふ…では、そのように。…」
 
「……はい…、……」
 
 ぎゅうっとされた僕は、またソンジュさんのもふもふした胸板に顔がうずまってはかなわないと、その人のふわふわした胸板に、片耳を押し付けた。
 すると、とく、とく、とく…――聞こえてくるソンジュさんの心拍音。…しかし、僕には速いとも落ち着いているともわからない。そもそも心臓の、通常の脈拍のリズムとはどの程度のものなんだろうか。
 
「…………」
 
「……、…」
 
 ソンジュさん、僕を抱き締め……いや違う、これはあくまでも、僕の体を支えてくださっているだけだ。
 それだけだ。それだけ。――僕は抱き締め返すでもなく、その人のふわふわの胸板に両手を着いている。
 それだけなのだ…致し方ない状況、そして、ソンジュさんの優しさが故のこの状態――それなのに僕は今、ドキドキ、してしまっている。
 
「…………」
 
「…………」
 
 かあ…と、頬や耳元が熱くなり、僕はそっとまぶたを伏せ気味にした。
 ソンジュさんの、あたたかく大きな手が強く触れている僕の背中が、腰の裏が、とくとくと脈打っている。
 僕が着いてしまっている、ふわふわの体毛に埋まっているこの両手が、僕の片方の顔の側面が――しっとりと汗ばむほど、そこだけが熱を持っている。
 
 そう、だ…――“ToDoリスト”。
 僕は思い切って、…ぎゅっとソンジュさんの背中を両腕で、抱き寄せた。
 
「……、ふふ…」
 
「……ん、……」
 
 僕の横髪を撫でてきたソンジュさんの手、耳に掠めたその人の手に、僕は声まで出してぴく、と反応してしまった。
 
「…………」

「…も、もう…本当に…大丈夫、です…」
 
 こうしていると、体が小さく震えてしまう――僕に触れているソンジュさんには、確実にそれがバレてしまうというのに――、小さくも体中が震えて、高鳴る胸いっぱいに熱くてふわふわしたものが、満たされていってしまうのだ。――いやしかし、なんにしても“ToDoリスト”は一つクリアだ。よし。
 
「……そうですか…?」
 
「……、…、…」
 
 する…と腰の裏にあるソンジュさんの手が、上へとわずかにすべる。――パジャマ越しに撫でられただけで、ぞく…と僕の背中が、うなじが粟立つ。
 僕はいよいよ目を瞑り、こくりと頷いた。
 
「はい、もう大丈夫です…、ありがとうございました…」
 
 僕は内心焦っていた。…だから自分から離れた。
 後ろに歩いて、僕はソンジュさんから目を逸らしつつ、唇を固く引き結ぶ。
 …少しだけ背中を撫でられた。――それが、とても気持ち良く感じた。…すると一瞬、もっと触ってほしい…なんて、思ってしまったからだ。
 
 
「……ご、ごめんなさい……」
 
 
 下心があるのは、よっぽど僕のほうだ。
 
 
 
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