職業・「観客」ゥ!?

花山オリヴィエ

文字の大きさ
64 / 111
第2話

071. 剣と魔法ってこんな感じなんだ20

しおりを挟む
 この日は朝から黒熊の裏庭にボクを含め、コンクエスターが全員集まっていた。
 朝食をとってからハクの号令で皆が支度を始めたのが、ボクには映画か何かで見たワンシーン、兵士が戦場へとおもむくために各自が準備をするように見えた。

「これは見物ね」

 エリィの目がきらりと発光したのがいかにも二次元的だった。

「さて、と」

 皆がボクと置いてある一つの樽を円のように取り囲んでいる。
 そばにある樽にはなんだか物騒なものばかりが突っ込んであるのを横目でちらちらとみてしまうが、それ以上にみんなの手にも物騒なものはあった。

 アニーの弓、フゥの剣、マグのワンド、ジャコの爪、ラギの分厚い本、そしておなじみのハクの杖だ。

「え、その、みんなが持ってるのって……」

「「武器だ(よ)」」

 あぁ、やっぱりそうですよねー。

 見ればボクの隣の樽にも、木剣だとか槍だとか、斧だとか、色々ありますし。

「てことはこれから……」
「「手合わせだ(よ)」」

 再び声が重なる。

「これから、イツキには身を守るすべとして戦闘方法を学んでもらうわ。
 今までも見てきたでしょうけど、フゥやワタシみたいに武器を使っての近接戦闘を得意とする者や……」
「ワシのように弓で中~遠距離で戦う者もいるのだ」
 
 アニーが矢をつがえずとも弓を引く動作をして見せた。
 ウンウン。
 それはよく見てた。

「マグやラギちゃんみたいにヤオを使っていてもやっぱり身を守るためには少しくらい体を動かせるようにしないとねー」

 そういって、マグは自分なりのポーズなのだろうか木の枝のワンドを突き出してそれらしい構えをとって見せた。

「ラギちゃんのそれはー
 本、だよね?」
「はーい。
 魔術書なんですけど、持っているだけで物理戦闘にも役に立つんですよ」

 確かに、ラギちゃんの体格で、あの大きさの本で殴られたら下手な鈍器よりも潰せそうだ。

「ジャコは?」
「オレは基本的に非戦闘要員なんだ。
 それでも、得意な調合で作ったクスリを投げて煙幕を張ったりするけど、コレも結構痛いんだぜ?」

 そういって、桃色の舌のそばでは黒の毛並みの猫の前脚から、短くも鋭い爪が銀色に光っていた。
 
「そ、そーだね。
 チンピラの首元に突き付けてたものね……」

 そして、樽の中を覗き込んで、ガシャガシャと音を立てると、一本の木剣を手に取った。
 両刃の造りで、鍔の形にも彫られた、いかにも「剣」といった見てくれだ。

「まぁ最初はやっぱり剣から入りたがるわよね」
「ファンタジーといえばこれだよね」

 ん? と聞きなれない単語に首をかしげるハクをよそに、木剣を右手で握ると軽く振ってみた。
 木目の見える、しっかりとした重量感のある木剣は重力とボクの腕力の拮抗に負けて情けなく、失速した結果、地面に切っ先が付いた。
 木で出来ているとはいっても、結構な重さのソレを片手で軽々と振るうという創作物のようには扱えなかった。

「ほぉら、前に教えただろう?
 握りと、体勢を意識しろぃ」

 フゥが肘で小突くように指示をしてきた。
 前にも教わったように、上段に構え、教わったことを丁寧に反復した。
 少し前の事だったはずなのに、集中すると記憶は戻り、同じ動作が出来た。
 軽い風切り音と地面に衝突する前に止められた手ごたえ。

「ほらな。
 握りだよ、握り」

 フゥの言う衝突の際の握り込みを意識すると、剣の動きがピシッと決まる。

「じゃあ、オレとやろうか」

 スッと一歩前に出たのは、二本足で歩く黒猫、ジャコだった。
 銀色に光る黒い毛並みを茶色いブーツと銀縁の黒エプロンで飾り、そのエプロンや腰につけたポーチからは彼女の言う「調合」で作った薬品と思われるガラスの瓶が幾つも差し込まれて見て取れた。

「そのー、科学的なのは……」

 怖気づいたボクの表情を見て、ジャコはナッハッハと小気味よく笑って見せた。

「だいじょーぶだよ。
 こんなところでドンパチやろうなんて思っちゃいないさ。
 軽く、ね」

 それでも、自分より小さな、それも見た目は猫そのもののジャコに、この手にした硬そうな木剣を振り下ろすのかと、躊躇いはあった。
 周囲の人間の顔色をうかがっていると、短く開始の声が届いた。

「いくよっ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

処理中です...